第61話 2学期の始まり
長いようで短かった夏休みも終了し、学校生活が再開する。始業式と夏休み期間中、部活動などで記録を残した生徒たちの表彰式をして、じゃあ今日は解散!明日から学校生活頑張ろう!
とはならないのがうちの学校。文武両道を掲げるこの六花高校はそんなに甘くはない。
「それでは、始め!」
先生の合図と同時に一斉に紙をめくる音が教室中に響き渡る。はい、と言うことでなんとテストです。休み明け早々テストです。これなんて地獄?
普通さぁ、夏休み明けって始業式とかして、宿題を回収して、じゃあ解散ねってなるもんじゃない?なんで何事もなかったかのようにテスト始めちゃってるの?先生も先生で「はい、じゃあテストやるぞー」って軽いノリで言わないでもらっていい?こっちは夏休みの宿題のせいで睡眠不足と右手の痛みを抱えてるんですよ?さすがに鬼畜過ぎません?
鈍い痛みが走る右手を無理やり動かして空白を埋めていく。睡眠時間が足りていないせいで問題を解くスピードが著しく遅いが、それでも問題を解き進めていかないといけない。おのれ六花高校、許さんからな。
「やめ!」
先生の合図で全員がピタリと手を止める。今日最後のテストを乗り切ったことで、教室の雰囲気は徐々に弛緩していく。ちなみに分からなかったので最後は普通に寝てました。いやぁ……この寝不足状態でテストはさすがに無理がある。
「はい、じゃあこのままHR始めちゃうか。何か連絡事項ある人いるか?」
テストの回収と数の確認が終わった後はそのままの流れでHRが始まる。各教科の係から宿題の提出を一通り求められた後、室長から緩めの連絡がされる。
「明日か明後日、まぁ近いうちに文化祭の出し物決めるから各自何やりたいかとか決めといてくれると助かります」
「はい、質問です!こういうの考えてきてとかの基準はありますか?」
「えっとね、1学年は基本的に教室で出来るものかつ飲食関連じゃないものっていう決まりがあるから、例えばちっちゃい子が楽しめるようなクイズ大会とか、後は何かを展示するとかそういう感じのものを考えてきてくれると助かります」
「はーい!」
「他に質問はない……かな?はい、以上です」
その後も先生から軽い連絡事項がされた後、ようやく長い一日が終わりを告げる。休み明け一発がこんなにハードなのまじで生活リズムバグってる人からすれば地獄でしかない。
「お疲れ拓人、どうだった?」
「ん?そりゃもう赤点じゃないことを祈るだけよ」
「まぁ今回のは補習とかないはずだからまぁそんなに赤点気にする必要はないと思うけど」
「まじ?それを先に知りたかったわ」
ようやく解放された俺は正樹と雑談に花を咲かす。どうやら今日やったテストには補習と言うものが存在していなかったらしい。だったら普通にもっと寝てたんですけど……。
「あぁでも数学は毎度のごとくテスト直しがあるっぽい」
「え、夏休みの宿題であんなに手を動かしたのにまた動かさないといけないの?」
「頑張れ拓人」
「無理だわぁ……」
もういい加減僕の右手を酷使させるのはやめて下さい!というかテスト直しあるのマジでめんどくさい。ほとんどの問題解きなおしコースじゃないですか……きついなぁまじで。
「拓人、正樹久しぶりー」
「よっす、久しぶりー」
「陽、涼太久しぶり。元気だった?」
「うん、元気だったよ。ところで拓人は机に突っ伏してどうしたの?」
「学校生活への憂鬱を体で表現してる」
「わかるわぁマジでだるいよな」
正樹と話していると、陽と涼太がこちらにやってくる。涼太、お前は俺の気持ちを分かってくれるか……さすがだな。
「俺昨日からずっと宿題やっててそれで学校来たらテストだったからな。マジで地獄だわ」
「分かる。めっちゃ手痛いよな」
「ちゃんと少しずつやらないからそうなるんでしょ」
陽君、君の言ってることは正しいけど、我々はそんなコツコツ宿題なんて出来ないんですよ。もう小学校からずっとそういう体質なんですよ。
「つか文化祭の出し物どうするよ」
「だってよ正樹」
「俺に投げてこないでくれ拓人。俺生徒会でほとんどクラスの出し物には関与できないんだから」
「そう言えばそうだった」
ついうっかり忘れてたけど正樹は生徒会に入ってるんだった。夏休みのせいで記憶の中から抜けてしまっていた。これが休みボケってやつか。
「陽は何かアイデア思いついてたりする?」
「うーん……思いついてないなぁ。ちっちゃい子でも楽しめるってなると大分範囲が狭まってきちゃうし」
「あ、今思いついたけどお化け屋敷とかは?」
「それ上の学年がやるからダメだぞ」
「生徒会さん、そこんとこ何とかなりません?」
「無理」
涼太の案はばっさり切り捨てられました。まぁ1学年の文化祭の出し物って大分範囲限られるもんよね……。
「俺はそろそろ生徒会に行かないとだから先行くわ。まぁ学級委員長も明日明後日までって言ってたからそれまで頭を悩ませとくんだな。」
「おう、頑張って」
「じゃあね正樹、頑張って」
「頑張れまっさん」
生徒会の仕事へと向かった正樹を見送った俺たちはその後、軽く雑談をした後は特に何もなく解散となった。まぁ寝不足の人が二人いますからね。正直早く家帰って寝たい。
まぁ文化祭の出し物については誰かが考えてきてくれるでしょの精神で行きますかね。絶対誰かが案出すだろうし、俺は大人しくそれを見守ることにします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます