第64話 赤薔薇と白百合 1

「なぁ拓人、今日の放課後暇?」


「んあ?特になんもないけどどしたの」


 授業と授業の間の短い休み時間に正樹から突然今日の放課後の予定について聞かれる。


 帰宅部の俺は図書委員会の仕事がある日以外は基本的に暇なのだ。これが帰宅部の良いところでもあり、悪いところでもある。まぁ?青春なんて必要ないし?自分の趣味に没頭できる時間がたくさん増えるから、俺にとってはめりっとしかないんだけどね?……あれ?夏は終わったはずなのに汗が出てきたな……。


「実はさ、ちょっと生徒会関連で手伝ってほしいことがあってさ」


「え、何?生徒会ってそんな人少なかったっけ?」


 俺のイメージだと十分な数の生徒がいた気がするけどなぁ……。


「いや数自体はいるんだけど男女比がちょいおかしいんだよね」


「おかしいってどんくらい?」


「男3で女7」


「おう……」


 それは吹奏楽部の男女比じゃん。生徒会って丁度半々くらいなイメージが強いんだけどなぁ……。


「それで?仕事内容は?」


 まぁ男女比の話をされた時点で力仕事関連が来るのは何となく予想がついてるんだけども。


「ちょいと力仕事を」


 あ、やっぱりそうですよね、なんとなく予想はついてました。


 人数が足りているけど、お手伝いを頼みたい。それでいて男が少ないんだよねはもう役満レベルである。これで大抵の人は力仕事が来るんだろうなぁと予想がつくだろう。


「まぁ、特になんも予定無いからいいぞ」


「さんきゅ、マジ助かる。今度一本ジュース奢るわ」


「マジか、じゃあ喜んでやるわ」


 なんと報酬までついてくるらしい。親友の助けになれるし、ジュースも貰える。まさに一石二鳥と言うやつだ。俺、喜んで生徒会の犬になるよ。


「じゃあ放課後よろしくな」


「あいよ」





「正樹、これはどうしたらいい?」


「ん-と……それ一旦生徒会室に持ってこうかな」


 時は変わって放課後、俺は絶賛正樹のお手伝い中である。俺は段ボールを一度別の場所に移し、再び備品を整理していく。今回手伝いを頼まれた仕事内容は備品の整理や数の確認と言った本当に雑用のお仕事である。


 パイプ椅子が何個あるかだとか、文化祭で使う予定の物はちゃんとあるかだとか、去年の文化祭で使ってしまっていたものの中から再利用できるものはないかなど様々なことをこなしていく。


 正直言ってもう疲れました。高いところにある物を下ろしたり、下にある物をしゃがんでとったりとこれだけでも十分すぎるほどの運動量なのに、そこから取り出したものを運んだり、空いたスペースに物を詰め込んだりと腕と足と腰が徐々に悲鳴をあげ始める。


「よし……後はこれを生徒会室に運んで終わりだな」


「やっと終わるのか……疲れたぁ……」


「あ、いやまだあるぞ?次は外で使う物の確認だな」


「おう……」


「まぁでもこっちはただ数数えたりするだけだから比較的楽よ。さすがに今テント張ったりとかはできないから」


「もしこれでテント立てるよって言われたらさすがに帰るのを検討してたわ」


 二人でテント立てるとかいう地獄が訪れないようでほっとしました。というかさすがに危ないからやらないか。もしやるぞって言われたら、正樹の足に絡みついてやめてくれと懇願するところだった。


「つか本当に男子少ないのな。めっちゃびっくりしたわ」


「だろ?俺と生徒会長と、もう一人いるんだけどその一人が今日休みでね。だからこうして拓人に手伝いをお願いしてるんだよ。よし、じゃあ一旦これ生徒会室に置きに行くか」


「あいよ」


 生徒会の人数は12人でそのうちの9人が女子とのこと。そりゃお手伝いを頼みたくもなるわ。というかなんでこんなに男女比バグってんの?うちの高校なら男子で生徒会やりたいって言う人そこそこいると思うんだけどなぁ……。この後正樹に聞いてみるか。

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