第7話 目覚め

俺はベットの上で目を覚ました。


「ここは…?」


俺は確か…


何があったんだっけ?


たしか俺はダンジョンに行って…


それからどうしたんだっけ?


ダメだそれ以降は頭がぼんやりして思い出せない…


とりあえず俺は周りを見渡してみる。




ベットに机…周りを見ると質素な感じだ。


それに部屋自体も狭い。


まるで治癒院のような場所だった。


そんな風に思っていた時だった




ガチャリと音がする


扉の方を見るとよく知った女性がいた。


「レイさん…?やっと起きたんですね?!良かった…本当に良かった…!」


そう言って飛びついてきた彼女は受付嬢のライラさんだった。




「ライラさん…何があったんだ?」


そう聞いた途端彼女の顔が引きつった…


何かいけない事でも聞いてしまったのだろうか?


「覚えて…いないのですか?」


声が少し震えている…


「あぁすまない…ダンジョンに行った所までは覚えているんだが…」




とりあえず俺は覚えている範囲のことを話してみた。


「あぁそういう事でしたか…私はてっきり何もかも忘れてしまったのかと…」


彼女ほっと息をついた。


どうやらかなり心配をかけていたらしい。


「それで…何があったんだ?」


俺がそう聞くと彼女は事の経緯を丁寧に説明してくれた。




「なるほど…あいつが…」


俺は一通り話を聞いたあとそんな声を漏らしていた。




ライラさんの話をまとめるとこうだ


どうやら俺がダンジョンに行った後近くに魔族が現れたらしい。


ただ場所がリオの出身に近かったこともありその討伐をリオに依頼したみたいだ。


それでいざ到着すると死にかけの俺に魔族が止めを刺そうとした所をリオ達が助けてここ治癒院まで連れてきたらしい。


その後治療されていたが治療が終わったにもかかわらず俺は目を覚まさず9日間も眠っていたらしい。




どうやら俺は知らない内に1番嫌な相手に助けられていた様だ。


「それにしても…どうして魔族はあんな何も無い所に現れたのでしょうね…」


ライラはそう聞いてきた。


あのダンジョンの事情を知らないのだから当然だ。


ただもちろん正直に言う事はできないので適当にお茶お濁す。


「さぁな…俺の村に何かあったのかもな…」

「…深くは聞かないでおきます」


俺の村はかなり特殊だった。

色々他の村とは違い重要な秘密がある。


だから昔魔族に滅ぼされてしまったのだが。


ただこの話は今するべきでは無いだろう。

聞かずに居てくれるのは都合が良い。




そうしてしばらく話したがライラさんからは色々心配された。


痛いところは無いのか?とか他に思い出せない事は無さそうかとか。


もうそれはそれは今までにないほど心配された。

そして最後に絶対に無理はしないで…と、そう釘を刺された。


今回ばかりは流石に頭が上がらない。


ずっと俺の看病をしてくれていたようだからな…




――――――――――――――――――――――




そうして、なんやかんやあった後俺は新しい宿を探しに来ていた怪我の方は元々治っていてい後は意識だけの状態だったのでもう元の生活に戻れるようだ。




「まずいなぁ…宿が見つかんねぇよ…」


どこの宿に行っても全て予約で埋まっていた。


もちろん普段ならそんなことは無いのだが勇者の生誕祭が近づいてきていたせいでどこも埋まっていた。




この生誕祭は『始勇祭しゆうさい』と呼ばれていて始まり…初代の勇者の産まれた日を祝うという祭りだ。


この祭りは例年通りなら街全体で祝われるが街の中心に近いここは特に賑わう。


ただ今回はそれに加えて魔族を倒したと言う勇者がこの街に居るという情報が出回った事によりどの宿も空きがない状況になっていた。




それからも俺は街の中心から外れたあらゆる宿を探したが本当にどこも空いていなかった。


「…どうしようか」


一応当てはある…


あるのだが正直気が進まない。


ただいま贅沢を言える立場でないのも事実


「あそこに行くしかないか…」


俺はため息を吐きながら冒険者ギルドに向かった。



「どうも…ライラさんは居るか?」

「少しお待ちください。確認してきますね。」


俺は受付に来るなりそう聞いていた。


彼女は受付嬢なので基本離れることは無いのだが珍しく表にいなかった。




そうしてしばらくしていると


「レイさん?どうしました?」

「はっ!もしかしてまだ傷が残ってました?!」


彼女はすっ飛んで来るなりそう聞いてきた。


「傷は大丈夫だ。それよりも問題が起きた…」


「また…何かあったんですか?」


「実は…宿が無い…!」




それを聞いた彼女はポカンとしていた。


「いや…始勇祭が近いだろ?それで勇者が魔族討伐してその噂が広がったせいで住む場所がない…」


「なるほど…それでここに来たということは冒険者ギルド御用達の『あの』宿をあてにしてるってことですね…」


「そういう事だ『アレ』だ…」


あれは冒険者だけが知っていて知っているなら二度と行きたくないと思う場所だ。


「あそこには行きたくないがやむを得ないからな…」


正直行きたくない




「本当にどこも空いてなかったのですね…」

「でもレイさんは運が良いですよ?」


それを聞いて俺は眉をひそめた

運がいい?どういう事だろうか…


まさか今から宿が見つかるはずも無いだろうに…




「実はレイさんが出た後に始勇祭の準備の一環でスタッフ用の宿を用意してたんですが1つ余分に取ってしまってたんですよ…」


見つかってた


え…まじ?

タイミング良すぎない?


そうかこれは神からの贈り物だ!

あまりにも不幸続きだから慈悲をくれたに違いない。




「レイさーん?」

「あぁ?大丈夫だ」


いかんいかん…危うく意識が飛ぶところだった。


「それでそこを使っても大丈夫そうなのか?」


「えぇもちろん!ただ費用はレイさん持ちになりますが…」


「それでいいのか?」


「んー……それじゃぁ…この依頼お願いしてもいいですか?」


そうして彼女が差し出してきたのは始勇祭の警備の依頼だった。

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