第28話 新たな道

「そうか。よかったな、受け入れてもらえて」



 話を終えると、ゴドフリー君は優しく微笑んだ。ゴドフリー君の話を聞き終えた後、私はティアさんと一緒に両親に神庭やゴドフリー君の事について正直に話した事、そして秋緋との事について話をした。


 話した事自体には驚いていたけれど、両親が信じてくれた事はゴドフリー君も安心したようで近い内に両親が、特にお母さんが顔合わせをしたいと言っていた事については少しだけ緊張したような顔をしていた。



「それにしても、ノドカの両親との顔合わせか……ノドカの父さんからすれば本当にどこの馬の骨とも知らない奴が娘と仲良くしていたわけだし、心配するのは仕方ないよな」

「昔から男の子の友達はいなかったのに、そんな中でそれ以上の関係になってる男の子が突然いたもんだからやっぱりね。でも、嫌悪感はないようだし、むしろお父さんの方が緊張してたからたぶん悪いようにはならないと思うよ」

「だったら良いんだけどな」

「それに、ティアさんとお母さんがその数時間ですごく仲良くなっちゃったしね。また近い内におじゃましますって言ってたよ」

「あはは、それじゃあ友達として女神様が訪ねてくる数少ない家になったわけだな」



 笑いながら言っていたゴドフリー君だったけれどその表情は少し心配そうな物に変わった。



「それは良いとして、アキヒって奴との件は不安だな。性格的に今回の件について後で謝ってくるような奴なのか?」

「謝りはするけど、あまり真剣な感じにはならない子かな。いつも笑いながら謝る感じだから真剣には見られないから、そういうところは他の子達からもあまり良くは思われてないかも」

「それでもノドカは友達を続けてるんだな。何でだ?」

「うーん……そうだなぁ、そんな子でも秋緋は色々気になった事を教えてくれるし、話していて楽しい子ではあるから、かな? まあ秋緋以外に友達らしい人はあまりいないし、強いて言えば少し前に話をした岩永さんくらいかな?」

「イワナガ……ああ、この前初めてちゃんと話したっていうノドカのファンの奴だな。あれからも話はしてるのか?」



 ゴドフリー君からの問いかけに私は頷く。



「学校では秋緋が話しかけてくるから中々話す機会がないけど、配信の後には感想をすごく話してくれるよ。もっとも、私が神野和本人だとは思っていないからこその言葉だから、嬉しいやら気恥ずかしいやらだけどね」

「気に入られてるなら別に良いと思うぜ? それに、その感想を聞いてもっと自分の活動をより良い物にはしていけるわけだし、ノドカにとっては良い出会いになったんじゃないか?」

「うん、そう思う。もっとも、身バレを避けるためなのもあって、全部活かすわけにはいかないんだけどね」

「身バレ……?」



 不思議そうなゴドフリー君に対して頷きながら答える。



「あ、うん。簡単に言えば、私が視聴者の人に神野和じゃなく三神勇美だってバレる事で、私達みたいな別の姿を使って活動してる人達にとってあまり好ましくない事なんだ」

「なんで良くないんだ?」

「まあ理由は色々あるけど、たぶん特に多いのは身バレする事で悪意を持った人や家を特定した人が訪ねてくるのを避けるためかな。悪意を持った人がその活動を邪魔しようとしたり私生活を勝手に他の人に教えたりしたら活動どころかその人の生活にも支障が出ちゃうからね」

「そういう事もあり得るのか……たしかにそんな事されたらおちおち昼寝も出来やしないし、結構面倒だな」

「面倒なんていうレベルじゃないんだけどね。後は、VTuberの多くは普段の自分とは違った姿やキャラクターでやってる事が多いから、視聴者の人達の夢を壊さないようにしたいっていうのもあるかな。私だって岩永さんがガッカリしてる姿は見たくないしね」

「ガッカリ、か……本当にそうかな?」

「え?」



 ゴドフリー君の言葉に疑問を感じていると、ゴドフリー君は私の目を真っ直ぐに見ながら口を開いた。



「俺だったらスゴいなって思うし、誇らしいと思うぜ? そりゃあそのイワナガはどう思うかわからないけど、俺は自分の身近なところに応援してる奴がいたって知ったら驚きはしても嫌な気持ちにはならないし、むしろもっと話してみたいって思うけどな」

「もっと話したい……」

「後はノドカさえ良いと思うなら、身近な出来事を配信の中で話すのも面白そうだ。そういうのって無いのか?」

「ううん、あるよ。雑談配信がそれに当たるかな。全部話せるわけじゃないけど、最近こういうのを買ったよとか他のVの人とこういうところに行ったよみたいなのを話す人はいるからね」

「じゃあ、視聴者にも聞いてみても良いかもな。いつものお告げや俺達の事ばかりじゃなく普段の出来事を話してみても良いかってさ」

「……うん、そうだね。そういうのから新しいファンアートが生まれる事もあるし、それを楽しんでもらえたらコンテンツとして更に良くなっていきそう。ありがとう、ゴドフリー君。今日の配信で早速聞いてみるよ」

「ああ、わかった。ノドカ、お互いに色々事情はあるけど、これからも一緒に頑張っていこうな」

「うん」



 私が返事をすると、ゴドフリー君は嬉しそうに微笑んだ。正直、不安がないわけではないけれど、せっかくの提案だし、試して良い方へ行くなら私だってそれを試したい。これまで支えてきてくれた新神のみんなにももっと私の配信を楽しんでほしいから。



「……よし、頑張ろう」



 拳を軽く握りながら私はやる気を高めつつ呟いた。

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