第33話 勘違い?
もうすぐ1学期最後のテストである、期末試験がやってくる。この試験を乗り越えれば、生徒のほぼ100%が待ち望んでいる夏休みを迎えることが出来る。
この夏休みという大きな飴があるおかげか、生徒たちは普段よりもテスト勉強を頑張っている気がする。その証拠に、普段はスカスカなはずの図書室が、結構な数の生徒で埋め尽くされている。
かく言う俺も、普段ならば受付の席に座り本を読んでいるところだが、今はこうしてノートと教科書を開き勉強に勤しんでいる。
ちらちらっ
そうして教科書と睨めっこしていると隣から定期的に、それもかなりの頻度で視線を感じる。
ああ……これは多分なんか話したいことがあるんだろうなぁ……。
隣で同じようにノートを開いている凛花を視界の端に映し、彼女がこちらをちらちらと見てくる意図に予想をつける。見た感じ何か不満があるわけでもないので、俺が何かをしたというわけではなさそうだ。単純に話したいことがあるけど周りに人がいるから話せないという感じだろう。
ま、片付けの時間にでも聞いてみるか。
いつもなら18時に閉まる図書室だが、テストの一週間前は18時30分まで利用することが出来る。勉強したい生徒にとっては非常にありがたいことだが、図書委員会の人間からすると少々面倒だ。この期間は普段よりも人の出入りが多くなる。それ故にいつもなら短い時間で終わる後片付けが、数倍にも膨れ上がるのだ。
まぁ普段あんまり仕事してないんだから、こういう時くらいはちゃんとやれと言われれば確かにと言わざるを得ないのだが。
ちらっちらっとこちらを見てくる少女にどうやって話を切り出そうかと軽く考えながら、今は自分の勉強に集中することにした。
ちらっちらっちらっ……ちらっちらっ
いやこっち見る回数多くない?
勉強しに来ていた生徒の姿が無くなり、人がいないいつもの図書室へと戻る。ふと窓の方を見るともうすぐ夜を迎える時間だというのに、外はまだオレンジ色を離さないでいた。
軽く体を伸ばしてから勉強道具をしまい、図書室の片づけ作業を始める。本を整理することはないが、設置されているテーブルをいつもより丁寧に拭いたり、床に落ちている消しカスなんかを集めたりと、やはりいつもの業務よりも面倒くさい。
だが、そんな面倒な仕事をてきぱきとこなしていく。実は案外掃除は嫌いじゃないし、それにこの後に少しやらなければいけないことがあり、そのために時間を残しておきたいのだ。
「なぁ凛花」
「ん?どうしたの拓人?」
「さっきこっち見てた気がしたんだけど、何か用事でもあったのか?」
ある程度片づけを終えた俺は、凛花へと声をかける。これがやらなければいけないこと、「凛花の話を聞く」である。こちら側から聞かないと凛花は話さないでそのままずるずると引きずることが多い。そして場合によってはそれで不機嫌になったりと、面倒な部分があるため、何か凛花の様子がおかしいと気付いたらその日のうちに解決しておく方が良いのである。
それに、テストの前は学校に遅くまで残っている人が多い。そのため帰りながら話すと周りの人に俺と凛花の関係がばれてしまう可能性があるため、図書室以外ではいつものように話すことが出来ない。だからこそこうして図書室にいる間に凛花へと話しかけたというわけだ。
「えっと……その……」
お、やっぱりなんか話したいことあったんだな。ほら見ろ、俺の勘はよく当たるんだよ。
「な、何でもない!!」
……あっれぇ?
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