第47話 白雪姫と合流しよう
「こんにちは。俺のこと覚えてる?」
梨乃ちゃんを怖がらせないように視線を合わせ、笑顔を浮かべながら話しかける。急に話しかけられたからか、びくりと肩を揺らし、こちらに顔を向ける梨乃ちゃん。
こうして間近で見ると本当に凛花に似ているなぁ……。
こちらをジーっと見つめる赤い瞳に、凛花と同じくらいの長さに切り揃えられた黒い髪。凛花の小さな頃の姿ですと言われると納得してしまうくらいには彼女の面影があった。
「!…この前のお兄ちゃん!」
お、どうやら覚えていてくれたみたいだな。
「久しぶりだね。今日は一人でお祭りに来てるの?」
「ううん。お姉ちゃんとお姉ちゃんのお友達と来てるの」
「その二人が今どこにいるか分かる?」
「……分かんない」
俯きながら、首を横に振る梨乃ちゃん。やはりはぐれてしまったらしい。まぁこんなに人が多かったらはぐれてしまうのも無理はない。
俺はスマホのメッセージアプリを開き、凛花へとメッセージを送ろうとするが、回線が混みあっているせいか中々送信されない。これはちょっと無理そうだな。
「実は俺君のお姉ちゃん……凛花お姉ちゃんのお友達なんだ」
「……そうなの?」
「うん。そこでなんだけど、もし良かったら一緒にお姉ちゃんのこと探しに行かない?」
「……うん!行く!」
少し不安げな表情を浮かべ、悩むしぐさをした梨乃ちゃんだったが、最終的には俺の提案に頷いてくれた。かなりしっかりしてる子だから、多分ついていっていいか悩んだのだろう。ありがとう、俺のことを不審者だと思わないでくれて。
「よし。つーことで正樹、白雪さん探しも追加で」
「こういう時動かない方が良かったりするんだけどまぁこればかりはしょうがないな」
「じゃあ行こっか。あ、はぐれないように念のため手繋いどこっか」
「うん!あ、お兄ちゃん!」
「ん?どうした?」
「私梨乃って言うの!お兄ちゃんの名前は?」
「俺は拓人。でこっちのイケメンが正樹だ」
「拓人お兄ちゃんと正樹お兄ちゃん!」
「よし、じゃあお姉ちゃん探すか、梨乃ちゃん」
俺は梨乃ちゃんの手を優しく握り、歩きだす。まぁしばらくしたらメッセージが送信されるだろうし、凛花といい感じに合流出来たらいいな。まぁ探している途中に会えたらそれはそれで楽なんだけどね。
そうしてしばらくの間、梨乃ちゃんを連れて歩いていると、自分のポケットから振動が伝わってくる。スマホを取り出してみると、凛花からのメッセージが届いていた。
「白雪さんから連絡来た。こっちと真逆にいるらしい」
「了解。じゃあそっちに向かいますか」
「だな。梨乃ちゃん、もう少しでお姉ちゃんたちと合流するから……梨乃ちゃん?」
梨乃ちゃんの方を見るとこちらではなく、ある屋台の方に視線が釘付けになっていることに気が付く。
「りんご飴食べたいの?」
俺の声に反応して、首を縦に振る梨乃ちゃん。ただ、自分で買うお金を持っていないのか、買いに行ってもいいかとこちらには聞かずにただりんご飴の屋台をジーっと眺めていた。
「正樹、ちょっと梨乃ちゃんのこと頼むわ」
「分かった。ここで待ってるわ」
俺の意図をくみ取ったのか、梨乃ちゃんと話をし始める。その間に俺はりんご飴の屋台に並ぶ。そして陳列されている林檎飴の中から出来るだけ大きめのものを買って正樹たちがいる場所へと戻る。
「はい、梨乃ちゃん」
「え……いいの?」
「もちろん。それとお姉ちゃんのいる場所が分かったから今からお姉ちゃんに会いに行こうね」
「うん!ありがとう拓人お兄ちゃん!」
林檎飴を受け取り、満面の笑みを浮かべる梨乃ちゃん。うむ、この笑顔プライスレス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます