第7話 同じ学校に

 イレギュラーなことが起こり、予定よりも遅くなった俺は全力で走って家に帰った。


「ただいま」


 と家の扉を勢いよく開けるとご飯のいい匂いがする。


「遅かったか」


 リビングに入るとエプロン姿のアヤがご飯を用意していた。

 制服にエプロン。可愛い。


「ただいま。アヤ、遅くなったな」

「お帰り。お兄ちゃん。ご飯今できたところだから、荷物置いて食べよ」


 そう言われたので、俺は部屋に剣やバッグ、コートをしまいに行く。


「お待たせ」


 その間にアヤはエプロンを脱いで椅子に座っていた。美味しそうな料理が机に並べられている。


「うまそうだな」

「お兄ちゃんのために頑張って作ったから」

「なら、期待できるな」


 俺達は共に「いただきます」と言ってご飯を食べ始める。


「試験、どうだった?」

「難しかったけどミスはないと思うから多分大丈夫」


 アヤならいけると信じていたのでその言葉を聞けて安心した。これで同じ学校に通える可能性が少しずつ見えて来た。


「そっか。なら、よかった」

「お兄ちゃんは、今日どうだったの?ちょっと遅かったみたいだし」


 俺は心配しくれるアヤにさっきまでのことを簡単に説明する。


 希少種と戦ったとかいうと今、心配しくれているアヤを更に心配させてしまう可能性があるので所々省いて説明する。


「依頼自体は簡単だったんだけど、依頼で向かった階層に魔物に襲われている攻略者がいて助けていたら少し時間がかかってちゃって」

「そっかー。大変だったね」

「まあ、もしかしたらそのおかげでリョクオー学園に通えるかもだけど」


 と笑う。するとアヤは目をパチパチして、


「えーーーー」


 と叫んだ。


 わざと何気なく言ってみたがここまで驚かれるとは予想していなかった。


「まだ確定じゃないけど。まあ、そんなことがあって、明日は依頼ではなくアヤと一緒に学校に行くことになった」


 アヤも明日は合格発表なので学校に行くことになっている。なので明日は一緒に学校までいける。


「お兄ちゃんと同じ学校に通えるかも」


 とアヤは小声で呟く。その姿はとても嬉しそうだった。俺もかなり嬉しい。


 同じ学校というのは正確には違うが、リョクオー学園は初等学校と校舎が繋がっている為、同じ学校に行くという言葉には殆ど間違いはない。


「でも、攻略者助けただけで学校に通えるかもってお兄ちゃん何をしたの?」

「助けたのが、たまたまリョクオー学園の理事長の娘だったんだよ」

「そんな偶然あるんだ」


 俺自身も奇跡だと思っているくらいに事がうまく進んでいると思う。仕組まれている訳ないので運がいいだけなのかもしれない。


「まあ、完全に通えるかどうかは明日になってみないとわからないけどな」


 それでも一緒に通えるという可能性があると思うと俺達はお互いに気持ちを高ぶらせていた。




 翌日、興奮しすぎて寝れなかった俺は顔を洗い眠気を覚ますと中の服を着て、昨日と同じコートとバッグを身につけ、転移の腕輪を左手につける。剣に関しては持って行くと問題になるかもしれないので置いて行く。


 準備をしてリビングに向かうと制服に着替えたアヤがご飯を作って待っていた。


「アヤ、おはよう」

「おはよう。お兄ちゃん」

「今日は早起きだな」

「えへへ。昨日はお兄ちゃんに作って貰ったからね、今日は早起きしちゃった」


 嬉しそうに喜ぶ姿をみて朝から気分が良くなる。


「ぼーっと立ってると、ご飯冷めるぞ。さっさとこれを食べて行こうぜ」


 アヤは低い声で昨日の俺の真似をする。そんなことをするアヤもやっぱり可愛い。


 軽くアヤの頭にチョップを入れて、


「俺の真似をするのは3年早いぞ」


 と言いながら席に座った。「いたっ。」と発して頭を押さえて


「ならあと、3年したら真似してもいいんだね!」


 と笑顔で返す。


 その返しは予想していなかった。


 アヤのやる俺の真似、めっちゃ可愛かったので俺が断る理由はない。寧ろやって欲しい。


「いいぞ」

「やったー。約束だよ!」

「ああ。わかったよ」


 俺は約束するほど真似したいことかと不思議に思いながら約束をする。


 その後、目の前の席に座るアヤを見て昨日と同じように、


「いただきます」


 とご飯を食べ始めた。

 それから適当なことを話しながらご飯を食べ終えて家を出る。

 歩きながら試験について話をする。


「試験は筆記と対人戦闘だったはずだから多分帰るのは遅くなる」


 人から聞いた話なので本当かどうかわからないが、どんな試験であっても戦闘が入っていれば高得点は取れる筈だ。


「わかってるよー。私はご飯を作って待ってるよ」

「アヤの手作りか。なら、完璧に試験を乗り越えて合格して美味しく食べられるようにしないとな」

「うん。お兄ちゃんなら余裕でしょ!」


 そんな話をして、学校の校門の前にたどり着いた俺達はお互いの行くべき方向を確認する。そして、試験前最後の会話をする。


「アヤも合格してるといいな」

「今は私のことは気にしないで、試験のことに集中して」


 そこまで難易度は高くないはずだから集中する必要なんてないと思うけど。アヤがそう言ってくれているのだ。ちゃんと集中しよう。


「わかった」

「お兄ちゃん頑張ってね」


 笑顔でそう言って応援してくれるアヤのためにも必ず合格することを決心する。


「ああ、頑張るよ」


 そう言って俺は自分の試験会場に向かう。ちらっと後ろを見るとアヤはまだこちらを見ていた。俺は軽く振り返り小さく手をは振り、アヤの笑顔を見て試験会場まで歩いて行った。


 試験会場に着いた俺はとりあえず受付に受験票などの必要なものを貰いに行った。

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