第二分節:アメリカ合衆国の錯乱(前話)
「……それで、以上かね」
「イエス・サー・プレジデント」
「……全く、現地の守備隊はなにをしていた!」
「畏れながら、守備隊に厳重警戒を下命していなかったのは大統領閣下であります!」
「それは、連中を誘い出すためのだな……!!」
「その結果が、このざまです!」
「なんだと、貴様誰に向かっ「大統領閣下、大変であります!」被害報告なら聞いたぞ!」
「そっ、それが……」
「連中は今度どこに猿の楽園を作るつもりだ!」
「……ハワイ、シアトル、そしてアンカレッジが占領されました、どうやら潜水艦に小型揚陸艇を搭載していたらしく……!!」
「……は?」
12月14日に「奇襲」された合衆国軍の基地は次の通りである。
・パナマ運河
・ハワイは真珠湾
・シアトルのボーイング製造所
・アラスカはアンカレッジ
・グアム委任統治領
・カリフォルニア州
・ウェーキ島
・ライン諸島
・マーシャル諸島
・ギルバート諸島
・キューバ島
・イスパニョーラ島
・フロリダ州
……都合、13ヶ処に亘る基地で大日本帝国軍は同時攻勢を開始した。よく物資が持ったな、と感心するがこの同時攻勢の内、少なくとも数カ所はブラフに過ぎず、本命とされるのはパナマ、シアトル、アンカレッジ、そしてハワイであった。さすがにワシントン州全域の占領なんて国力は全財産をはたいても不可能な上に、維持なんてもっと不可能なわけであり、西インド諸島ことアンティル諸島に至ってはパナマ運河急襲のための陽動に過ぎなかった。
とはいえ、この大日本帝国の攻勢によって後の「アンティル連邦」が形成され、日本軍の駐留基地が置かれるのだから世の中何が起こるかわからんもんである。
話を戻そう。大日本帝国陸海軍は、先程述べた13ヶ処の合衆国軍駐留基地を同時攻撃したのだが、不思議なことにフィリピン諸島――後の呂宋共和国――には攻撃を仕掛けなかった。この絶好の機会に、である。
それもそのはずで、呂宋島攻略は軍艦大和の完成を待ってから行われることになっており、大和を初めとした戦艦の艦砲射撃によってコレヒドール要塞を叩き潰すという簡潔明瞭な作戦であったのだが、ゆえに軍艦大和の竣工日である12月16日まで呂宋攻略作戦は延期されることとなる。
そして、この作戦延期が思わぬ福音を呼ぶ。当初、フィリピン侵掠を想定していた合衆国軍はこの同時攻勢によって完全に色を失い、フィリピン諸島の防衛を放棄、現地のマッカーサー将軍には「現有戦力でなんとかせよ」とだけ下令して、そのまま太平洋艦隊を……折角母港として前進させていたハワイ基地どころかサンディエゴからすら引っ込めて、なんと同盟国領であるバンクーバー島にまで撤退してしまった。12月16日のことである。
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