第13話 決闘のそのあと
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《イチミヤ》
『ステータス』
レベル6
職業:勇者
HP:34/34
攻撃力:13
防御力:14
魔力:4
精神力:3
俊敏:11
幸運:8
『スキル一覧』
【スキル作成】
【
【姫騎士特効】
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「レベルが二つも上がってる。姫騎士に試合とは言え勝ったからか、これなら毎日戦いたいところだが……」
ステータス表示を消し、びぐんびぐんと痙攣するコスモス姫をわずかに視界に入れる。
もう触っていないのにあの調子だ。話しかけても反応が無いし、意識がないのに激痛が走っているらしい。
とろんととろけた表情、恍惚とした瞳、水球でぐっしょりと濡れた彼女は見るも無残な姿で修練場の中央で倒れていた。痛みで神経がいかれたのだろうか。
「この様子じゃ明日に目を覚ましているかどうかも分からんな。おーい誰か運んでやってくれー!なんか保健室的なところあんだろー!」
しんと静まりかえった空間、周囲の観衆、上階や渡り廊下から見る彼らに呼び掛ける。
「こ……こんな決闘があってたまるかー!!」
たまらず誰かがそんなことを叫んだ。
じわじわと溜まった不満、その一言によって栓が開かれて、観衆は口々に暴言を俺にくべる。
「あんな勝ち方で恥ずかしくないのか!」
「相手は姫だぞ!女の子相手にそんな勝負あるか!!」
「無効だ無効!!試合のやり直しを要求する!!」
小さな怒りの種火は次々とくべられる暴言と言う名の
もう相手が誰だろうと気にするか、言いたいこと全部言ってやる。
「うるせえええええ!!国教にケチつけて、レベル4(挑まれた当時)に勝てる勝負する方が恥ずかしいに決まってるだろうが!!由緒正しき儀式めちゃくちゃにしておいてよくそんな態度取れるなあおい!!このクソアマが一番恥ずかしいでえええええす!!そんでお前らが二番目に全員恥ずかしいんじゃボケェ!!」
「なんだとごらあ!?」
「やってやろうじゃねえか!全員水球の餌食にしたらああああああ!!」
怒りに任せて両手を宙を掻くようにスキルを発動させる。
『条件達成。【
いまなんか言われた気が……まいいや【
手が触れた空気の範囲、普段とサイズの変わらない水の塊――それを複数個出現させる。
両手だから数は二倍以上。それが俺の周囲を取り巻くようにふよふよと宙に浮かんでいた。
なんかいつもより数多いな、と軽くだけ考えて、すぐに怒りを取り戻す。
冒険者や騎士、戦える役職の者は身を乗り出し我先にと俺の討伐を目指すようだ。
まずはこいつらから片づけないと。
慌て逃げ惑う貴族を無視して、水球の射出方向を定め――
「待ちなさいっ!!」
よく通る圧のある声。
逃げ惑う貴族、意気揚々と乗り出す冒険者、率先して防御を固める騎士、そして十近い水の塊を浮遊させる僕もぴたりと動きを止めた。
一歩も動かず首だけを声がした方向へ、錆びついたボルトを締めるようにゆっくりと動かす。
「じょ、女王陛下……」
誰かが声を震わせてその人の肩書を呼ぶ。
豪奢なドレスを身に纏い、頭には純白の王冠。
老いを見せない射殺すような眼光を携えて、綺麗な歩みでこちらに近づく。
この国の女王こと、コスモス姫の母。
この場にいた誰もが動こうとは思わず、乱痴気騒ぎを続ける気はなくなっていた。
かつかつとヒールを鳴らして――その音は土を踏むことで失われる、彼女は既に修練場へと足を踏み入れている。
俺の横に並び、周囲を確認。
気を失った姫騎士を見て、陛下の顔色には少し落胆が浮かんでいた。
俺にだけ聞こえる声で女王へ呟く。
「よくやりました。やはりあなたこそ勇者にふさわしい」
そして声を張り上げて、この場にいる全ての者に告げる。
「コスモス姫は戦闘続行不可能により、決闘の勝者は勇者イチミヤ様!神聖な儀式を台無しにし、女神パドラの運命に逆らい勇者様を侮辱したあなた方にはそれ相応の罰を下します!覚悟しておきなさい!」
誰一人言い訳はしない。
期待外れだという目を意識を失ったコスモス姫に向ける者は半分、俺を恨みがましく睨む者がもう半分。
なんだこいつらやっぱ水球ぶつけてやろうか。
僅かに動かした宙に浮かぶ水の塊、いち早く気付いた女王は俺を軽く睨んだ。
『もうことは済んだから事態をややこしくするな』と言うような眼に両手を挙げて降参をしめす。ついでに全ての水球を地面に落とし、大きな水たまりを作るだけで終わらせた。
「凄いですね陛下は」
「この程度、一国のを収めるものとして当然の働きです……それと、」
褒めても何も出てこなかった陛下は続ける。
「勇者様はここに残ってください。あなたには謝らなければならないことがあります」
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