第49話 神々の神罰
『おつがみーって、魂!?』
『え、まさかの実写配信!?』
『まさに神回か!?』
神野和の魂である私の登場にコメント欄には友神達の驚きのコメントが多く流れ、その様子にゴドフリー君は苦笑いを浮かべた。
「すごく驚かれてるな。やっぱりこうやって中の人っていうのが出てくるのは異例なのか?」
「場合によるかな。配信者や動画投稿者の中には顔出しじゃなく手だけ映す人もいるしね」
「ああ、なるほどな」
ゴドフリー君が納得していると、ゴドフリー君に気づいたコメント欄が更に盛り上がりを見せた。
『と、隣のイケメンって……!』
『まさか本当にゴドフリー君降臨したか!?』
「その通りです。ゴドフリー君、自己紹介をお願い」
「あ、ああ。えっと……初めまして、ゴドフリー・ガードナーです。今日はイサミのアシスタントとしてこの配信に参加します。よろしく……お願いします……?」
『絵師に対しての答え合わせ来たぞー!』
『説明の時点でイケメンなのは確定してたけど、ただカッコいいんじゃなく年相応の表情をしたカッコよさなんてズルくないか!?』
ゴドフリー君の容姿に対するコメントか多く流れてはいたけれど、それに負けじと荒らしらしきコメントやアンチめいたコメントもまだちらほら見受けられた。
『イケメン彼氏発表会とか草』
『どうせコイツもキープの一人でしょ』
『淫乱VTuberのご尊顔、さっさと晒そうぜ』
そんな心ないコメントを見た事でそれを面白がっているコメントも増え始めると、ゴドフリー君は私を心配するように見つめ始めた。
「イサミ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。この程度、どうって事ないよ」
『そうだそうだ!』
『荒らしやアンチなんかにウチの女神は負けない!』
『ウチの女神とか言ってるし、コイツら信者かよ』
『信者という名の儲けのための道具だろ。信者って繋げて書くと儲になるし』
私達の事を嘲笑うようなコメントを皮切りに面白がったコメントもどんどん増え始め、コメント欄は収拾がつかなくなってきていた。
『ダ女神なんだから結局意味ないっての』
『どうせ宗教絡みかなんかだろ』
『それに、こんな外で配信出来るわけないんだから、どうせこれも別のモデルかなんかだろ』
『嘘を並べ立てた結果、大炎上ですか~?』
『どうせ燃えるんだし、今すぐ燃やそうぜ』
悔しかった。アンチや荒らし、そして面白がったコメントが増えるのが悔しかった。どうしてこんな事が出来るのかと思うし、こんな事が出来る人達がいるという事が同じ人間として恥ずかしかった。
けれど、私だって負けてはいられないのだ。こんな心ないコメントを出来る人達やこの状況をニヤニヤしながら見ているであろう秋緋なんかには絶対に負けられないのだ。
「イサミ……」
「……ゴドフリー君、ちょっと和に変わるね」
「え? ああ、それは良いけど……」
返事を聞いた後、私はガーデンコントローラーのメニュー画面の中にある姿を変えるボタンを押し、すぐに神野和に姿を変えた。
『え!? す、姿が変わった!?』
「……はい、これが私のVTuberとしての、そしてもう一つの姿ですから。では何故、この姿に変化したのか。それは先程から見るに耐えないコメントが多く見受けられるからです」
『お、ケンカするか?』
『レスバの開始ならやるぜ?』
そんな子供っぽいコメントに対して稚児を見るような目を向けた後、私は静かに口を開いた。
「そのような子供の挑発には乗りません。ただ、私が女神である証明をしようと思いまして」
『女神である証明……?』
『え、俺達の女神ってマジ女神だったって事か!?』
「その通りです。では、そろそろ始めましょうか」
そう言って私は手元にあった携帯電話を手に取り、ティアさんに連絡を取った。
「ティアさん、お願いします」
『わかりました。では皆さん、お願いします』
『了解した』
電話越しから凛々しい声や綺麗な声が聞こえてくると、私は静かに目を閉じた。
「……風よ吹き荒れ、水よ大地よ荒れ狂え。愚かな民達に神罰を与え、その愚行を悔い改めさせよ!」
その言葉を口にした後、携帯電話にはすぐに日本の至る所で突然の高波や暴風、大雨に微弱な地震が発生したという警報が届き、コメント欄にもそれに関したコメントが流れ始めた。
『え、え!?』
『な、なんで……さっきまで晴れてたのにいきなり大雨になった!?』
『風がすごいし、避難しろって声が近所から聞こえてくるんだけど!?』
『な、なんだよこれ……!』
『そんなバカな……こんな災害が一度に起きるわけが……!』
コメント欄は阿鼻叫喚の地獄絵図となっており、友神のみんなが少し落ち着いている中でアンチや荒らし、そして面白がったコメントをしていた人達は見ていて滑稽に思える程に焦っていたり助けを求めたりしていた。
「そろそろ良いかな。ティアさん、完了です」
『わかりました。皆さん、完了の合図が来ました』
『わかった』
その声が聞こえたと同時に電話の向こうで聞こえていた強い風や雨の音は聞こえなくなり、コメント欄も少しずつ落ち着きを取り戻し始めた。
『な、何だったんだ……』
『いきなりまた晴れた……』
『天変地異でも起きたのかってくらいだったよな』
「まさにそんなところです。今のは私を作って下さった神々にお願いをし、起こしてもらった物ですから」
『か、神なんているはずが……!』
「では、今ここで証明して下さいますか? 日本の各地で一度に災害が発生したのは何故なのか」
その言葉でコメント欄は静まり返り、アンチや荒らしもまったく何も言えなくなっていた。
「……どなたも証明は出来ないようですね。さて、静かにするためとは言え、皆さんの生活を脅かしてしまった事、誠に申し訳ありませんでした」
『謝らなくても良いよ、和様』
『そうだよ。これはアンチや荒らし達のせいなんだから』
「皆さん、ありがとうございます。皆さんのありがたいお言葉に感謝をしながら、改めてこの配信内で行う事についてお話をさせて頂きます」
そう言いながら私は神野和から三神勇美に姿を戻し、座り直してから口を開いた。
「この配信内で行う事、それは今後の活動と成り済ましアカウントの対処についての報告です」
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