第73話 文化祭前日 2
生徒会のお手伝いが終わり、教室でのんびりと指示に従って作業をしていると、今度は委員会から呼び出しがかかる。クラスの出し物のお手伝いをほとんどしてないのは気のせいじゃないだろう。まぁお手伝いする必要がそもそもないんですけどね。
というか図書委員会での仕事も確か会場のセッティングじゃなかったっけ……え?死ぬが?
治りかけていたはずの筋肉痛が何故か威力を増して戻ってきたせいで俺の腕は限界寸前。別に無理をすれば力仕事もできるのだが、正直言ってこれ以上腕を動かしたくない。だって痛いんだもん!!
ま、まぁ?図書委員会は生徒会と比べて男子もそこそこいるし?別に俺一人が働かなくたってなんとかなると思うんですよ。ほら、あれですよあれ、怠けアリの法則ってやつですよ。自ら率先して怠けアリになって組織のレベルを上げようとしてるんですよ僕は。
出来れば自分に仕事が回ってこないで欲しいという思いを胸に図書室へと向かう。だが、俺の期待はあっけなく打ち破られることになる。
「佐藤、それこっちに持ってきて」
「……了解っす」
俺は絵本を飾っておく用のマガジンラックを指示通りの場所に運ぶ。はい、というわけで俺は今白百合先輩の両手両足となり身を粉にして働いております。
委員会で集まってから出来るだけ息を潜めていたのに、なんということでしょう。白百合先輩に裾をちょいちょいと摘ままれ、「佐藤、今は私の手足ね?」と言われました。
一部の人にとってはご褒美になるのかもしれないが、俺からしたらただの地獄である。美少女の手足になれて嬉しいだろって?だから今筋肉痛が痛いんだって!!全然嬉しくないんだからね!?なんかツンデレみたくなっちゃった。
「佐藤、こっちはもう大丈夫だからあっちを手伝ってあげて?」
「うっす、了解っす」
俺は白百合先輩の新たな指示に従い、図書室の机を恥に寄せる作業に加勢する。出来れば働きたくないなぁとか思ってたのにまさか一番働くことになるとは思ってもいませんでした。教室であんまり働かなかったことの揺り戻しですかね……。それにしては揺り戻し大きすぎると思うんですけど。仕事量2、3倍くらい増えてない?
俺は先輩方の指示に従い、せっせと働く。俺の腕は限界を迎えたことで逆に力が湧いてきた。徹夜した時に何故か眠気が急に無くなることがあるでしょ?それと同じです。まぁつまりは明日とかにとても痛い目を見ることになるんですよね。あぁ……憂鬱だわぁ。
「あぁ……疲れたぁ……」
俺は周りの人に聞こえないように言葉を漏らす。多分この後の仕事は他の人がやってくれるだろうし、俺の仕事はおそらくメイビーないだろう(希望的観測)が、一応白百合先輩に他の仕事が無いか聞いてみるか。
「白百合先輩、他にもう仕事ないすかね?」
「うーん……じゃあ私と一緒にどの絵本を並べるか決めよう。佐藤はどの絵本が好き?」
急に楽で可愛い仕事来たわ。楽な仕事来てほしいなぁとか思ってたけどそんな可愛い感じの仕事を俺がやっちゃっていいのかなと不安になってしまう。ま、まぁ白百合先輩には逆らえないのでとりあえず断腸の思いで絵本の剪定でもしましょうかね。ひゃっほい。
「そうっすね……自分は良くこれとか読んでましたね」
「分かる、私もこれ好きだった。後個人的にこれとかすごいおすすめ」
「へぇ……それ初めて見たっす」
「読む?」
「いや流石にサボるのは周りの人に申し訳ないというか……」
「佐藤はもう十分働いた。後は他の人に任せればいい」
え、何急に。今までツンツンとまでは言わないけどかなり辛辣な感じで接してきてたのにいきなりデレ要素入れてくるじゃんこの人。何?もしかして、もしかしてだけど……俺のことが!?
「何か変なこと考えてない?」
「いや全く」
いや冗談ですやん、ちょっとしたジョークですやん。というか俺そんなに顔に出るタイプじゃない思ってたんだけどなぁ……白百合先輩ってもしかしてエスパーだったりする?
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