第9話 占い師

「おい聞いたか?」

「いや?何かあったのか?」


街を見回っていた時そんな興奮した声が聞こえてきた。


どうやら2人組の男達が噂話をしているらしい。




いつもなら素通りするところだが今は始勇祭が近い。

もしそれが危ない噂なら調べる必要があるだろう。


そう思い俺は聞き耳を立てることにした。


「あの有名な占い師のリオンさんがこの街に来ているらしいぞ!」


「マジか!リオンさんといえば当たるって噂の有名人じゃねぇか!!」


「あんなすげぇ占い師今までどこに眠っていたんだろうな。」




どうやら最近巷で噂の占い師の噂話のようだ。

俺も少し聞いたことがある。

事件性はないだろう。


そう思い立ち去ろうとした時だった。


「それでここからは俺が掴んだ最新の情報なんだが…」

「どうやらリオンさんは人を探しているらしいぜ?」


「マジで?誰を探してるんだ?」


「何て名前だったかなライ…ライン…いや違うレイだったか?」


「そんな感じの名前のやつを探しているらしい。」


「へぇーでもそんな人が探してんだからそいつもすげぇ奴なんだろうなぁ。」


俺を探しているだと?

思わず足を止めてしまう。


いや、単にあの男達が名前を間違えている可能性もある。

結論を出すにはまだ早い。



ただもし俺を探していた場合はどうして俺を探しているのかそしてなぜ俺を知っているのか少し興味がある。


「少し調べてみようか…」


幸い今の俺は警備という名目である程度人探しにも自由が効く。




とりあえず人を探すなら情報が集まる冒険者ギルドに戻った方がいいだろう。




「ただ今すぐ…という訳には行かないか。」


今はまだ仕事の時間だ。

後30分で休憩時間になる。


とりあえずそれまではここの区域を離れられない。




「その間は自分で情報を集めるか。」




それから俺は街中でそのリオンとやらの聞き込みをした。




そうして30分が経ち休憩時間になった俺は冒険者ギルドで更に情報集め宿に戻り飯をほうばっていた。




ただ今回思ったように情報は集まらなかった。


「分かった事といえば数週間前にいきなり隣街に現れて占いの的中率100%のフードを被った男という事か…」




俺は情報を集めれば集める程その人物は俺を探している訳では無いと思うようになっていた。


あまりにも俺を探す理由が無さ過ぎたのだ。




「それに顔すら分からないんじゃなぁ…」


名前は有名だったが占ってもらったと言う人には会えなかった。


恐らく、まだそんなに多くの人を占って居ないのだろう。

有名になりだした時期と神出鬼没なのを合わせると当然だろう。



「はぁ…まぁ時間はあるか…」


俺はそんな事を考えつつ水をグイッと飲み干した。




その後俺は仕事に戻っていた。


ただ、占い師の件はこれ以上聞き込みをしてもたいした情報は集まらないだろう。



これからどうしようかそんな事を考えていた時だった。




「引ったくりだー!誰かそいつを捕まえて!」




そんな声が響き渡る。


俺が声のした方向を見ると布で顔を隠した身軽そうな男が走り去ろうとしていた。




「ハァ……仕事…か」


どうやら仕事をしなければいけないらしい


俺は自分に強化魔法をかける。

そして人混みの間を上手くすり抜けそいつに一瞬で追いついた。




「止まれ!」


俺は殺さない程度にそいつを殴る。



ドサッ!


「やり過ぎたか?」

どうやら気絶してしまったらしい。

そこまで強く殴ったつもりは無いんだがな…



とりあえず俺はそいつの奪っていた荷物を取り上げた。


そして辺りを見渡して持ち主を探していると。


「ありがとうございます。それ僕の物です」



そこには黒いフードに黒いマントを羽織った男がいた。


どこかで聞いたことあるような声だ……


そんな事を考えつつそいつに荷物を渡すと


「君もしかしてレイさん?」



俺はドキッとした。


なぜだ?名前を呼ばれたから?


いやそれだけじゃない気がする…



「大丈夫ですか?」

「あ、あぁ大丈夫だそれより君は…?」

「僕はリオンです…」

「最近有名なあのリオンさん?」

「はい…僕が占い師のリオンです。」


まさか探している人間に会えるとは思わなかった。

運がいい。


「俺は君の言う通りレイだが…」

「やっぱり…僕は君を…探していた!」



どうやら俺を探していたのは本当らしい。


ただ初めて会うはずだ…多分

なぜ有名でもない自分のことを知っているのだろうか?


いやそれこそ彼が本物の占い師だと言うことか?

そんな事を考えていた俺に彼は真剣な眼差しで。


「レイさん!今夜…ここに来て貰えませんか?」

そう絞り出すように叫んで1枚のメモを俺に渡してきた。


「え…?急に言われても…」


「頼んだよ!」

「ちょ、待って!」


そう言うと彼は走り去ってしまった


「ハァ…足はぇーな…」

一瞬で人混みに紛れて見失ってしまった。


どうしようか


俺自身彼に興味はある…


だがだからと言ってよく知らない奴にいきなり呼び出されてホイホイ着いていくのは抵抗がある。

いやむしろついて行くやつの方がおかしい。



とりあえず場所を確認する。


「ここは…」


そこは少し街から外れた場所だった。


他に特に何かあるような場所ではないが人通りは夜ならほぼ無いだろう…




何か厄介事に巻き込まれる気がしないでもない。


ただだからと言って放置して祭りに支障が出ないとも限らない。

いや、ほぼ無いだろうが可能性は潰しておくべきだ。


「万全の状態でいけば問題ないか…?」


俺はそう思い行くことにした。




その後俺は引ったくり犯をギルドに引き渡してその後も無事に警備を終え雑貨屋に寄った後宿に戻っていた。



俺は宿でそこそこのダンジョンなら攻略出来るぐらいの準備をしていた。


「…念のため持っていくか」


俺は一応唯一の勇者パーティーとの繋がりである腕輪を付けた。


正直付けるのは抵抗があるがもしそれで危ない状況になれば元も子もない…




そうして俺はしっかり準備を整えリオンが居るであろう場所に向かった。

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