第37話 犯人の判明

「なんだこれ……門?」

「うん。これはこっちの世界にある鳥居っていう物をイメージしたワープゲート……みたい」

「ワープゲート……これがあればみんなマオークと開拓地を行き来出来るのか?」




 鳥居型のワープゲートを見上げながらゴドフリー君が聞いてくる中、私は頷いてから答える。



「そういう事だね。えーと……説明によると、これを移動したい箇所にそれぞれ置いた後、力を注ぎ込む事でワープゲートとしての機能が働いて、魔力を注ぎ込んだ主や主が認めた相手のみが使用出来るようになるみたいだよ」

「主……この場合は俺かノドカって事か?」

「そうなるね。ただ、私はエリクシオンには行けないから、ゴドフリー君が主って事になるかな」

「なるほどな……けど、今から置きに行って時間はあるのか?」

「それなんだけど……あ、あった。えっとね、自分が一度行った事がある場所なら、頭に思い浮かべながら触れる事でそこまで移動してくれるみたい。だから、それぞれの場所を思い浮かべながらこのワープゲートを触れば良いみたいだよ」

「お、ほんとか? よし……それじゃあ早速……!」



 そう言うと、ゴドフリー君はワープゲートに手を触れた。すると、ワープゲートはそれぞれ赤色と青色の光を放ち始め、それぞれの色のオーラを纏うと、そのまま姿を消した。



「これでよし……かな? 後は向こうに戻って、ちゃんと動くか確認すれば良いと思うよ」

「ああ、ありがとうな。それにしても、こんな物まで作れるようになってたんだな……」

「私も前にちょろっと見た程度だったんだけどね。とりあえず一回戻ってみて。いきなりあんなのが出現したわけだから流石に驚いてると思うから」

「ん、そうだな。それじゃあ一回行ってくるな」

「うん、行ってらっしゃい」



 それに頷いた後、ゴドフリー君はガーデンコントローラーを操作して姿を消した。そしてそれを見送った後、私は静かに顔がまた熱くなるのを感じながらその場にへたりこんだ。



「はあ……キス、しちゃったなぁ。関係性も恋人に変わってたし、これでゴドフリー君も私の事を異性としてちゃんと意識してくれたのかな……」



 正直、そこまでする気はなかったし、幸せな気持ちはありながらもやっちゃったなという気持ちもある。


 だけど、キスをしてでも関係を進めたかったのは、この停滞した状態じゃダメだという思いがあったから、そして少しでもゴドフリー君に触れる事で安心感を覚えたかったからなのかもしれない。



「……私ってズルいなぁ」

「いえ、そんな事はないと思いますよ?」

「え?」



 振り返ると、そこにはティアさんの姿があり、安心感を覚えながら私はティアさんに話しかけた。



「ティアさん、こんばんは」

「はい、こんばんはです。勇美さん、向こうでは大変な事になっていますが、お加減は大丈夫ですか?」

「……正直な事を言うと、なんで私がこんな目に遭わないといけないのという気持ちでいっぱいです。でも、起きてしまったからにはちゃんと解決しないといけないと思っています。

これまで神野和を応援してくれた新神のみんなや両親を安心させたいですし、何よりも神野和わたしを守りたいですから」

「そうですね。さて勇美さん、私が犯人を知っていると言ったらその正体を聞きたいですか?」

「犯人……はい、大体予想はついてますけど、やっぱり知っておきたいです」

「……わかりました。では、お教えします。此度の件の犯人、それは……」



 ティアさんは一瞬言い淀みそうになった後に哀しそうな顔で口を開いた。



「貴女のご友人“だった”浦木秋緋さん。彼女があの成り済ましアカウントを作り、神野和あなたを貶めています」

「だった、ですか……」

「貴女にとってはまだ友人かもしれませんが、彼女の思考を読み取った限りでは、先日の件で貴女の事は既に友人ではなく憎むべき存在になっているようです」

「そうですか……」

「……やはり、悲しいですか? たった一つの諍いが原因で一人の友人を無くし、その相手から憎まれるのは」



 ティアさんが心配そうに聞いてくる中、私は静かに頷く。



「……はい。でも、それよりも怒りの方が大きいです。無理やり連れていこうとしたのは向こうで、私はただ怒っただけなのに向こうが勝手に私の事を憎んで大切な物を汚してきましたから。そしてそれと同時に、あんな子をいつまでも有り難がっていた自分にも腹が立っています」

「そうですか……因みにですが、貴女が神野和であると気づいたのにはちょっとした理由があり、その原因となった人物はこの件について後悔をしているようです。それが誰かは貴女自身に見つけてもらいたいので言えませんが……」

「つまり、新神の誰かがうっかりそれらしい事を言ってしまったって事ですね。でも、それなら仕方ないですよ。私だってポロっと言っちゃう事はありますし、後悔してくれているなら怒るまではいきませんから」

「……貴女は本当に優しいですね。ですが、その優しさは時に誰かを傷つける刃にも貴女自身を危険に晒す原因にもなってしまいます。なので、何かあった際は、ゴドフリーさんに相談をする事をお勧めします。せっかく口づけを交わしあえるだけの関係になれたわけですから」

「はい……って、見てたんですか!?」

「はい、バッチリ」

「うぅ……誰も見てないと思ったのに……」



 ティアさんに見られていたという事実を知って恥ずかしさを感じていたその時、私達の目の前には青い渦が現れ始めた。



「あ、ゴドフリー君が戻ってきたのかな?」

「恐らくそうですが……ふふ、どうやら驚く事も待っているようですよ?」

「驚く事……?」



 ティアさんの言葉に疑問を感じながら待っていると、青い渦の中からはゴドフリー君が現れたが、その後ろからはどことなくゴドフリー君に似た男の人と女の人、そして古びた杖を持った一人のご老人が現れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る