第十二分節:モスクワ陥落;とりあえず素組みだけでも(汗

 1942年1月のことである、ドイツ第三帝国はタイフーン作戦を完遂した。ソビエト連邦の首府、モスクワのクレムリンに翻るその旗は誰がどう見ても鎌と槌の、被害者の血でまみれたかのようにドギツイ赤で塗られた汚らしい旗ではなく、その名も誉れ高いハーケンクロイツであった。それが意味する事実はただ一つ、クレムリンは遂に赤軍より解放されたということである。

 だが、それは即座にドイツ第三帝国の戦いの終わりを意味するわけではない。赤軍残党の追捕も必要であったし、何より大敵イギリスはまだ西に存在している。アイルランド独立軍を支援して現在は反独勢力の結集を阻めているものの、ガリポリの肉屋ことデブのトミィ、チャーチルずれが自分の肉を物理的に売るまではその進軍を止めてはいけない。それに、あの肉屋はアメリカ合衆国と同盟を結んでおり、急ぎその肉をミンチにしなければどんどんと国力や軍事力は増強されてしまうだろう。

 急げ、ヒトラー! 世界の命運はその双肩に掛かっている! なんとしてでもアシュケナジムの魔の手より人間界を救い出すのだ!


 次回の「燦たり輝くハーケンクロイツ」は「ゼーレーヴェ作戦」である、アハトゥンク、レクツィオーン、オペラツィオーン!


「……こんなもんでどうでしょうかね、宣伝大臣」

「……微妙」

「えぇーっ!?」



 ……ドイツ第三帝国は、無事モスクワを陥落させた。だが、首魁スターリンは捕らえたものの赤軍自体はまだ存在している。指導者候補がまだ存在する関係上、まだ安心は出来なかった。そう、そのはずだった……。

「ウラソフ将軍にモスクワを防衛させる!?」

「本気か」

「如何にも、本気だ」

「……マンシュタイン司令官ともあろう御方が耄碌召されたか」

「そう、見えるかね?」

「……見えはしませんが、先ほどの提案は、流石に……」

「ああ、危険な博奕だとも。但し、見返りは大きい」

「……それは、そうかもしれませんが……」

 解放したモスクワに駐屯させるドイツ軍の部隊を誰にするかで会議は揉めていたが、マンシュタインが途方もない案を立案したことで会議は急速に動き出した。その立案の真意とは……。

「それでは、ロシア諸民族解放委員会にモスクワを防衛させる、ということで……」

「危険な采配だが、やむを得ないか」

「……これで東部戦線は一応解決したが……」

「……アシカを陸上に上げるのはまだ難しいでしょう。上げる気はまだありますが、如何せんカトンボが鬱陶しい」

「空母さえあればな……」

「いや、空母の有無よりも……」

「言うな、空軍を敵に回したくは無い」

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