第42話 夏休みの日常
エアコンから聞こえる機械音が鳴り響く部屋で俺は今、ベッドに寝転がりながらスマホをいじいじしていた。
夏休みに入り、俺は惰眠を謳歌しまくっていた。朝起きてのんびりとして、好きなゲームをしたり、漫画やアニメを見たり、ネットサーフィンなどをして、ご飯を食べて、またゲームして……。そんな日々を繰り返していくうちにいつの間にか1週間が経過していた。時の流れとは恐ろしいものである。
夏休みに入る前、涼太に普段の休日と変わらないと言われたが本当に変わらない。基本涼しい部屋でごろごろして、自分の趣味に全力を注ぐ。
確かにほんの少しだけ味気無さはある。だが、面白いからなんでもいいのだ。俺は趣味に生きる男、陽キャのように毎日外をほっつき歩くより俺はこの涼しい部屋で一人グダグダしている方が性に合っているのだ。
ちなみにこの前凛花と遊ぶ約束はしたものの、どこへ行くかや何をするかなどは一切決まっていない。誘ったんだからそれくらい自分で決めろよと思うかもしれない、俺もそう思う。
しかし、今回の場合は自主的に誘ったというよりも誘うように仕組まれたと言っても過言では無い。であるならば、凛花が行きたいところに行く方が楽しい時間を過ごせると思ったため、俺は特に何も予定を考えていない。
決して言い訳ではない。俺は相手の都合を最優先しているだけで、計画を立てるのが面倒だから凛花に任せたというわけでは断じてない!
そういうわけで今のところほとんど予定がない男子高校生です。だが、先ほども言ったように俺は趣味に生きる男。パンがないならケーキを焼けばいいじゃない、そして予定がないなら予定を作れば良いじゃない。
俺のこれからの予定!惰眠を謳歌する、以上。異論は認めません。
それから宣言通り、スマホを触りながらゴロゴロしていると、画面の上から通知が届く。その通知を反射的にタップするとメッセージアプリへと画面が移動する。画面には母親からのメッセージが写っていた。
『ごめん、冷蔵庫の中見てどんな感じか教えてくれない?』
『了解』
俺は素早く文字を入力した後、体を勢いよく起き上がらせ、部屋を出る。
「どれどれ……うっわぁ、なんもねぇ」
冷蔵庫を開き、俺は言葉を漏らす。お肉も卵も野菜も、食材と呼べるものはほとんどなく、飲み物と調味料が並んではいるもののかなりがらりとした状態だった。
『なんもなかった』
『分かった、ありがとう』
見たまんまの状況を伝えると、淡々と感謝の言葉が返ってくる。
『今日俺が作ろうか?』
俺は下ろしかけた腕を上げ、その場で指をスライドさせ文字を打つ。このままベッドの上でゴロゴロするのも悪くはないのだが、ほんの少しだけ暇だなと感じていた。
『別にいいよ?』
『いや、基本だらだらしてるだけだから作るよ。それに仕事で疲れてるだろうし』
『うーん……じゃあお願いしようかな』
『あいあい、リクエストとかはある?』
『特にないけど、お肉がいいかな』
『了解』
『ありがとう拓人』
親からの感謝の言葉に俺はスタンプを送り、そのままスマホの電源を落とす。親の仕事の関係で、俺は一人でご飯を食べることが多い。
最初の頃は親が作り置きしたものや、コンビニなどで買ったものを食べていたのだが、ある時からこれ自分で作った方がお金浮いてお小遣い増えるし、親が疲れてるときに料理出来るようになれば最高じゃね?ついでに料理出来るとかなんかよくない?という考えを思いつく。
そういうわけで俺はそんなに凝ったものは作れないが、簡単なものなら大抵は作れるほどの料理スキルが身に着いたのだ。でも揚げ物は出来ません、怖いから。
俺は何を買おうかと頭を悩ませながら外へ出る準備をする。ちなみに外に出るのは3日ぶりくらいだったりする。不健康だなぁとは思うものの、暑い中出掛けたくないという思いが勝り、結局は家でゴロゴロしていたのだ。僕将来、エアコン君と結婚するんだ。
スニーカーのつま先で床をとんとんと蹴り、靴を履く。忘れものが無いかを確認し、扉を開くとそこには──
「いやあっつ!!!」
灼熱の地獄が広がっていた。
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