第28話 連携
武器を揃えた俺は扉を開けてダンジョン入り口付近に魔物がいるか確認する。
見た感じ魔物はいないし、魔物の気配もなし。入り口で少し話すくらいのことはできるな。
入り口前で立ち止まっていると
「先輩の闘う姿が見たいので早くダンジョン攻略を始めましょう」
光はどうしても早く俺の闘いが見たいのかせかしてくる。
「そんなに焦る必要はない。というか焦るな。五層までとは言ってもダンジョンに変わりはない。できる準備はしとかないとダメだ。」
つい最近、突然希少種が現れて死にかけていた人がいたくらいだ。準備なしでは、もしもの時に対応できないかもしれない。
「油断大敵ですね。わかりました。ですが、準備といっても何をするんですか?武器は全部揃っていますし他に必要な準備はないように感じるのですが」
「連携を取るための準備だよ。ガヴェンと組んだ時もやってた。仲間のスキルを把握すること、それを踏まえて連携を取るんだ」
これはカイラたちもやっていたことだ。やっているのといないのではチームのまとまり方が違う。
「お父さんや先輩が普段やっていることならやる必要がありますね。では、聞きますが先輩のスキルはなんなんですか?」
「ガヴェンから書いてると思うけど、俺のスキルは親指程度のサイズのものを動かす力だよ。だから、主に扱いやすい砂を操っている」
ヒカリには嘘をついてもバレるだけだ。変に誤魔化すよりも事実を言った方が面倒くさくならなそう。
「へー、操るものの種類が指定されていないスキルなんて珍しいですね」
「でもなんでも操れる訳じゃないしデメリットもあるから、基本的には操る物を指定されたスキルと変わらないよ」
正直言って条件を満たさないと砂とか小さな金属とかしか作れないので使い勝手が悪すぎる。今は別に使い方をマスターしたから良いが最初は砂と石しか作れないゴミスキルだった。小さいと火力も出ないし、意外と小さいものないしで思っているより不便なスキルだ。
「俺のスキルについてはこのくらいにして、じゃあ、次はヒカリのスキルを教えてくれ」
ヒカリのスキルは治療系。しかも自分以外の人も癒すことができる力。なんとなくわかっているがしっかりとヒカリの口から聞いておきたい。
「私のスキルは支援系の自分以外の人間を癒す能力です。傷、毒などによる状態異常は治せますが、病気は直せないって言う感じです」
ガヴェンの娘だから、治療の力を受け継いでいるが対象が真逆か。自分だけを癒すガヴェンよりも連携を必要とする闘いを得意とするスキルでダンジョン攻略ではかなり使えるスキルだが、逆に自信が狙われた場合、1人であった場合には無力となってしまうスキル。
自分が対象でないのは意外だったな。ちゃんと聞いておいて正解だ。
「他者への癒しのスキルか。便利だが1人にしちゃいけなさそうだな。常に俺から離れず魔物と戦闘になったら俺の後方に移動してくれ」
「はい」
ヒカリからスキルを聞き終えると前の方で機嫌悪そうに立っている男に声をかける。
「えっと、君のスキルは何かな」
「スキルなんてどうでもいいだろ。早くダンジョンに潜るぞ」
と先に歩き出す。
カイラたちと組んだ時はスキルを教えてだんだよな? いや、エミの相手の考えを受け渡す力で心の中を読んだのか?
名前も知らないし、スキルもわからない。カイラに聞いておけばよかったか?
そう考えているとヒカリは男を噛み付かんばかりの表情になり男の後を追う。そんなヒカリを止めるために腕をヒカリの前に伸ばす。
「スキルは自分の持つ武器だ。自分のスキルを相手が知らなければ対人戦闘などにおいて有利に立ち回れる。だから他者に知られたくないというものに無理やり言わせるのはあまりよくないから怒ることじゃない」
男には聞こえない声でヒカリに話すと
「うう。先輩がそう言うならまあ、許しますよ」
と何か言いたそうになりながらも脚を止める。
「それに、昨日のゲームで戦った感じ、あいつのスキルは炎を操るか創造するスキルというのがわかってる。それがわかれば無理に聞く必要性なんてない」
と言っておく。炎を使うだけならそんなに扱いに困ることはない。
その後、ヒカリが何かを言おうとすると同時に
「遅いぞ。早くついて来い」
と俺達にそう言って男は先に歩き出す。
「なんなんですか!あれ!」
待たせたのは俺の方だ。点数がかかってる試験なのだから、文句を言われても仕方がないのかもしれない。
「文句は後で聞くから、今はあいつを見失わないようについていこうか。」
と時間の無駄を少しでもなくすために怒る隙を与えないように男についていかせた。男はかなり速いペースで歩いて行く。
ヒカリの文句を聞きながらも周りに気を配りながらダンジョンの奥へと進んでいく。すると、前方に魔物の気配がする。
「前方から来るぞ」
2人に伝えて戦闘態勢を取るために脚を止める。しかし、男は俺の言葉を聞くと脚を止めることなく更に加速する。それに対してまたヒカリが文句を言おうとしていたが、
「もう諦めろ」
と俺が遮ることで黙る。
初回ぐらいは慎重に闘おうとしていたがしょうがなくヒカリと男についていく。
「俺は雑魚に構ってる暇はないんだよ」
男は走りながら目の前に見える超下級魔物、スライムに向かって炎を放つ。放たれた炎は一直線上にいるスライムを包み込む。炎の中でスライムは身動きが取れず、何もしないままチリとなった。
男は走る速さを変えず脚を止めることなく奥の方へ進んで行く。
俺は念のためスライムを本当に倒せているか確認しながら男の後を追った。
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