第62話 段ボールと文化祭は仲良し
テストや夏休みの宿題の回収やら何やらが落ち着くと、クラス……というよりも学校全体の意識が文化祭へと向き始める。クラスの出し物はもちろん、個人の出し物や部活動での出し物など、様々な場所で文化祭についての話し合いが行われる。
現にこうしてクラスの出し物を何にするかの話し合いが目の前で行われている。まぁ俺は特に何も意見を言わずに頬杖を突きながら話し合いの現場を見ているだけなのだが。
文化祭の出し物を決めるのは一見簡単そうに見えて実は簡単じゃない。その理由はかなりの制限がかかった状態で出し物を選ばなければいけないからだ。その制限の内容は大まかに3つ。
一つ目は学年の制限。学年が上がるにつれ、出し物の規模が大きくなる。そのため我々一学年はかなり小規模の出し物を考えなければならない。
二つ目はクラス間での制限。1学年のクラスは6つある。その中で出し物が被らないように工夫したり、クラス毎で話し合いをしなければならない。自分たちがこれをやろうと思っていても、先に別のクラスがそれを考えていたら非常に面倒くさいことになる。
最後の三つ目は生徒会による制限。自分たちがこれをやりたいと思っても生徒会に駄目ですと言われたらおしまいなのだ。生徒会に認められるような学生っぽいかつ面白みのある案を考えなければならない。
以上を踏まえたうえでの出し物決めなのだが……案外順調に進んでいる。やっぱり皆文化祭が楽しみなんだろうなぁ。いや俺も楽しみじゃないわけではないんだけど、どっちかって言うと運営するより友人たちと見て回る方を優先したい。出来れば楽なのになってくれればいいなぁ……。
「拓人もちゃんと案考えろー」
「もう十分出てるでしょ。後自分は生徒会だからって野次を飛ばすのは良くないと思うんですよ」
「生徒会の力を舐めるなよ?」
「職権乱用やめてくれ」
正樹と雑談を交えながら話し合いの行く末を見守る。まぁ割り当てられた仕事を人並みにこなせば何も文句を言われることは無いでしょう。
話し合いの結果、うちのクラスは射的をやることになった。これなら小さい子でも楽しめるだろうし、規模的にも丁度いい感じのバランスに収まった。仕事も簡単なものが多くなりそうだし、個人的には楽そうで非常に嬉しい。
「失礼しまーす」
形だけのあいさつをしながら俺は図書室へと入る。今日は2学期最初の当番の日、とは言ってもどうせ人は来ないだろうなぁ。文化祭の準備とかにもう取り組んでるところもあるみたいだし。
「あ、拓人」
「よっす凛花」
俺は凛花の隣へと座り、荷物の整理がてら仕事中に読むラノベを中から引っ張り出す。
「拓人のクラスはもう文化祭何やるか決まった?」
「射的やるんだって」
「へぇ、いいね。面白そう」
「凛花のとこは何やるんだ?」
「私たちのところは展示会って言ったらいいのかな?黒板に絵を描いたり、段ボールとかを使って何かを作るらしいよ」
「へー、なんかすごい文化祭っぽいな」
「何その感想」
「いやほら文化祭ってめっちゃ段ボール使うイメージあるじゃん?」
確かに頭の悪い感想だったかもしれない。でも段ボールっていったら文化祭ってなるじゃん?いや、やっぱなんないわ。
「まぁ確かに中学の時も段ボール使ってた記憶はあるけど」
あ、やっぱり文化祭って言ったら段ボールなんだよ。検索したときに上から4、5番目くらいには出てくる感じだよ。
「でもやっぱりだけど1年生の出し物だとかなり制限あるんだね」
「それは仕方ないよな。他のイベントもだけどやっぱ上の学年が主人公みたいなとこあるからな」
学校のイベントあるある、一番上の生徒が主人公。というか学校全体イベントの99%はそうだろう。まぁそれに関しては別に不満はないし、納得してるからいいんだけどね。高校最後の文化祭、それでいてこれが終わったら後はもう受験勉強一筋になるからね。それを下級生たちが邪魔をするのはご法度だろう。
「まぁ、今回は文化祭は見て回るだけでも十分楽しいからいいんだけどな」
「そうね、逆に3年生になったら出し物が忙しくて見れないかもしれないし、今のうちにたくさん見ておかなくちゃね」
「だな」
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