第34話 謎の男

 父さん達と再会した後、俺はキビツヒコノミコト達と一緒に村のみんなとも集会所の中で顔を合わせた。


 みんな、俺がいる事に驚いていたけれど、すぐに会えて良かったとか生きていたんだとか言っており、その言葉に疑問を感じていたけれど、長老からの話を聞いた瞬間にその疑問の答えがわかった。



「お、俺がもう死んでる……!?」

「そうだ。昨日、王都の連中がお前が謀反を起こして、仲間達の手によって死んだと言いに来てな。謀反の件も死んだという件もそんなわけはないと言ったんだが、王都の連中はその言葉には耳も貸さずに謀反を企む奴の親族や故郷の連中などろくな奴らではないと言いきり、ワシらを殺そうとしたのだ」

「ミラベルから王子達がここへ向かったって言われたけど、本当だったらもう遅かったのか……でも、よくみんな無事だったよな。俺もここへ向かってキビツヒコノミコト達と一緒に歩いてきてたけど、その間、みんなが襲われてるなんて知らなかったし……」

「それなんだが……黒いローブを纏った何者かが助けてくれたのだ」

「黒いローブの何者か……?」



 長老の言葉に疑問を感じていると、父さんは静かに頷いた。



「俺達が襲われそうになった時、どこからかその黒いローブの奴が現れて、俺達に隠れているように言ってきたんだ。ソイツは一人だけしかいなかったから、流石に勝てないと思って加勢するとは言ったんだが、一人でも十分だと言ってきたから、邪魔にならないように素直に言う事を聞いたんだ。

そして集会所でみんな固まる中、外では戦いの音が聞こえてきて、いつになったら終わるかと思いながら待っていたら、いつの間にかその音は止んでいた。それで、外に出て様子を見ようとしたら、ソイツが中に入ってきて終わったから出てきても良いと言われたんだ」

「男衆が警戒しながら出ていくと、王都の連中は全員いなくなっていて、少々焦げ臭さなんかはあったが、皆の家も果樹なども全てが無事に残っていて、ワシらは歓喜の声を上げたもんだ」

「その黒いローブの奴、本当に強いんだな。でも、どうして助けてくれたんだ? 今の俺は勇者の地位を無理やり奪われてるし、王族は俺のありもしない悪評を他の国にでも広めてるだろうから味方になってくれそうな奴なんていないのに……」

「そこはわからん。だが、その黒いローブの奴はどうやら男のようなんだが、偽物の勇者など許せぬ上、本物の勇者の故郷を滅ぼされてはたまらないから助けたと言い、礼をしたいというワシらの言葉を断り、そのまま去っていったよ」

「おかげでウチの若い娘達はみんなその黒ローブの男に熱を上げていてな。若い男達も悔しさを感じながらも自分達では実力でも男ぶりでも勝てないと言っていたよ」

「なるほどな……」

「それで、ゴドフリー。この男達は何者なんだ? それに、勇者の地位を無理やり奪われたと言っていたが……」

「あ、そうだったな」



 俺はここまでの経緯をみんなに話した。勇者の地位を王子に奪われ、仲間達からも裏切られた件に関してはみんな憤っていたが、ノドカ達の話になるととても不思議がっていた。



「異世界の女神、か……だが、その女神の姿をワシらは見る事が出来ないのだな?」

「こっちに来る事は今のところ出来ないみたいだしな。ただ、このガーデンコントローラーで神庭に行って、そこで紹介する事は出来るぜ?」

「そうか……そして、お前は追いやられた僻地を開拓し、そこを新たな村にしたい、そう言ったな?」

「ああ。もちろん、嫌ならそれでも良い。ただ、こことあそこを俺も行き来するのは時間がかかるし、また王子達が攻めてくる可能性はあって、今度こそその黒ローブの男が来ない事も考えられる。

だから、出来るなら一緒に開拓をして、新しい村を作ってほしいんだ。もう俺は世界を救う勇者なんてのはやる気にならないし、村にはずっといるつもりだからさ」

「ふむ……たしかにこのままではまた襲われ、今度こそ村の者が皆全滅する恐れがあるな。わかった、皆でそこへ移動し、新たな村を作るとしよう」

「長老、ありがとうな」

「礼には及ばん。だが、この村にはワシのように老いぼれた者も少なからずいる。長い距離の移動は難しいぞ?」

「それなんだよな……よし、とりあえず神庭に戻って、何か手だてがないか調べてくるよ。キビツヒコノミコト達は申し訳ないけど、みんなの事を頼む。四人の力はたしかだろうし、ウチの村の奴らも結構頼りになるからさ」

「承知した。よし……ではお前達、四方に分かれて見張りをするぞ」

『畏まりました』



 イヌカイタケルノミコト達は揃って返事をすると、そのまま集会所を出ていき、その姿に村のみんなは驚いていた。



「ここまで歩いてきたのにも関わらず、今から見張りまで出来るのか……」

「すげぇ……あの黒ローブの男の時も思ったけど、俺達じゃ勝ち目がねぇな……」

「それだけの実力者なのだろう。ゴドフリー、よく帰ってきてくれた。疲れているとは思うが、よろしく頼むぞ」

「ああ、任された。よし……とりあえず神庭に戻ってくるよ」



 そう言った後、俺はガーデンコントローラーのメニュー画面を開き、神庭に出発するを選択した。その後、現れた青い渦にみんなが驚く中、俺はそのまま青い渦の中を通っていった。


 そして神庭に着いてみると、そこにはノドカの姿があり、俺は早速話をするためにノドカへと近づいた。



「よっ、ノドカ」

「……あ、ゴドフリー君。こんばんは……」

「ああ。って、なんだか元気がないな。一体どうしたんだ?」

「うん、実は……」



 ノドカは暗い表情のままで話を始めた。

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