第51話 白雪姫とお出かけ 1

 夏祭りという大きなイベント、多少の問題は発生したものの楽しい時間を過ごすことが出来た。夏休みというのは気が付いたら1日、そしてまた1日とどんどん過ぎ去っていくもので、もう夏休みもあと半分になってしまった。


 友人と遊ぶ日もあったが、基本は家に籠ってゲームをしたり、アニメを見たりと非常に怠惰な生活を送っていた。ある人からすればそんなので楽しいのかと頭を捻るような過ごし方だが、俺からすればこの怠惰な生活こそが至高であり、最高に楽しい日々なのだ。


 確かに外に出て遊ぶのも楽しいが、最終的には楽しいよりも暑いとか疲れたの方が勝っちゃうんだよな……。自分ゴリゴリにインドア派なんで今日も今日とて引き篭もらせてもらいますね。


 さて今日もゲームに励もうかと思ったのだが、一つだけ俺の頭の中でどうしようかとぐるぐる回っている悩み事がある。それは、凛花と夏休み前にした遊びの約束である。


 何かを言いたげだった凛花のことを察した俺氏、なんと女の子と1対1で遊ぶ約束をしてしまう。いやまぁやましい気持ちは全くないんだけどね?ただ凛花の意思を自分なりに読み解いたらこうなっただけだからね?


 別に凛花と遊ぶこと自体は問題ではないのだが、元々あった懸念点にプラスして現在は凛花と遊ぶことに関して2つの悩みがある。


 まず1つ目は凛花と俺が一緒に出掛けているところを見られる可能性が非常に高いということだ。これは前々から懸念していた問題である。

 

 女の子同士、例えば凛花と若菜が遊んでいる最中に学校の人と遭遇しても、「あっ白雪さんが若菜さんと遊んでる!とうと~い」とかで済むのだが、若菜が俺とすり替わるだけで「え!?白雪さんが男と遊んでる!?しかもフツメン!?」となり、トレンド入り、そして炎上すること間違いない。怖いね。


 だがまぁこれに関して言えば、上手いこと凛花に誤魔化してもらうことでなんとかなるのではと楽観視している部分はある。親戚の人ですとか言えば、大抵は何とかなるだろう。


 問題はもう一つの方。この前の間接キスになっちゃったね問題である。


 別に誘おうと思えば誘えるんだけどね?でも絶対気まずい空気流れるじゃん!!


 1日中あの気まずい空気の中で過ごすのはあまりにも苦しい。普通に息苦しすぎて酸欠になりそう。そして途中で脱走する可能性が十分あり得る。


 あの時のことがなければ今頃普通に誘えていただろうに、あの一件のせいで誘うのがとても億劫になってしまった。


「でも誘わなかった場合は2学期が始まった後にめんどくさいことが起こりそうなんだよなぁ……」


 「誘うって言ってたのに誘わなかったじゃん!」と口に出すことはないだろうが、態度に現れることは間違いないだろう。しかもすぐに機嫌が直るとは限らないのがまた厄介なところである。


「どうすっかなぁ……」


 凛花とのトーク画面を開きながら、頭を悩ませる。文章を入力しては消して、入力しては消してを数回繰り返すも、どういう風に会話を切り出せば良いか思いつかない。まさかリアルに続いてネットでも会話が下手になるとは夢にも思わなかったわ。俺なんか人間として退化してってない?


 唸りながらスマホと睨めっこすること数分。俺はようやく無難な文章を思いつき、親指で文字をフリック入力していく。


『夏休み前にしてた約束だけどあれどうする?』


 抽象的にするかつ、どうするかを相手に丸投げするという誘っておいてそれはどうなのと思われても仕方がない文章を送信する。


 あ、既読ついた。


 送って数秒後に既読のマークがつく。この文章を見て今頃凛花は「誘っておいてなんだこいつ」と思っているだろう。ごめんなさい、気まずさには勝てなかったんです。


『いつでも大丈夫だよ!』


 いつでも大丈夫みたいです。あ、じゃあ来年の夏休みで。はい、冗談です。


 凛花は俺の送った文章をいつ頃空いているか聞いていると解釈したらしい。遊ぶことはもう確定してるんですね。いや約束してたからこの解釈になるのは当然っちゃ当然か。


 あんまり無理して俺と遊ばなくてもいいんだよとメッセージを送りたいが誘ったやつが(ryとなるので俺は凛花に『じゃあ3日後とかはどう?』という提案をする。すると『分かった!』という文章とかわいいスタンプが送られてくる。


 うん、まぁ当初の予定通りって言えばその通りなんだけどね。俺、耐えきれるかなぁ……。


 3日後の自分を想像して、胃が痛くなってくる。頑張れ未来の俺、お前なら気まずい空気にも耐えれるはずだ!……知らんけど!!

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