#8 妖精彗星
▼
すべての生命には、通常では不可視の精神エネルギー・【
その【
彼女の意志に従って、白亜の装飾杖・【
▽
入力された
「“
えいっ、と【
杖の先端から射出される霊力で構成された
その姿は、蝶のような二対の翅の生えた蒼白い光玉。攻撃性の意志を感じさせる豪快なスピードでは、一直線に兄貴分のおでこに向かって突撃する
ぽこんっ。空のペットボトルを叩き付けたような間抜けな音。
「あだっ」と、兄貴分の小さな悲鳴。
ぶつかった疑似妖精は木洩れ陽のような残滓となって、すぐさま消失していく。
パァンッ。弾ける銃声。
放たれた銃弾はあさっての方向に飛んでいく。
そして、兄貴分がすぐさま視点を戻すと
ガンッ。鈍い音。
弾丸同様、兄貴分もまたあさっての方向に飛んで行く。
「なんだ今の?」
戦闘態勢を解くセイギ。
飛んできた光の玉・
「むきゅぅ~~~~っ!こ、怖かったですの~~~~っ」
そこにはピンクの少女・フォーチュンの姿があった。
事態を切り抜けた安堵感から、その場にぺたんと座り込み、そのまま泣きじゃくる。
観衆の視線が一斉に、
集積された視線は語る。
難儀そうに、セイギは頭を掻いた
◆◆◆
「へい、おまちぃ」
湯気だった熱々のご当地ラーメン『徳島ラーメン』が2杯、テーブルに用意される。
セイギとフォーチュン。二人は駅近くの徳島ラーメン専門店に訪れていた。
「いただきまーす」
徳島ラーメンは大きく分けて3系統の種類が存在する。
彼等が注文したのは『茶系』と呼ばれ、豚骨スープに濃厚醤油やたまり醤油で味付けし、トッピングに豚バラ肉、ネギ、モヤシ。
そして生卵を載せることから、別名『すきやきラーメン』とも呼ばれている。
そもそもが初めて見るラーメン。
フォーチュンは好奇の
「食わねぇのか?」
不意に、セイギがこちらを覗き込む。
フォーチュンは「ひゃうッ」と悲鳴をあげ、大袈裟にたじろいだ。
「い、いただきます、ですのっ」
手を合わせ、箸を手にする。
箸の使い方はヴァチカン市国にて、テーブルマナーの一貫で習得済みだ。
フォーチュンは4、5本ほど麺を掴むと「ふぅーふぅー」と少し冷ます。
その小さな唇で麺を咥え、ちゅるちゅると啜っていく。
舌の上で肉類、魚類、果物から汲み取られた濃縮な旨味が弾け、甘辛い醤油風味と麺の食感が口の中に満ちていく。
「お、美味しいっ!とってもデリシャス!?」
これが、ラーメン。
恍惚とした表情をフォーチュンは浮かべる。
緊張感が解けたのか。ぎこちない雰囲気は雪解けのように霞み去り、その幸福を噛み締めるよう夢中になって舌鼓。
そんな彼女の様子を満足そうに見届け、セイギもまた黙々とラーメンを啜っていく。
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