第72話 文化祭前日 1
文化祭前日、この日は授業が一切なく学校にいる時間全てを文化祭準備のために使って良いという、勉強が嫌いな人にとっては最高の一日であり、文化祭を成功させたいと思っている人にとっては腹を括らなければいけない一日である。
ちなみに俺は前者側であり、今日は指示通りに動きながら友人と雑談をして緩く過ごそうと考えていた。うちのクラスの人はとても優秀な人が多いので特に頑張る必要がないのだ。控えめに言って最高です。
「あぁ……腕痛てぇ……」
肩の力をいつも以上に抜いてのほほんと過ごそうとしていた俺だったが、この前のパイプ椅子運びの時に負った名誉の傷、両腕の筋肉痛がまだ回復していなかった。
俺の体あまりにも非力すぎる……パイプ椅子を運んだだけでこんなに筋肉痛になるとか……やっぱ少しくらいは筋トレした方が良いのかな。でも多分三日坊主で終わると思うからいいや。
「あ、拓人!」
「いっ!」
「あ、わりい」
正樹に腕をトントンと叩かれ、激痛とまでは行かないがそれなりの痛みが走り、俺は体をびくりと震わせる。どうしてこういう時に限って肩じゃなくて腕を叩くの!!もしかして狙ってやってる!?
「どうした正樹、何か用か?」
叩かれた腕を優しくさすりながら、俺は正樹に質問する。現在俺はクラスの出し物の準備に加わっていた。とは言っても後ろで眺めつつ、何か指示が出たら動くという完全な指示待ち人間になっていたのだが。
確か正樹は生徒会の方のお仕事に行っていたはず……おや?なんだか嫌な予感がしてきたぞ?
「ああ、実はちょっと生徒会の方の手伝いをしてほしくてさ」
うわぁ……嫌な予感的中しちゃったよ。
最近よく見た光景だったため、なんとなくの予想はついていたのだがやはり生徒会のお手伝いだった。別にめんどくさいという気持ちは無いし、なんなら少し暇を持て余していたのでお手伝いをすることに関しては前向きな気持ちなのだが……。
筋肉痛なんだよね、しかも両腕。
絶賛筋肉痛が痛い状態が続いているで、力仕事をすればあら不思議。地獄のような痛みを体験することが出来ます。残念ながら俺はMじゃないので全然嬉しくないです。
「……まぁいいけど、勝手にクラスの準備から抜け出しちゃって大丈夫なのか?」
筋肉痛は残っているが、俺に拒否権はあるようでない。それに今まで手伝っておいて今日は無理というのもおかしな話だ。腕が痛くなるのと筋肉痛が長引くのは我慢するしかない。普通につらいです。
「声掛ければ大丈夫だろ。委員長!ちょっと拓人のこと借りるけどいい?」
「ん?いいよー!」
「ありがと、助かるわ!」
二つ返事でオッケーが出ました。まぁ俺ほとんど何もしてないからね。いてもいなくてもあんまり変わらないからしょうがないか。
「それで今日は何を運ぶんだ?」
「プロジェクターとその他諸々の物を体育館に運んで設置する感じ」
おぉ……意外と楽そうではある。今日はそんなに腕に負担掛からなさそうな感じがする、非常にありがたい。我慢するとは言ったが出来ることなら痛い思いはしたくないからね。
「うん、まぁこんな感じで大丈夫かな。お疲れ拓人」
「……おう、正樹もお疲れ」
前言撤回。ふっつうにきつかったです。プロジェクターを運び終わった後、普通に機材の運搬と机や椅子をセッティングしました。その他諸々の方がメインなのではと思うほどに体を使いました。次からはその他という言葉に対してより一層の警戒心を持つことにします。
「佐藤君、すごく助かったよ。クラスの出し物もあるのに手伝ってもらってすまない」
「いや全然大丈夫っすよ赤坂先輩。クラスにいてもただぼーっとしてるだけだったんで」
「佐藤君のおかげで順調に準備が進んだよ、本当にありがとう」
「力になれて何よりっす」
赤坂先輩に感謝の言葉を伝えられ、ほんの少しだけ気恥ずかしさを感じる。こうして面と向かって感謝を言われ慣れてないから干の気まずさを感じるのよ。この気持ち伝われ。
「それじゃあ自分はこれで」
「サンキュー拓人、マジ助かった。片付けの時もよろしくな」
「気にすん……え?」
あ、片付けもお手伝い強制なの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます