#15 ふたりの狼
先に仕掛けたのは、
一直線。前屈みの体勢で、瞬く間に
(――― へェ、なるほど)
その迫りくる右拳を、
(道理でうちの連中がまったく歯が立たねェワケだぜ)
凄まじい拳圧。並大抵の人間なら、無意識に足がすくんでしまう程の巨大な気迫の塊。
それに見合うだけの威力を兼ね備えることも、容易に想像がつく。
(―――――だが、遅せぇッッ)
刹那、セイギの顔面が破裂する。
否、
確かな手応え。セイギは天を仰ぎ、涎と涙と血飛沫を派手に噴出。
その破壊力は脳を停止させ、意識を吹き飛ばし、躰がそのまま大地を背に沈んでいく。
――― 筈だった。
「ふんがッッ」
「うおおっ!?」
身体を大きく仰け反らせながら、
見上げると、先程まで自身の頭部があった位置にセイギの右拳が貫かれていた。
回避に成功した
しかし、
(な、なにぃぃーーーーーーーーぃッ!?)
その動きに合わせて、セイギはすでに追撃を行っていた。
宙を舞い、猛烈な勢いで左回転。
ローリングソバット。脳天に目掛けた容赦のない右回し蹴り。
目を丸くしながら、
「どうした、そんなもんじゃねぇだろ」
鼻血を垂らしたまま、セイギは戦闘体勢。
「――― オマエ、そーゆー面構えしてるもんな」
今の一瞬で理解した
常人を越えた
先手を掴むための俊敏性と闘争心。
戦況を理解するだけの学習能力と打開するための想像力。
それらを実現可能とする超運動神経。
だが動きは完全に素人であり、戦闘訓練は基より、命を賭した戦闘経験など皆無。
つまり
なんとも不整合な存在だ。
「面白れぇ野郎だ。
その台詞を合図に、セイギは再び飛び掛かる。
「おまえらこそ!なんでフォーチュンを付け狙うんだっ」
両者の右前腕が激しくぶつかり合い、鍔迫り合いのようにせめぎ合う。
しかし、
「はぁ?そりゃ、決まって――― いや待て。まさかオマエ、
先程までの不遜な態度とは打って変わって、
それは愚問。それは前提。
目前の敵対者はあろうことか、
あまりにも予想外なその事実に、
その隙を、セイギが穿つ。
敵のこめかみ目掛けて、容赦ない左フックを叩き込む。手応えあり。勢いのまま
「!?」
それは、
つまりは
頭から滑り込むように、セイギは砂利地に倒れ込む。
「驚いた。オマエあの女が誰なのかも知らないで闘ってんのか。マジかよ……… っ」
殴られた左のこめかみをさすりながら、
「確かにオマエ、そーゆー面構えしてるもんな」
倒れた
「おまえが守ってんのは世界最大の宗教組織・
約12億人と推定される
「そうか。そりゃスゲェ」
何食わぬ顔で、セイギはゆっくりと立ち上がり、衣類に付着した砂埃を雑に掃う。
「おまえ解ってねぇだろ」
嗤う
その嘲りを打ち消すように、セイギは再度挑みかかる。
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