第15話 vs40層のボス(前半)
目を開けると久しぶりに見る遺跡のような薄暗い景色が広がっていた。
「もうダンジョンに着いたのかー。やっぱり転移でボス部屋前に移動するといつもより緊張感なくなるよなー」
ダンジョンについてすぐガヴェンは辺りをキョロキョロ見回りしている。
「もっと警戒しろよ。ガヴェン」
俺が注意すると
「そうだよ。一応、ボス前だからね」
とナイガも注意してくれる。
ガヴェンなら何が起きてもどうにかできると思うが、魔物に絡まれて体力を持っていかれるのはあまり好ましくない。
「わかってるっての」
ガヴェンは2人に注意されてキョロキョロするのをやめて顔色を変えしっかりと警戒を始める。
そんなガヴェンを見て説明を始める。
「一応、昔と同じような戦闘スタイルでガヴェン、キンドが前衛。俺とナイガさんが後衛で。俺はナイガを守ることを中心に動く」
「おう。頼むぜ」
ガヴェンがそう言い、横で聞いていたナイガにも
「頼んだよ」
と言われる。キンドは黙ったままだった。
「よし、じゃあ、ボスの行動パターンだけど、ガヴェンたちはどれくらい見た?」
「毒を吐くやつと全身に毒霧を纏うやつ、尻尾による攻撃と噛み付く攻撃かな。あと何度攻撃しても再生して、そのせいで倒しきれなかったんだよな」
弱らせる前の行動は全て見ている感じか。討伐までは後少しって感じだな。
「基本的な行動パターンは問題ないみたいだ。なら、ガヴェンはいつも通り近距離攻撃を受けていてくれ。毒霧もガヴェンならあまり気にならないだろ?」
ガヴェンの《自らを癒す力》なら毒霧の毒もすぐに回復できるので毒によるデバフがない状態で戦える。
「おう。勿論、そのつもりだ。毒霧は即死じゃないからあまり効かないからな」
「なら、適度にタゲ取りよろしく。多分、今までの敗因はキンドが近づけなかったこととナイガのスキルが使えなかったからだろ? 俺はナイガを守りながら、スキルでキンドのアシストをするから、近接の攻撃を受けることだけに専念してくれ」
「おお。わかった」
一番シンプルな立ち回りをするガヴェンへの話は終わり。
次はナイガとキンド。
「今回はナイガが鍵になる。ナイガはスキルが最大レベルで使えるようになるまで後ろで待機していてくれ」
「了解」
ナイガは頷く。
「キンドは相手の毒霧が切れるまでナイガを守ってくれ。最初、俺はキンドとナイガの間くらいでスキル使って相手を撹乱、毒霧が充満しないようにする。それで毒霧が切れたらナイガの護衛を俺がするから俺と交代してガヴェンの手助けをしてくれ」
「ああ。わかった」
とキンドも返事をする。
「あとはボスが弱ると少し攻撃パターンが増えるのでそれだけ注意してくれ」
最後にそう言うと
「わかったけど、具体的にはどんな攻撃が増えるんだい?」
とナイガが聞いてくる。
「まず蛇に見られている間、動けなくなってしまう能力を使ってくる。これによって1人以上は必ず動けなくなる。次に脱皮。脱皮は今までのダメージを回復して、その後のスピードを上げてくる。これを使って来たら最後の足掻きって感じだからそこからは最初よりも更に警戒した方がいい」
ここの鬼門は目。これのせいで一瞬で壊滅する。隙がないわけじゃないので逃げることはできるが攻撃をしようとすると目による硬直と脱皮後のスピードについていけず負ける。
「動けなくなるか。一度も受けたことないな」
「多分、ガヴェンの近接によって目よりも先に脱皮が発動してたんだろうな」
蛇の目より先に脱皮が起きていた。第一段階クリアだ。
「そう言うことか」
「今回も脱皮の方が先に起こる。いや、起こす。それで行動パターンが変わった瞬間、ナイガはボスの目を狙って欲しい。俺も狙うけど多分、威力が足りない」
これがゴリ押し方法。目をつぶしてそこから全力で倒す。
このゴリ押しで一番重要なのは最後の脱皮を目が発動する前に起こすこと。これができていないと脱皮で全回復されるので目が治されて目の破壊からやり直しになる。目による硬直がある状態じゃ目の破壊はほぼ不可能なので正攻法クリア必須になる。
「わかった。ユヅキくんは40層のボス攻略はやったことあるみたいだし、何かあったらその時は対応お願いね」
ナイガにそう頼まれる。
「わかってる。何かあればすぐにアシストするよ。それで他に質問はあるか?」
「ないぞ」「ないかな」「ない」
俺の問いに3人がないという返事を返したので作戦会議は終わり。
「よし、準備完了か。さあ、行くぞ」
ガヴェンの掛け声と共にガヴェンが先頭でボス部屋に入って行く。部屋の中央には俺より数倍でかい蛇が待っている。
「いくぜ!」
ガヴェンはそう言って勢いよく走り出す。
「タゲ取り頼んだ」
そう言いながら俺もガヴェンの後を追い、後ろを向いて
「キンド。少しの間、ナイガの守護頼む」
と言って走り出す。
大蛇はガヴェンに対して毒を吐くが相手の攻撃に怯むことなくそのまま突進して行く。
流石は『自らを癒す力』。毒を喰らっても瞬時に解毒している。体力が尽きない限りは無敵のスキル。ガヴェンは大丈夫だな。
「なら、俺もしっかり仕事するか」
そう呟いて無数の金属を発現させ一気に放つ。
大蛇にダメージはなかったが身の危険を感じ周囲に毒霧を吐く。金属は毒霧に威力を弱められて途中で押し返される。
毒霧は蛇の周りを覆うだけでそんなに範囲が広い訳じゃない。放っておけば部屋中充満するが最初のうちは近づかなきゃ吸うことはない。
ガヴェンは毒霧の中、大蛇に剣を振っている。大蛇は尻尾や牙を使ってガヴェンを攻めている。
後ろを振り向くとキンドは剣を持ち待機していて、ナイガはスキルを使っている。
毒霧を吐いたなら次は毒霧を消す!
俺はその場で立ち止まり、しゃがんで地面に触れる。俺の周りに砂が充満する。その範囲は今の毒霧よりも広い。
『砂風』
俺は立ち上がると集めた大量の砂を大蛇に放つ。砂が大蛇を多い毒霧を押し返す。
それに対して大蛇はガヴェンへの攻撃を弱めてすぐに毒霧を吐き纏い直す。
また毒霧だ。大蛇は常に毒霧を纏い続けようとし、その度に攻撃が弱まる。その為、相手が弱るまではひたすら毒霧を消すのが俺の仕事。
これが範囲攻撃を無効化する必要がある理由。
飛ばした砂を再び大蛇に放つ。そして、再び毒霧を吐く。
それを何度も繰り返す。
大蛇は最初、ガヴェンに夢中だったが、俺の砂がうざいからか時々、俺目掛けて毒を吐く。その攻撃が来る度に俺は金属を集めて擬似的な壁を作り防ぐ。
「まだか?」
砂や毒を喰らいまくっているガヴェンが少し疲れたようで大きな声でそう聞いてくる。
正直もどかしい。早く攻めたい。だが、このボスは確実に攻め時が来るまで耐える。それが勝つ方法。
攻めれば毒霧や毒を喰らって輝石を使うしかなくなる。その間に尻尾や牙で噛まれて徐々にパーティが崩壊し出す。
そうならないように今は同じことを繰り返す。
「あと少し耐えてくれ」
そう言って再び砂を放つ。次第に毒霧の濃度が薄くなる。
俺は徐々に下がってキンドの隣まで移動すると
「交代。攻撃頼んだ」
と伝える。それを聞くとキンドは
「任せろ」
そう言って待ってたとばかりに大蛇目掛けて勢いよく走り出す。
俺はナイガさんの隣まで歩いていき、
「エネルギー。どれだけ溜まりました?」
と聞く。ナイガが自身の目の前に青白く光る物体を目の前に留めている。
ナイガのスキルは
《大気中のエネルギーを操作する力》
大気中のエネルギーを溜めて放ったり、炎などのエネルギーを大気中に戻したりすることができる。
「かなり溜まったから、高火力の一撃放てるよ」
後は脱皮で条件が整う。ここから一気に脱皮させるか。
俺はナイガに
「俺が相手の動きを止めるので、キンドさんの攻撃のタイミングと合わせて、半分くらいのエネルギーを使って一撃頼みます」
とお願いする。
「了解」
とナイガは返事をするとエネルギーを二つに分け、俺はその間に鉄を生み出して自分の周囲に留まる。キンドはもう少しで大蛇に辿り着く。
その前に放つ。
発現させた鉄を規則正しく並べ一斉に放つ。鉄はキンドの横を通り過ぎて大蛇に命中し、その衝撃に大蛇は体勢を崩す。
「キンド。大剣で一撃頼む!」
俺がそう叫ぶとキンドは大盾を大剣へと変化させる。
キンドのスキルは
《武器の形を操作する力》
その名の通り武器の形を変える。大盾から大剣。大剣から大盾。それ以外にもハンマーや鎌。なんにでも変えることができる器用なスキル。
「わかった」
多分、そう言って思いっきり大剣を振り下ろす。その瞬間にナイガがエネルギー弾を放つ。
大剣は大蛇の腹に、エネルギー弾は首元に命中し、大蛇の首を貫通する。
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