トイレのナナちゃん
ナナちゃんは、家の中にどう考えたって必要の無い場所があると思っています。
トイレです。
「だって私みたいなアイドルなスーパーキューティーレディは、用を足さないもの」
今日も今日とて、お手洗いの前で
「この無駄なスペースが無ければ、もっと収納が増やせるのに」
なんて、ブツクサ文句を言っています。
すると、ぐらぁ、ぐぅらあぁ、グラァー!!!
地震です。
体感震度6弱、マグニチュード7は、あるに違いありません。
とっさに頭をよぎったのは、「机や椅子の下に入り込み、頭をかばう事」でしたが、このひどい揺れではテーブルのあるリビングまで辿り着けそうにありません。
そうだわ、何かの本で読んだけど
『地震のときトイレが一番安全というのは、ズバリ本当です。地震の揺れで命を落とす場合、考えられる状況は〈家屋の倒壊〉か〈家具の転倒〉。トイレは基本的に転倒する家具がなく、窓も小さいですから、ガラスが割れてけがをする可能性がほかの部屋に比べて低いのです』
何故かTOTO株式会社の回し者みたいなセリフを口ずさみながら、目の前のトイレへと避難するナナちゃん。
大きな横揺れ、突き上げる様な縦揺れが終わると、やっと世界は平常を取り戻しました。
おそるおそるお手洗いから出てみると、目の前には惨状が広がっていました。
テレビやタンスは転倒し、水屋からは、食器が飛び出し、書架の本や雑誌は全てぶち撒けられています。
でも、ナナちゃん自身は、かすり傷一つ負っていません。
トイレは、まさに命の恩人と言っても良いでしょう。
「今まで、あなたの事を無用の長物だなんて罵っていて、本当に悪かったわ。
心のそこから反省するから、全部水に流してね」
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