第5話 VS魔族

ドンッと鈍い音が響き渡る。


俺は勢い良く扉を蹴り抜いてその勢いのまま先に居るであろう魔族を蹴っていた。


「ッ?!」


俺は確かに魔族を蹴ったが手応えがない…


いや最初は確かにけった感触があった。


なのにその後、急にいなくなった様に手応えが消えた。


動揺していると扉を蹴り抜いた事により土埃が舞う。


視界が遮られた先から声が響き渡る。


「ほぅ…やるじゃないか?まさか触れらとは思わなかったぞ?」


俺は限界まで距離をとる。


そして段々と土埃が収まり視界が戻ってくる。




そしてようやく互いに姿を認識する。


「まさか俺がただの人間に触れられるとはなぁ…」


魔族は俺を見るなりそう言った。


「へっ…人間舐めすぎじゃねぇか?そんなんだと足元すくわれるよッと!」


先手必勝


こいつに何かさせてはいけない。そう思った俺は言い終わると同時に魔族に攻撃を繰り出す。


ナイフを一閃。


確実にの捉えたと思った。


しかし手応えがない


「?!」


俺は反撃を警戒してバックステップで距離をとる。


何が起こった?


混乱している俺を見た魔族は愉快そうに笑いながら。


「なかなか速いじゃないか?次はこちらから行くぞ?」


そう言うと同時に奴は俺の右真横に現れる。


「ちっ!」


俺はそこに向けて思い切りナイフを振るがまた当たらない。


いや当たってはいるのだが手応えがない。


なんだ?確実にナイフは当たっているのに当たらない…


「おやおや?戦闘中に考え事なんて余裕だねぇ?」


そう声が聞こえた瞬間腹部に鈍痛が走り壁に叩きつけられていた。




「カハッ…」


腹の痛みに耐えながら何とか俺は立ち上がり回復ポーションを使う。


「へぇ?あれで生きてるんだ…」


「はっ!そんな攻撃で死ぬ訳ねぇだろ?」


そうは強がったものの危なかった…


石版に触れた時から強化ブーストを発動しておいてよかった。


何の強化も無しで受けてれば即死だっただろう。


「強がりはよせよ?ただここまで生きている事は褒めてやるが俺も暇じゃない…そろそろ本気で殺すぞ?」




魔族はそう言った瞬間またいきなり俺の右横に現れる。


何かおかしい文字通りいきなり現れるのだ。


こいつ自体の能力なのだろうがなんの能力だ?


そんな事を考えつつ俺は素早く前方に転がり攻撃を躱す。


顔を上げると目の前に魔族の足が現れる。


これは無理だ避けれない。どうする?


一かバチか俺は魔族に魔法をかける。


「弱化ウィーク!」


そう叫ぶと同時に俺の顔面は綺麗に足で撃ち抜かれる。


「が…ぁ…」


俺は思い切り吹き飛び意識が一瞬飛ぶ…


そして壁に打ち付けられた衝撃で意識を取り戻す。


「ヒュー…ヒュー…」


上手く息ができない…




何とか回復ポーションを使いダメージを回復する


「はぁはぁ……」


かなり楽にはなったが回復ポーション1本では回復が追いつかない…


さっき吹き飛ばされた衝撃で使える回復ポーションは残り二つだ無駄遣いはできない…


「まずいな…」


ただそんな事している間にも魔族はこちらに向かってきていた。


「殺す気でいったんだがな?何故生きている?さっきの魔法のせいか?」


納得のいかないと言った顔で魔族は声をかけてきた


「さぁな?お前が弱いだけじゃないのか?」


俺はギリギリこいつに弱体化魔法を付与することに成功していた。


もし上手く決まらなかったら今俺はこの世にいないだろう。


それでも意識を持っていかれるぐらいの威力はあった。


そして回復ポーションもほとんどなく相手の能力も分からない…


逃げれもしない以上これでは死ぬのは確実だ。


「できるだけやってみようか…」


俺は再びナイフを構える。


「まぁ…そろそろ死んでくれ」


彼はそう言った瞬間また右隣に現れる。


しかしこれは予想通り。


さぁどこに攻撃が来る?腹か?頭か?それとも足か?


そう思った瞬間拳が心臓目掛けて飛んでくる。


俺は少し後ろに下がりつつナイフを腕目掛けて振り下ろす。


「チッ?!」


魔族の顔が歪み後ろに下がる。




俺のナイフは魔族の腕を切り落としていた。


「やっぱりな…お前は俺を攻撃する時は必ず実態を表すしかない様だな」


まぁ当然だ…そうじゃないと俺にダメージを与えられないからな。


「人間風情が…ははっ!やるじゃないか!ただ残念だ腕を切られたとしても俺は魔族この程度なら再生出来るぞ?」


魔族はそう言って腕を生やす。


「反則だなぁ…」


いやぁ…もうほんとに嫌になる。


「まぁ…ここまで戦えたのは褒めてやる。褒美に俺の能力を教えてやろう。俺の能力は影を操る能力だ」


「はは…ありがたい事で」


影を操るか…ダンジョンみたいな薄暗い所じゃどうしようもないぐらいに強い能力だな…


おそらく影で攻撃してこない以上それは出来ないののだろうがそれが唯一の救いだ。


今のところ影の中の移動に気をつければいい




しかし能力を開示したということはしても問題ないレベルとして見られているのだろう。


実際俺は大したダメージを与えられていない。


そのうえ、こいつの再生能力は魔族でも上のレベルだ。


殺すには即死させないとダメだろう…


そんな事を考えていると


「君は考え過ぎる癖がある…戦闘では命取りだよ?」


ふと左側から声が聞こえる。


そこに目をやると既に拳が飛んできていた。


「しまっ…」


遅かった。


その攻撃は俺の腹に深々と刺さっていた。


だがこれは最後のチャンスだ。


相手は油断している。


そして俺は身体能力強化のおかげでギリギリ動ける。


「しねぇええ!」


俺は手に持っていたナイフを魔族の胸に突き刺した。


「ぐぅッ?!」


そのナイフは綺麗に魔族の胸を貫いた。


その瞬間魔族の腕から実態が消えナイフの手応えも消えた。




腹から血が吹き出す…


「あぁ…まずい…」


何とか2つ回復ポーションをかけ何とか傷を塞ぐ…


危なかった…本当に死ぬところだった。


魔族の方をみると血を吐いていた。


「人間風情にやられかけた?この私が?ふざけるな…殺す…!」


魔族はこちらを睨む。


俺はゾワリと悪寒が走った。


その瞬間俺は勘で前に飛ぶ。


「がっ!?」


俺は吹き飛ばされていた。


何がどうなった?


自分から飛んだお陰でダメージは最小限で済んでいるがそれでもきつい。


その瞬間魔族が呟いた


「チッやはり人間は面倒だ…あの村を滅ぼした時もそうだった…あぁ鬱陶しい」


あの村?ここの近くにあったのは俺の故郷だけだ…まさかこいつは…


「お前…あの村ってこの近くの…」


「あぁかなり強い人間が多くてねぇ?かなり手こずったよ」


俺の故郷を滅ぼしたのはこいつだった…


ふざけるな…こいつが…俺の母さんを…父さんを…妹を…


許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない


「お前は…殺す…!」


その瞬間俺の中で何かが切れた。

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