第8話 筆記試験
俺の周りは受験生であろう制服を着た人でごった返していた。
他の受験者たちも見ていると何処か全員が自分よりも強そうに感じ、なんとなく不安になった。実力があっても緊張してしまう。試験場の空気怖いな。
受付についてすぐに必要なことを聞く。
「あの、今日特別に試験を受けられることになったユヅキ・アルメトです。受験票などはどうすればいいですか?」
「ユヅキ・アルメトさんですね。ちょっとわからないので裏で聞いてきます」
と受付の女性は慌ててすぐに俺の前から消える。
俺のこと伝わってないのか。昨日の今日。流石に特例すぎて準備できなかったかと考えながら女性が戻ってくるのを待っていると女性と共にリフィアが歩いて来る。
「お待たせしました。私から話せることはなさそうなので、後はリフィアさんから話を聞いてください」
そう言うと女性は他の受付の手伝いに向かった。
「ユヅキさん。おはようございます。ここからは私が説明します。まず、これが受験票です」
とリフィアから受験票を渡される。
受け取った受験票をじっくりと見入ってから、間違いのないように必要な情報を記入していく。それを終えて裏にあった試験についての説明、注意事項を確認する。
試験内容は聞いていた通り、筆記、対人戦闘の二つ。
「試験内容は分かったんだけど、点数の配分はどうなってるだ?」
「点数配分は筆記、対人戦闘の順に40、60の合計100点ですね」
リョクオー学園の試験はどちらかというと知識より戦闘ができるかどうかに重点を置いて点数が振られているみたいだ。試験勉強をしていない俺としてはその方がありがたい。
「わかった。次の説明を頼む」
「えっと、この後はこのまま、筆記の試験を受けて貰います。教室までは私が案内するのでついてきてください」
そう言ってリフィアは試験教室まで案内してくれる。
しかし、教室の前まで行くと
「少し待っててください」
と駆け足で先に教室に入っていった。
それから数分して、教室からリフィアが出てくる。
「今、試験官の先生にユヅキさんの話をしました。ここからはあの試験官に従ってください」
「わかった」
「私はこれからやるべき仕事が残っているのでこれで失礼します。試験、頑張ってください!」
とそう言って駆け足で俺の横を通り過ぎていった。
一人取り残された俺は部屋の外から中を確認する。部屋には多くの人が机に向かって教科書を開き勉強している。
教室の前にいる眼鏡をかけた男の試験官の元へ行き、指示を受けることにする。
「あの、急遽、入試受けることになったアルメトなんですけど」
試験官はそれを聞いて俺の身体を頭から足まで見て確認する。
「君がユヅキ・アルメト君ですね。話はさっき聞きました。何か気になることがあったらなんでも私に聞いてください」
「ありがとうございます。それで自分はこれからどうすればいいですか?」
「とりあえず、君はそこに座っててください」
と試験官は目の前の席を指差す。
「この後すぐにこの部屋の受験者に対してこれからの試験について話しますけど、試験以外で気になることがあったらここまで来て話しかけてください」
指示を受けて椅子に座る。机の上にはペンが置いてあった。
俺は今日、筆記用具忘れていたので置いてあってよかったとホッとする。
しかし、勉強道具はないのでぼーっと部屋を眺める。
ここに通うことができる。その期待を胸に試験までの時間を潰した。
時間になると試験官が話し始める。一言目を発した瞬間、この部屋にいた人全員が試験官に注目する。
「今日はまずこの筆記試験を受けて貰います。その後、対人戦闘の試験を受けて貰い試験は終了です」
筆記試験。何も勉強していない自分がちゃんと解けるか少し不安になる。
そんな不安の中、試験開始の時間となる。静かな教室に一斉に教科書をしまう音が響き渡る。
一回きりの試験に少し緊張ている俺に問題と解答用紙が配られる。試験用紙は冷たく緊張を加速させる。
そして、試験官が全員に行き届くことを確認すると小さく深呼吸して、
「始め!」
という発した。その瞬間、待ってましたと一斉に受験者問題用紙を捲る。それぞれの受験者の捲る音が重なり静かな教室にバッと捲る音が響いた。
始まった。
試験が始まり、問題用紙を捲り全ての問題を一読する。
書かれていたのはダンジョン攻略をする上で大切なことや基礎となることを聞いている問題ばっかり。
例えば、
1問目は
「ダンジョンに潜る前に揃える必要がある道具は?」
という問題で、こんなの装備、武器、輝石、食料、(もし金に余裕があったら魔道具)が正解だ。
むしろ、これ以上持つと荷物が多すぎて邪魔になり動きが鈍るし、下の方に潜る時に体力を奪われる。多く持っていってもいい時の例外は持ち運びに適した魔道具を手に入れた時だけだ。小さくて軽いさまざまな能力の輝石を選ぶことがダンジョン攻略の要になっている。
2問目は、
「ダンジョンで危険と遭遇した時の対処法について述べよ」
というものだった。
一人でどうしようもない時はこんなの周りの人に助けて貰う。どうにかできるなら体勢を立て直すために逃げるなどだろう。やってはいけないのは叫ぶ、そのまま一人で戦おうとするなど。ダンジョンに潜っていたらそれくらいは当たり前にわかる。
そのままその調子で一問二点の問題を一つ残らず解き終える。結局、すべて簡単な問題であった。俺にとっては当たり前のそんな問題だった。
半分くらい時間が余った俺はちょっとしたミスもしたくなかったので細かいところまで書いて筆記試験は終わるまで待った。
3週目を終えた直後、
「終了」
という声と共に筆記試験は終わった。
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