ナナちゃん物語

薄神てつな

ナナちゃんのゴールデンウィーク

「今年のゴールデンウィークは9連休だって、凄いねポチ。何しようか?」


GWを直前にして、愛犬ポチと一緒に黄金週間の楽しみ方を考えるナナちゃんです。


「確か近くで有名な古本市があるんだよ。掘り出し物、珍本、希少本が一杯出品されて古書マニア垂涎の的。コレクターが世界各地から訪れるイベントなんだって、これは絶対外せないよね」


おいおいナナちゃん、一体何歳だよ、趣味が渋過ぎるよ。


「あら読者には見えて無い事になっているお兄さん、お久し振り。相変わらず間抜け面してるわねぇー。〈背取り〉って言葉を知らないの?」


えっ、せどりぃ〜?

昔、日産自動車から〈セドリック〉って云う高級車が確か販売されてたけど、ごにょごにょ、、、。


「あら、やっぱりお馬鹿さんねぇ、古本市に自動車が売ってる訳けないじゃない!〈背取り〉と云うのは文字通り、背表紙を眺めて貴重な本を探し出して買い取ることよ。令和になってからは、〈転売ヤー〉なんて職業もあるくらい何だからね」


ちょっ、そ、そこまで罵倒しなくても。それに「令和になってからは」って何だよ。ここは何時の何処設定なんだよぉ〜!


「ふん、白癬菌の分際でごちゃごちゃ言わないでくれる。と云う訳けでGWの初日は古本市に決まり〜」


そして待ちに待ったGWの初日。ナナちゃんはポチをお供に連れるとウキウキソワソワ古本市の会場「みやこめっせ」にやって来ました。

意気揚々と会場に入ろうとするナナちゃん、いきなり入口で係の方に止められてます。

ペットは一緒に入れない?

そりゃ、ごもっとも。

ナナちゃん表のベンチにポチをリードで留めると、仕切り直しとばかり颯爽と古本市会場に入って行きます。


「うわぁー、スゴイ!さすが宇宙最大規模って云うだけあるわねぇ。あっ、いい物見つけたあ!」


ナナちゃんがダッシュで向かったのは、絵本を中心に集めたお店、〈寿萬寺堂〉世界各国から選りすぐりの絵本・児童書が集められています。


「なんて素敵、なんて綺麗なんでしょ」

ナナちゃん目をハートマークにしながら店内を物色します。

すると、本に紛れて置いてある古い木箱を発見。

「何じゃこれは、滅茶苦茶年季が入ってござるのう」

と呟くナナちゃん。


いやいや、だから君何歳だよ!

その物言いがメチャクチャ年季入ったご老人だよ。


勿論〈物怖じする〉と云う言葉が辞書に無いナナちゃんですから、直ちに蓋に手をかけ、

「それ、ぱかっとな」

躊躇なく開けてしまいます。


「あら、これは何だろう?双六みたいな感じのボードゲームよね。このサイコロを振るんだね、きっと。せいの、ころっとな」


ああ、やはりナナちゃんの辞書には〈躊躇う〉も無かった。

途端に何処からか大音量が響き渡ります。

「ジュマンジィーー!!!」


賢明なる読者諸君は既にお気づきでしょう。

この双六こそは、かつてハリウッドで映画化されて大ヒットを遂げたあの幻のボードゲーム《ジュマンジ》だったのです。


ああ、ロビン・ウィリアムズ。

良い俳優さんだったよな、本作でも『身体は中年になっても精神が子供のままのアラン少年』を好演していたよな。

いやあ、映画って本当に良いですね。


あれれ、黒子のお兄さんが何だか一人で盛り上がって水野晴郎みたいになっちゃてるよ、、、。

ナナちゃんは、ボードゲームに吸い込まれて消えちゃうし、このお話の『オチ』はどうなっちゃうの?


えっ!

オチなんか無い?

そんないい加減なぁ、、、

なんか収まり悪くて、気分がそわそわするよぉ。

えっ!

何だって?

「これが、所謂、落ち着かないでございます」


おあとがよろしい様で。

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