第五分節:毛沢東、逮捕さる!(参)

 毛沢東の逮捕は偶然ながら、その影響力は非常に大きなものであった。結果的に支那のライアー・プロパガンダが、すなわち自称「被害者」といった立場が崩れ去ったこともだが、一番大きかったのは赤軍ネットワーク、つまりは世界革命のドクトリンが遂に白日の下にさらされたことである。それは、間違いなく大日本帝国の手柄であり、同時に共産主義者がいかに三千年の王朝に嫉妬していたのかがうかがえる恰好となった。そして、ルーズベルトをその傀儡として合衆国の軍事力や工業力を利用して大日本帝国を潰そうとしていたことが明らかになった。すなわち、ソビエト連邦が一兵を損なうこともなく。かくて、共産党員の大日本帝国転覆並びに合衆国を利用した二虎共食の計という陰謀が明らかとなり、ここに、大東亜戦争は新しい局面を迎えた。ヨシフ・ジュガシヴィッリの労せずして帝国政府を破綻させようという恐るべき陰謀は遂に白日の下にさらされ、すなわち破綻したのだ。

 そして、帝国政府はその共産党のスパイリストを参考にし、直ちに綱紀粛正を図った。あろうことか、かの賢臣、石原莞爾の側近にもその共産党によるスパイが入り込んでいたのだからどこまで恐ろしい陰謀であったのだろうか!

 そして、国共合作が総崩れとなった結果、毛沢東だけではなく蒋介石の命も風前の灯火となっていった。その政治的余命は、毛沢東に比べれば今少し長かったものの、成都攻略戦によってフライング・タイガース(そもそも、合衆国がこれを派遣したことを考えれば、明らかに中立国の義務に対する違反条項である!)諸共捕縛されるに至った。1942年も春が近づいた頃のことであった。

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