第48話 一件落着…?
「ねぇ拓人お兄ちゃん!この前ね?私一人でお買い物したの!」
「おお、それはすごいね」
「それでね?頑張ったご褒美にお姉ちゃんからお菓子貰ったの!」
「そっかぁ、良かったね梨乃ちゃん」
実はその話知ってます。というか現場を目撃してました。
林檎飴を買ってあげてから、すごく梨乃ちゃんに懐かれました。言い方はあれだけど餌付けと言うやつである。やはり食べ物の力は偉大なのだ。
最初の方は少し緊張している感じだったが、林檎飴を食べ始めたあたりから緊張が抜けたのか今ではすっかり笑顔で満ちている。後は凛花とはぐれてしまった不安もあったかもしれない。よく泣かずに頑張りました。梨乃ちゃん偉いです。
「それでね?その日は私が買ってきたものでお母さんがハンバーグを作ってくれたの!」
「梨乃ちゃんが頑張ってお買い物したおかげだね」
「うん!」
おおう……何と眩しい笑顔なんだ……。
百点満点中一万点の笑顔をたたき出した梨乃ちゃんに、俺は自然と顔を緩ませる。俺は決してロリコンではないが今はロリコンの気持ちが分からなくない。でも決してロリコンじゃないですよ?
「そういえば梨乃ちゃん浴衣可愛いね。すごく似合ってるよ」
「えへへ~、これね!お姉ちゃんが着させてくれたの!本当はお姉ちゃんも一緒が良かったんだけどね?お姉ちゃん私はいいって言って着てくれなかったの」
「そっかそれは残念だね」
「絶対お姉ちゃん似合うのに」
そう言いながら頬を膨らませる梨乃ちゃん。その気持ちは分からんでもない。凛花は絶対に浴衣似合うだろうな。
「拓人、白雪さんたち多分この近くにいるはず」
「ん?了解」
そろそろ合流できそうだと正樹が教えてくれる。正樹は素早く文字を入力し終えるとスマホをポケットにしまう。ん?何で正樹が合流できそうだって言ったんだ……?あっ、一緒に来てる友達って……
「梨乃!!!」
「あ、お姉ちゃん!」
名前を呼ぶ声にに気づいた梨乃ちゃんは、俺の手を離して凛花へと駆け寄る。よほど心配だったのか凛花は人目も気にせず梨乃ちゃんのことを思いきり抱き締める。
「良かったぁ……大丈夫だった?変な人に声をかけられたりとかしなかった?」
凛花の言葉に俺の心臓が何者かに掴まれたような錯覚を覚える。それもしかして俺のことですかね?
「大丈夫!拓人、お兄ちゃんと正樹お兄ちゃんが助けてくれたの!!」
「……佐藤君、木村君本当にありがとうございました」
「いいよ、気にしないで。たまたまそこに居合わせただけだから」
「そうだよ白雪さん。それにほとんど拓人が梨乃ちゃんの相手をしてくれたから、俺にお礼を言う必要はないよ」
「佐藤君、ありがとうございました。ほら、梨乃もお礼して?」
「拓人お兄ちゃんありがと!!」
「はい、どういたしまして」
凛花に促されてぺこりと頭を下げる梨乃ちゃんに俺は柔らかい笑みを浮かべる。
「いや~、梨乃ちゃんが無事で何よりだよ~」
「……やっぱり若菜だったか」
「何その顔~」
凛花のお友達、そして正樹が連絡を取り合っている女の子、ここまでくればなんとなく予想はつく。いつの間にか正樹の隣へと移動していた若菜に俺は納得の声を上げる。
「いや、別に何でもない」
「いやぁ、それにしても梨乃ちゃんが無事でよかった~。拓人お兄ちゃんに変なことされなかった?大丈夫?」
「うん!すごく優しかった!!」
「お前は俺を何だと思ってんの?」
俺がこんな小さな子に変なことをする奴だと思われていたとは。さすがに心外である。
「あのね!お兄ちゃんが林檎飴買ってくれたの!!」
「おー!良かったね梨乃ちゃん!!」
「その……すみません佐藤君。後でお金返します」
「いいよ別に、気にしないで」
「いえ、お金は後で必ず返します」
「そ、じゃあ後でよろしく」
折れないぞという意思を感じ取った俺は素直に頷く。まぁお金関連の問題は早めに解決しておいた方が良いって言いますしね。
「じゃあそろそろ行くか」
「そうだな、二人が頼んだものまだ買ってないし」
「え、お兄ちゃんもう行っちゃうの?」
正樹の提案に頷くも、梨乃ちゃんは悲しそうな表情でこちらを見上げてくる。やめて!そんな目で見ないで!すごく心苦しくなるでしょ!!
「こら梨乃、あんまりわがまま言わないの」
「……ごめんね梨乃ちゃん。実は俺たちも他の友達と祭りに来てるんだ」
出来ればもう少し一緒にいてあげたいところだが、陽と涼太のことを大分待たせてしまっているため、急いで頼まれたものを買いに行かないといけない。ごめん梨乃ちゃん、後はお姉ちゃんと一緒にお祭りを楽しんでくれ。だからそんな悲しい顔しないで!!
「あ、そうだ拓人!」
「ん?どうした若菜?」
何かを閃いたのか若菜は少し大きな声を出す。
「私と正樹でお友達が頼んだもの買ってくるから、その間拓人は梨乃ちゃんと一緒にいなよ!」
「え」
「おー、それいいじゃん。さすが若菜」
「でしょ~」
「いやいや、さすがに申し訳ないし。それに──」
「じゃ、行ってくるね~!」
「ちょ」
「あの二人にはちょっと遅れるって伝えとくから」
「あの」
俺の知らないところでどんどん話が進んでいく。いやあの?若菜さんあなた凛花と一緒に来てるんですよね?なんで一緒に来たお友達放置して彼氏とイチャイチャし始めてんの?さすがに許されないと思うんですけど。
「お兄ちゃんまだいる!?」
「……うん、もうちょっとだけね」
「やったー!!」
嬉しさを滲ませながら首を傾げる梨乃ちゃんに俺は頷く事しか出来なかった。
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