第52話 白雪姫とお出かけ 2
「お待たせ拓人、もしかして待った?」
「いや、ついさっき来たとこ」
今日は凛花と遊ぶ日当日。俺は待ち合わせ場所に予定よりも10分近く早い時間で着いてしまったため、日の当たらない場所でスマホをいじりながら凛花のことを待っていた。
待たせてしまったのではと少し申し訳なさそうにしている凛花も実は集合時間より少し早い到着だったりする。別に遅れてないのにそんな悪いことしたかな見たいな顔しなくてもいいんですよ?
遊ぶ日が決まってから凛花にどこか行きたい場所はあるかと質問したところ、前回若菜と買い物しているときにばったり遭遇した場所であるショッピングモールで色々見て回りたいと返ってきた。正直なところもっと他の場所に行くことを想定していたため、拍子抜けした部分はある。
「……」
き、気まずいなぁ。まぁなんとなく予想は出来てたけども。
なるべく意識しないようにしているが、やはりどうしてもあの1件のことがちらついてしまう。それは凛花の方も同じなのか合流して早々、無言の状況が出来上がってしまう。
「と、というか今日本当にここで良かったのか?」
訪れた沈黙を壊すためと気になったことがあったため俺は凛花へ1つ質問を投げかける。まぁ凛花が行きたいと言っているのだから問題はないんだろうけど一応ね?
「うん、拓人と色々見て回りたいし、お洋服もちょっと見たいなって思ったから。もしかして嫌だった?」
「いや全然。ただちょっと気になっただけ」
この質問をするのはちょっと野暮だったかもしれないと心の中で少しだけ反省する。凛花が行きたいって言ってるんだからそれで良いのです。俺、凛花に着いてく。
「……」
まぁ合流できたし、そろそろ行きましょうかね。日陰とは言え暑いことには変わりないし。それにこの気まずい空気をいち早くなんとかしたい!……ん?何ですかねぇその視線は。
じゃあ行こうかと声をかけようとしたとき、凛花から何かを要求されているような視線を感じる。えぇ、いきなり何?俺は一体どうしたらいいの?
何を求められているのかいまいちぴんと来ないがこのまま行こうかと切り出すのは良くないと俺の直感は告げている。さてどうしたものか……。
女の子と遊ぶという経験がほとんどない俺にとってこういう場面は非常にきついものがある。この「言わなくても分かるよね?」的な感じのやつ、本当に難しいからやめてくれ。
これで相手の求めていることが出来たら無事に次の段階へと進むことが出来るが、もし仮に相手の求めていないことを話してしまえば、「何で分かんないの?」とか「分からないならいいや」などと理不尽に怒られたり機嫌が悪くなったりする可能性がある。
こっちだって頑張ってるんですよ!そんな急に視線を向けられてもエスパーじゃないんだから分かるわけないでしょ!!それにこちとら女子と遊ぶとかいう経験値がほぼゼロの男だぞ!?若菜以外とこうして女の子と出掛けたことがない奴なんだぞ!?
女性経験値0の悲しい陰キャです。若菜は幼馴染だからなんというかこう別枠に入って来るんだよな。女の子だけどなんというか女の子じゃない感じがするんだよ。
うーん……なんか洋服を褒めた方が良い的なあれなのか?別に俺みたいなやつに言われてもって感じはするんだけど、まぁ褒められて嫌われるみたいなことはさすがにないだろうからとりあえず言ってみるか?うん、そうしよう。なんか求められているのがそれな気がしてきたし。
「その服似合ってるな。いつもの印象とは少し違う感じ良いと思う」
今日の凛花デニムのショートパンツに白のブラウスと言った可愛さとボーイッシュさを両立させたような服装をしている。普段は清楚なイメージのある凛花だが、今日の凛花はとても明るい元気な女の子感が強い。可愛いからなんでも似合うのはあるが、すごく着こなしているなと素人の俺でも分かる。
「それにそのなんだっけ……キャスケット帽だっけ?それもすごい似合ってるな」
「ありがと拓人。それとよくこれに気が付きました!」
嬉しそうに笑顔を溢した後、急に自慢げに話し始める凛花。どうやら求められているのはこれだったらしい。良かった良かった。
「私と拓人って他の人からしたらただの顔見知り程度の関係でしょ?」
「まぁそうね」
「そしてそんな私達が遊んでいるところを見られたら面倒なことが起きるでしょ?」
「そうね」
「そこでこの帽子です!」
う、うわぁ……凛花さん天才だぁ!…とはならないんですよこれが。うん、まぁ最初の2つは分かるし俺も気にしていた所なんだけどさ、帽子を被るだけってちょっと安直すぎません?帽子だけでそんな効果あるかなぁ……。
急にテレビショッピングみたいな口調で話し始めた凛花に、心の中で冷静なツッコミを入れる。まぁとりあえず話の続きを聞きますか。
「一体どういう事?」
「この帽子、なんと私の頭のサイズより少しでかいのです!だからこうして深く被れば……ほら、私だって分からないでしょ!?」
「あー、うんそうね」
自慢げに話す凛花に俺は少し雑に返事をしてしまう。まぁ確かに分からないかもしれないけどさ、それ前見えなくなって普通に危ないからやめてね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます