#7 真神正義
しかし、次の瞬間。
セイギは右脚を大きく後方に開き、踏ん張りを効かしてその反動を堪えきる。
そして、その瞳をカッと開き、パンチ頭の顔の位置を秒速で据えた。
轟ッ。捻じ込むように撃ち放たれる渾身の右ストレート。
パンチ頭は、大型トラックと衝突したかのような錯覚とともに、その意識を吹き飛ばす。ふわりと宙を舞い、よだれを散らしながら後方に回転。滑り込むよう地面にうつぶせになって、倒れ込む。
一発KO。刹那の出来事に、周囲は理解が追い付かないまま戦慄する。
あとには歩行者信号の『かっこう』だけが、シュールに鳴り響いている。
「おい、くそガキ」
沸騰した鍋を蓋で押さえ込むように、兄貴分は感情を押し殺して、セイギの前に立ちはだかる。
「――― 本職の
不意にセイギは囲まれる。
それはパンチ頭や兄貴分と、
極龍會の若衆たちだ。
彼等は今にも噛みつきそうな勢いで、セイギひとりを威圧する。
「
しかし、そんな状況に臆した様子もみせずに
フォーチュンも極龍會も観衆もまた、彼の言葉の意図が読み取れず、一同に疑問符を浮かべる。
「おまえらこそカタギに手ェ出して………
それは、挑発だった。
瞬時にフォーチュンと観衆は血相を変える。
一方チンピラ達は、みるみるうちに青筋をビキビキと立て、鬼気迫る表情で血眼を剥き出しにする。
「やっちまえぇーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
怒り狂った兄貴分の号令。
それを合図に、チンピラたちが一斉に襲い掛かる。
◆◆◆
「――― す、すごいですのっ」
驚愕のあまりフォーチュンは言葉を失う。
それは、凄まじい光景だった。
容赦ないチンピラたちによる幾重の暴力。
しかし、それらすべてをプロレスのように
しかも効かんと云わんばかりに驚異的な
ラリアット。
パイルドライバー。
ジャーマンスープレックス。
そして、ドロップキック。
激闘の末、最後に立っていたのは
「て、テメェ――― 」
倒れたチンピラたちの中から、不意に立ち上がる影がひとつ。
兄貴分だ。彼は全精神力を振り絞り、今にも飛んでしまいそうな意識をその身体に留めようと踏ん張りを見せつける。
そして、兄貴分は懐に手を伸ばす。
「調子に乗んじゃ……… 」
取り出されたのは、
いわゆるオートマチックピストルだ。
「ねぇぇえええぇええぇぇーーーーーーッ」
日本ではあまり馴染みのないその非現実な代物に対して、大衆の思考が追い付かない。
そして、
銃口は当然、
しかし、セイギの瞳に恐怖や焦りといった感情は混濁せず、澄みきった覚悟だけが鋭利に輝いていた。
刹那、銃を手にした兄貴分に向かって、セイギが疾駆する。
真正面から、
愚直なまでに、
ただただまっすぐ、突き進む。
「――― あぶないっ」
思わずフォーチュンは叫んだ。
そして、行動に出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます