ナナちゃんとスケート

「なんであんなに怒るかなぁ、ナナは親切で誘ってあげただけなのにぃ」


ナナちゃん、朝から不機嫌です。

お隣の女子高生のお姉さんをスケートに誘ったら、エライ剣幕で怒られたからです。


「ねぇ、一緒にスベリに行こうよぉ。いっぱい滑ろうよ、楽しいよ~!

滑ろうよ、スベろうよ、スベローよぉ~!!!って、普通じゃない?」


いやいや、ナナちゃん。

TPOをわきまえましょう。

お姉さん、一応受験生だからね。


「ふうん、世知辛い世の中ねぇ。渡る世間は鬼ばかりだわ、ああ、いやだいやだ。」


ナナちゃん、急に老け込まないで!

それに、100パーセント、あなたが悪いからね。


「ああ、そうやって、若者は年寄りを馬鹿にするんじゃ。何れお前達にも分かる時が来るわい」


ナナちゃん、いやもう、何言ってんのか分かんないよ!


「はいはい、年寄りは寂しく一人でスケートに行きますとも、ええ、ええ、そうしますとも。

さあ、ポチ!お馬鹿なお兄さんをからかうのも飽きたから、スケート場に行くよぉ!」


お供に愛犬ポチを連れて、元気いっぱい、隣町のスケート場に向かいます。


先日までは、温泉施設だったスケート場。

何処とも無く現れた雪だるまが作ったとか、何だか?


「あら、ここは巨大露店風呂だった所だわね。

随分と立派な天然スケートリンクになったものねぇ。

はて、奥に見えるのは、以前、ウチの前で迷子になってた雪だるまさんじゃなくて?

リンクと一体化してるわねぇ。」


「おおっ!

そこにお越しになられたのは、先だって温泉への道案内をして下さったお嬢さん。

いやはや、お久しぶりです。」


「あらぁ、やっぱりあの時のユキダルさん。

ご機嫌いかが?」


「それが、某が温泉に浸かった途端みるみる間に、湯が水に水が氷となってしまい、この体たらくなのですよ。

身動き取れず、困っておりますと、温泉施設は閉館するは、新たにスケート場としてオープンするはで、もう訳けが分かりません。

だるまだけに手も足も出ずに途方に暮れている次第です。」


「あら、そうなの?

それはお気の毒さまねぇ。

じゃあ、ナナがユキダルさんを、そこから助け出してあげるわね。」


「おおっ!

左様でございますか、それは有難い。

お嬢様は、確か以前に温泉師だと仰られておられましたかな?

やはり、只者では無かったのですな。」


「ううん、ナナはただのキュートな女の子だよ。

でも、丁度、便利な人が『自分探しの旅』から帰って来て、ナナの家の裏の納屋に住み着いてるの。

〈ランプの精〉って云うんだけど、ナナの願いは何でも叶えてくれるから、氷からの脱出なんて、全然OKだよ!」


ナナちゃん、急いで家に帰ると、納屋からランプの精を連れて来て、呪文一発。

すると、あらあら不思議、雪だるまは、いとも簡単に救出されたのでした。


勿論、雪だるまが居なくなった途端、スケートリンクは温泉に逆戻り。


「うーん、スケートが出来なかったのは残念だけど、冬はやっぱり温泉よねー。これなら、お隣のお姉さんも誘えるってものよ。」


湯上りに腰に手を当てて、コーヒー牛乳を一気飲み。

ご満悦のナナちゃんでした。

めでたし、めでたし。

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