第6話 異変

俺はその瞬間魔族に飛びかかっていた。

理性なんて残ってない。


目の前に家族の仇がいるのだ冷静になれるはずがなかった。


しかしそんながむしゃらな攻撃は簡単に影に呑まれ届かない。


そしてお返しと言わんばかりに反撃が飛んでくる。




「なんだ…これは?」


その瞬間とき異変が起こった


なんだ?この攻撃は…?

遅い…あまりにも遅すぎる。


いきなり視界がスローになった。


「これなら…いける!」


俺はその攻撃を難なく避けると同時に魔族の腕を切り刻む。




「は?」

そんな素っ頓狂な声を漏らしていた。

何が起こった?


俺は確かにこいつの攻撃を影で受け流しそして反撃を叩き込んだ。



今頃地に伏しているのはこいつのはずだった。

なのに何故だろうか…ダメージを受けたのは俺の方だった。


気が付けば腕が落とされている。

そもそも攻撃を受けたのは胴体で腕じゃない…


ふと俺は落とされた腕を見た時異変に気づいた…


数十にも切り刻まれていてバラバラになっていた。




1回ならわかる一瞬で自分の隙を突かれたのだと納得がいく。


だがどうだ?1回どころか痛みもないうちに何十回も切られている。


もちろん落とされた後切られた事はありえない。

いやあり得てはいけない事だ。


とりあえず俺は距離をとり腕を生やしす。




「楽に死ねると思うなよ?」




俺は距離を取った魔族にそう告げもう一度力強く地を踏み抜いた。


その衝撃で地面が爆散する。


俺は一瞬で距離をゼロにするがまだ魔族は俺が詰めたことに気がついていなかった。


どうやら今俺はとんでもない速さで動いているらしい。


理由は分からないがこれなら殺せる。


ただこいつは簡単には殺さない。

少なくとも死ぬほうが楽だと思わせるぐらい苦しめてから殺す。


俺は魔族の足を切断し、腕を切り落とした。




魔族は地面に崩れ落ちていた。


何が起こったのかすらわかっていない様子だった。


そんな魔族に俺は問いかける。


「さてお前はどういう死に方が良い?」


俺は魔族にナイフを突きつけた。


しかし異変が起こった。



いきなり全身の力が抜ける。

視界がぼやけ息が苦しい…


気がつくと地面に崩れ落ちていた。


「カヒュッ…ヒューヒュー…」


なんだ?何が起こった?


息が上手くできない。


視界が無くなり体の感覚も無い。


ただただ心臓の音と肺の音がうるさい…


手足にも力が入らない。




そんなふうにしていると魔族が立ち上がる気配がした…


まずい…どうやらもう回復されたらしい。


だが俺の体は動かない。


早く立て直さないと…


クソ…動けよ…


目の前に仇がいるのに…なのに…

後もう少しなのに…


あぁ死にたくない…




しかし俺の意思とは関係なしに意識はゆっくりと沈んでいった…




「なんだ?」


俺にナイフを向けていた人間が突然倒れた


何が起こったか分からなかった。

少し冷静になる。


こいつは急に倒れたが良く考えれば当然だ。


「はは…体にガタが来たか…」


おそらくこいつはいきなり本来の実力以上の力を使っていたのだろう。


どういう仕組みかは分からないがそれに身体が耐えられなかったらしい。


「それにしても焦ったぞ?手こずったが…それもこれで終わりだ…死ね!」


そうしてそいつの頭を足で踏み潰そうとした瞬間だった。




ドサッ…


そう何かが落ちる音が響き渡る…


俺は足を見ると切断されていた。


「は?」


一瞬思考が止まる。

顔を上げるとそこには4人の人影があった。




「どうやら間に合ったみたいだね」


そこには剣を持った勇者のリオがいた。


「それにしても…まさかレイにぃがまだここに居るなんてね…」


そうつぶやくのは天才魔法使いのミラだった


「しかも死にかけですね…早く連れ帰らないとほんとに死んじゃいますよ?」


そう言いながら回復魔法をかけるのはアリス


「なーに、すぐにでも街に連れ帰るさ」


ガウスがそう頼もしく言い放つ


「そうそう相手も瀕死だからね」


余裕と言わんばかりにリオが返す




「何なんだお前達は…」


魔族は焦っていた不意打ちとはいえ足1本を簡単に持っていかれたのだ。


そしてそんな万全でも厳しいかもしれないと思わせるような相手が4人もいるのだ…


流石に相手にはできない逃げるしかない


そう思い魔族は影に入ろうとするが…




「フラッシュボム」


そうアリスが叫ぶと同時に強烈な閃光に包まれる。


それと同時に魔族は影から強制的に追い出された。


それと同時に火球ファイアボールが飛んでくる。


魔族は咄嗟に腕で防ぐが


「がぁ…」


防御した腕がだらりと下がる


「初級魔法だから簡単に防げると思った?」


「でも残念私の火球ファイアボールは普通の威力じゃないのよねぇ」


今の一撃でしかも初歩の初歩とも言える魔法で魔族の腕は使い物にならなくなっていた。




だがもちろんその間にも攻撃は止むことはない。


リオとガウスが一気に仕留めに掛かる。


「チッ…」


魔族はバックステップで距離を取ろうとするが壁にぶつかる。


「残念どうやら行き止まりみたいだね?」


リオはそう予定通りと言わんばかりにそのまま切りつける。


合わせてガウスも大剣で切りかかる。




その攻撃は魔族を仕留めるには充分だった。


「まさか…この…俺が…」


そう言って魔族は倒れた。


リオはゆっくり慎重に魔族に近づいた。


魔族の死亡を確認するためだ。




魔族は魔物と違い魔石にならない。


そのためもし交戦した場合死んだことを確認するまで油断しないことが鉄則だ。




「大丈夫もう終わったよ」


そうして魔族の死亡を確認したリオは呟いた。


「それじゃあ早く街に帰ろ?」

「そうですねぇ…流石にここで出来る応急処置はもうこれが限界ですね…」


アリスとミラが心配そうに呟く


「そうだなこいつがいくら頑丈でも治療が早いに越したことはないな。」


「そうだね…僕もいくら助かるとはわかっていても気が気じゃないからね…帰ろうか」




そうしてリオ達は還しの羽を使って街に戻ったのだった。

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