第13話 試験終了

 全員分の試験が終わり、俺たち受験生はバラバラになって話したり端で休憩したりしていた。


 俺は最後の試合を見届けてヒカリとコートの端で次の指示を待っていた。


 そんな俺達をまとめるようにコートの中央にセルビアが、それぞれのコートに別の試験官が歩いてくる。


「試験は終了です。これから合否までの話をするので近くの試験官の元に集まってください」


 セルビアが大声でそう言うと一斉に動き出す。俺は少し遠かったが、ずっと担当だったセルビアのところに歩いて行く。ある程度集まったことを確認すると彼は話し出す。


「さてこれからですが、特別試験がある人はここに残ってください。それ以外の人は受験票を持って帰宅し、三日後の朝の合格者発表の日にこの学校の昇降口に集合してください。当日、合否を確認した後は近くの教師の指示従って行動するように。以上で今日の試験は終了。おつかれさまでした」


 セルビアがそう指示を出すと俺の周りの受験生は皆、ぞろぞろと出口へと歩いていく。


 試験はあれだけか。少し物足りない気がするが終わりというならそうなのだろう。これからやることもないし俺も帰るか。


「先輩ももう帰りですか?」

「ああ。試験はもうないらしいからなここに残っていても邪魔になるだけだから俺は帰るよ」

「そうですよね。もう少し先輩とお話ししたかったなー」


 ヒカリは肩を落として落胆する。


「合格すればいつでも話せる。だから、残りの試験も頑張れよ」


 俺がそう言うとヒカリは


「そうですね!頑張ります!」


 と両手を握り占めて意気込んだ。


 ヒカリのスキルがなんなのかわからないが、ヒカリなら合格できるだろう。あまり心配はいらない。


 ヒカリと話し終え、周りを見ると人が少なくなっており、次の試験がない人は殆ど帰っていたので俺も大人しく家に帰った。


 家に帰るとアヤがご飯の準備をしていた。

 時間的にまだ少し早い気がするけど、それだけやる気があるということ。夕食がとても楽しみだ。


「ただいま」


 エプロン姿のアヤは俺の帰りを確認すると


「おかえり。お兄ちゃん」


 と微笑む。そして、


「試験どうだった?」


 と心配そうに聞いてくる。


「完璧とまではいかなかったけど、上手く戦えた気がするよ」

「よかった。それならお兄ちゃんは合格だね!」


 ヒカリは普段通りなら俺が失敗することはないと信じて止まない。その期待に応えないとな。


「後は結果を待つだけだ」


 試験官に勝ったのでヒカリには自分が合格する前提で話したが気は抜けない。試験の点数は問題ない。それでも考えすぎだと思うが、試験を受けさせるだけだった可能性も考えられる。断言できないのが少し怖い。


「よーし。じゃあ、今日のご飯は全力で作らないとね」


 と腕をまくる。やる気満々だ。


「期待してるよ。俺は一旦部屋に戻ってるから、準備ができたら教えてくれ」


 そう言って自分の部屋に戻る。


 腰袋を外してタンスの隣に置き、コートを脱ぐ。

 服を部屋着に着替えてそのままベッドにダイブする。


「疲れた」


 普段ダンジョン攻略では感じることのない疲れ。慣れない学校という場所に変に気を遣ったからかな。受かって普通に通うようになったらこんなに疲れはしないと思うけど少し不安だ。


 ベッドに横になって色々考えているうちにだんだんと眠気に襲われて俺は眠りに落ちる。


 何分間寝ていたのかわからない。


「ご飯冷めちゃうし、でも起こしたら悪いし」


 そんな声が聞こえてきて俺は目を開けた。

 目の前には顔を覗き込むアヤ。目と目が合う。


 顔が近い。


「俺、寝てたのか」


 アヤは俺が起きたことに気づいて勢いよくベッドから降りる。


「ごめん。私がうるさくて起こしちゃったよね」


 俺は起き上がってドアの前でシュンとしている。


「準備ができて呼びに来てくれたんだろ? ありがとな」


 とそんなアヤの頭を撫でる。


「うん」

「ささ、お腹すいたし、早くご飯食べようぜ」


 そう言ってベッドから降りてダイニングに誘導する。正直、かなりお腹が空いている。


 ダイニングにつくと机にはご飯が並べられていて準備は終わっていた。


「さあ、お兄ちゃん。召し上がれ」


 それを聞いて俺はご飯を食べ始める。一口目を食べている間、アヤはこちらをじっと見つめてくる。


「美味いな」


 俺がそう言うとアヤの表情はパァっと明るくなった。


「そうでしょ。お兄ちゃんのために今日はいつも以上に頑張っちゃったからね」


 俺のことを考えてくれて料理もできるアヤは本当にいい妹だ。


「合格発表は明日?」

「3日後らしい」

「3日後かー」

「明日は一応、ダンジョン攻略しようと思ってるけど、明後日は空いてるから何処かいくか?」

「えっ。いいの?」


 俺の言葉にアヤが嬉しそうにする。


「最近まで受験勉強であまり買い物とか行けなかったからな」


 邪魔しないようにする為に、二人で出かけることは避けていた。久しぶりに出かけるのもいいだろう。


「じゃあ、私、洋服見に行きたい!」

「いいぞ」


 俺がOKを出すとやったとガッツポーズする。


 アヤはウキウキだ。嬉しそうでよかった。


 その後はどこに行きたいか話したり、何食べたいか聞いたりしながらご飯を食べて疲れているからと言って自分の部屋に戻り再び眠りについた。

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