第21話 禁忌

「ん…ふぁ…」


俺は窓から差し込む眩しい光で目を覚ました。


「朝か…」

眠い目をこすりながらふと外を見るとここ数日とは比べ物にならないほどの人でごった返していた。


「多いなぁ…」

俺は人混みが嫌いだ。

暑いし動きにくい、何より疲れる。


(時間をずらすか…)

俺はそんな事を思いつつ身支度を整える。


「とりあえず装備の優先順位を決めておくか…」

そう考えながら俺はベットの上でゴロゴロしながらその紙を見つめる。


さて、この中から順位をつけるなら…


上から


思い出の懐中時計

契りの指輪

断界の剣

神滅の小手

新天の靴


だろうなぁ


靴と小手に関しては情報によると本人の力量が大きくなりそうだから優先度は低い。

そして剣は効果範囲が分かりにくい事が問題だ。


リオには攻撃を当てること自体がかなり難しい。

それは身体能力はもちろん能力が未来視だからだ。


そうなればそもそも攻撃を当てること前提の装備より当てるための装備の方が良い。


なら効果がどれ程か分からない事を差し引いても指輪と懐中時計は俺の実力に左右されにくい分攻撃を当てやすくなることは間違いないだろうな…


「まぁ…情報からするに懐中時計か指輪に絞って探すのが妥当か…」


と言ってもどうするかだな…

初代勇者の過去を調べるにしてもギルドが保管してる歴史書なんかの書物は量が多過ぎて全部探すのは現実的じゃない。


「何か目印になる物があれば良いけど…」


ただあまり期待できそうにはないだろうな…


そこまで考えて外を見た時だった。


「あれは…」

外には人混みとは反対方向に進む、見覚えのあるフードを被った人影があった。


間違いない、あれは占い師のリオンだ。


俺は思わず宿を飛び出す。


「くそ…人が多すぎる、どこに行った?!」


人混みのせいで視界が遮られる。

もっと身長が高ければなぁ。


既にその人影は見えないがここで諦める訳にも行かない。


「すみません…通してしてください!」

とにかく人混みに逆らって進む。

途中周りの人からは嫌な顔をされてしまう…

いや、ほんとに申し訳ない…


そうしてしばらく進み、人と人との間に隙間ができた頃。

周りが多少開けたのを言い事に少しスピードを上げた時だった。


ドンッ


俺は思いきり人にぶつかって転んでしまう。

顔を上げるとそこには華奢で青い綺麗な瞳を持った女の子がいた。


「すみません…大丈夫ですか?」


そう言いながら手を差し伸べる。


「大丈夫です、こちらこそすみません…急いでいて…」


彼女は俺の手を取りながら立ち上がる。

「ありがとうございます…」

「貴方も怪我は無いですか?」


「えぇ、これでもそこそこ鍛えてるので。」


「そうだったんですね、あっ…私はこれで…!」

彼女はそう言うとそそくさと走り去ってしまった。


「それにしても妙な感触だったな…冒険者か…?」

彼女とぶつかった時岩にでも当たったのかと思うほどだった。

あんな華奢な身体から伝わったとは思えない程重たい感触だった。


「いやいや、そんな事はどうでもいい。今は占い師を追わないと!」





俺はその後しばらく探し回った。





「はぁ…クソ…」

あれから長い時間走り回ったが占い師は見つけられなかった。


もちろん、はずれにある初めて話をした小屋も確認した。


でも当てはハズレた。

誰もいない。


「もったいない事をしたな…」


彼に会えれば装備のヒントぐらいなら聞けたかもしれない。

もしかすると場所さえわかったかもしれない。


「まぁ…嘆いても仕方ないか…」


そんな事を思いふと空を見上げると日が高く登っていた。

どうやら、本当に長いこと走っていたらしい。


「とりあえず冒険者ギルドに立ち寄るか…」


俺は冒険者ギルドに向かうことにした。




―――――――――――――――――――




「こんにちは、ライラさん。」


俺は冒険者ギルドに来ていた。


「レイさん、こんにちは。」

「早速装備の探索にいかれますか?」


彼女はいい笑顔で出迎えてくれる。

だけど今回は探索には行かない。


「そうしたいんだけど実は…」

「場所を絞るのに情報が欲しくてね、勇者の歴史や伝記他にも魔族との戦いの歴史が詳しく書かれた書物を貸してくれないか?」


俺がそう伝えると彼女は悩みながら答える。


「なるほど…そういう事ですか…」


「魔族との戦いの歴史については冒険者ギルドの書物庫にもあります。」

「あれはこの国の常識みたいな物ですから、当然貸出もできます。」


「次に勇者関連についてですが…問題があります。」


「現在勇者の情報は禁忌として扱われています…!」


「禁忌?なんで?」


禁忌

それは世界を揺るがしかねない魔法技術や情報、もしくは人の世界に混乱をもらたしかねない物全てをひっくるめた総称。


歴代勇者の歴史や伝記がそんなとんでもないものに区別されているらしい。


「はい、詳しくは知らされていないのですが魔族が関与しているるしくて…」

「装備の場所の手がかりになる可能性が高いので禁忌として厳重に扱う用になったみたいです」


「なるほど…」


確かに禁忌に分類すれば限られた人物にしか閲覧できない。

管理も他の物と比べ物にならないほど厳重だ。

しかも禁忌は例え勇者でもそう簡単に閲覧でき無い。


魔族がそれを狙っているのならこれ以上の保管方法は無いだろう。


だが俺からすればものすごく困る…

正直あれだけの情報では全く装備を集められる気がしない。


「とりあえず歴史書とその他にも役に立ちそうな土地に関する資料なんかもお持ちしますね。」


「あぁ、頼む。」


そう言うと彼女はカウンターの奥へと消えて行った。


「にしても禁忌か…」


勇者の装備の情報が禁忌…

そんなことがありえるのか?

確かに勇者の装備はそれぞれが世界の均衡を壊すほどの力を持つ。


でもそれは100%の力を引き出せればの話。

問題はそれをできるのは勇者の血筋のみと言うことだ。


だからこそ今までそれを手にした国は多少の恩恵より、金にかえる方法を取ったり、勇者をこき使う為の理由に使った。


それが魔族関連で禁忌に分類される理由…

考えられる事は1つ、勇者の弱体化だ。

ただそれだけで禁忌行きは理由として弱過ぎる。


「何が起こっている?」






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