ナナちゃんと夜空

暖かな夜の事、ふと思いたって、ナナちゃんは釣竿を手に取ると近くの池に向かいます。

何だか、大物が釣れそうな気がするの。


今宵は十五夜、まん丸なお月さまが、こうこうと辺りを照らし、夕方くらいに明るい感じです。


おもむろに竿を出すと、あとは魚たちとの我慢比べ。

「そんなに簡単には、釣れないわよね」


じっとしてると温かな夜気に包まれて、うとうと、すやすや、、、。


すると、突然ぐいーんと釣竿に手応え。

「キターーーッ!」

「ん?!」


釣り糸の先を眺めると、水面に映るお月様が針に引っかかってます。


「うわぁ、エライこっちゃあー」

何故か急に関西弁になったナナちゃんは、大慌て。

力まかせに竿を引っ張ります。


すると、ぷらーんとまん丸なお月様がたぐり寄せられました。

「大物と言えば、これ以上の物ってあんまり無いわよね」

ナナちゃん、いそいそと釣り上げた月をビクにしまいます。


満月を釣ってしまったので、途端に辺りは真っ暗。

でも、しばらくすると、月の明かりで隠れていた星たちが、次々に姿を現します。


満天の星空。

ミルキーウェイも鮮やかに、幾多の流れ星も我を競って駆け回ります。


「うわぁ、とても綺麗、なんて素敵」

ナナちゃんは、上機嫌で家路に着きます。


すると、目の前に天空から、一本の紐がぶらりと下がっているのを発見。

先っちょには、丸いプラスチックの玉。

「ん~?どこかで、見た様な?」


行動的なナナちゃんは、躊躇せず、紐をぐいーんと引っ張りました。


バッチン!!!

弾ける様な音がして、たちまち辺りは真っ暗。漆黒の闇。


「あわわわわ」

すっかり仰天したナナちゃんは、慌てて紐を引き直します。


パチッ!

すると、辺りは元どおり満天の星空です。


「なるほどね」

夜空のスイッチは、ナナちゃんだけの秘密です。

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