たまたま

フードコート

谷口と山田がラーメンを食べている。

山田が味玉を食べようとする。


谷口

「たまたまタマタマ見ちゃった。」

山田

「へ?」

谷口

「わんちゃんの。」

山田

「今言う?」

谷口

「なぁーんかさ……。」


山田、味玉をラーメンに戻す。


谷口

「虚しかったんだよなぁ。」

山田

「へぇ。」

谷口

「普通さ、わんちゃんのお尻って可愛いのに、でっかい……」

山田

「それ以上言うな。」

谷口

「可愛いお尻じゃなくて、気持ち悪いお尻が本来の姿なんだよなぁ。」


谷口、味玉を食べる。

山田、そんな谷口をじっと見る。


谷口

「フードコートのコンセント席くらい虚しい。」


谷口、コンセント席を見る。

誰もトレイを置いていないが、電源プラグは差さっている。

スマホやパソコン等バリエーション豊か。


山田

「へぇ……。」

谷口

「コンセント席って、本来なら商品買った人専用でしょ?」

山田

「そうだね。」

谷口

「電気泥棒される為の道具と化してる。」

山田

「そうかもね。」

谷口

「何の為に存在してるんかなぁって。」

山田

「……。」

谷口

「人生の深淵を見た気がしてさ。」

山田

「……。」

谷口

「……うん。」

山田

「なんか、繊細だな。」


山田、ラーメンの味玉を食べる。

谷口、山田の先の何かを見つめる。          


(終わり)

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