転生

学校の教室

放課後

中学生が屯している。

①、スマホをいじっている。


「あ〜!」

「何だよ。」

「漫画も小説も、何処もかしこも輪廻転生、異世界転生。つまんねー。」

「あー。」

「どんだけ現実に絶望してんだよぉ。」

「確かに。」

「生き直しとか異世界に想いを馳せてないで現実見ろし。」

「世知辛いなぁ。」


イライラの余り、のたうち回っている①。


「なぁなぁ。」

「あん?」

「もし転生したらどうなると思う?」

「つまらん!異世界教が!」

「まーまー落ち着けって。俺が言いたいのはチートじゃなかったらって話。」

「ん?」

「主人公が毎回チートってのが、つまんねーんだろ?」

「確かに。その一面は否めない。」

「だから、チート機能が無かったらって話よ。」

「そんなの即死でしょ。」



「もうちょい考えてよぉ〜。」

「だってさ、考えてみ? 言葉通じないんだよ?」

「……身振り手振りで何とかなるかもじゃん。」

「異世界でしょ? 文明が違うから通じないよ。」


②、暫く考える。


「生き直しの方は?」

「確固たる意志がない限り同じ人生をなぞるだけ!基本スペック一緒なんだからさ。

ドラマみたいに上手くは行かないよ。」

「もしもの世界って面白いだろ?」

「その”もしも” を楽しみたくても、転生ばっかじゃつまんねーって話だ。

異世界教徒め!」

「……」

「成敗じゃ!」

「容赦ねーな。」

「なぁーんか、面白い事ないかな。」

「……ドッペルゲンガー。」

「え?」

「ドッペルゲンガーは面白くね?」

「は?」

「自分とおんなじ誰かを見付けんの。」

「んで、どうすんの?」

「……話、聞く。」

「そん時、ドッペルさんが自分よりも充実してたらどうすんの?」

「それは、その、受け止めるさ。」

「あんたには無理だね。」

「……今だって充分楽しいし。」

「……。」


①と②、照れ臭そうに俯く。

そんな二人を夕日が照らす。

何だか青春の1ページの様である。


③ 

「バタフライエフェクト。」

①②

「え!?」


実は③、ずっと居た。

③はジャムパンを食べている。


「あれって、何処までがバタフライでエフェクトしてる事になるんだろうなぁ。」

「確かに。」

「意味分かってる?」

「……。」

「君達が分岐点を違える事で、このジャムが不味くなったら嫌だなぁ。」

「……なるほどね。」

「!?」

「今が一番って事でしょ。」


①と③、お互いにグッドのポーズ。


「……何か違うだろ、絶対。」


夕日が三人を優しく包む。   


(終わり)

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