第3話 VSウィンドタイガー
そして俺は自身に身体能力強化の魔法をかける。
「強化《ブースト》!」
俺の勇者パーティーにいた頃の本来の仕事は味方の強化そして敵の弱体化だ。
ここからが本番だ。
しかし違和感を感じとったのか強化した瞬間ウィンドタイガーはさっきと同じように攻撃を仕掛けて来る。
ヒュっと言う風きり音が聞こえた時には既に目の前まで迫ってきた。
「やっぱ…はえぇなおい?!」
何とか体を捻り倒れながら攻撃を交わす。
もちろん反撃なんてできる余裕は無い。
いくら身体能力を強化したとはいえ簡単に圧倒出来るほど力が増すことは無いむしろようやく勝負のスタートラインに立った感じだ。
このままではゆっくりそして確実に削られて死ぬだろう。
「回復ポーションは…残り4つ…やるしかないか…」
そんな事を考えている間にもウィンドタイガーはお構い無しに攻撃を仕掛けてくる
さっきと同じように身を捻り躱そうとしたが違和感に気づいた俺は無理をしてその場から大幅に距離をとる
「あっぶねぇ…」
土埃が巻き上がる。
さっきまで俺のいた場所を見るとそこは地面が陥没していてウィンドタイガーは悠々と立っていた。
「このままじゃほんとに死ねるな…」
俺は久しぶりに本当の死を予感した。
勇者パーティーにいた頃は死にそうでも味方がいる安心感があったがそれはもうない。
だからと言ってこいつのスピードでは逃げることも難しい。
だがまった策が無い訳じゃない俺は再びウィンドタイガーに向かって構える。
今度はさっきとは違いこちらから仕掛ける。
俺は思い切り地面を蹴り抜く。
「ふっ!」
そしてウィンドタイガー目掛けて右手に持ったナイフを振りかざす。
しかしそんなもので捉えられるはずもなく簡単にナイフを持っていた腕を爪で切り落とされてしまう。
だが目的はそこじゃない俺はそのまま足の間をすり抜けながら残った腕をウィンドタイガーにかざし叫ぶ。
「
そして俺はそのまますり抜けてウィンドタイガーの背後に回る
「あ"ぁ"!痛ってぇなぁ…!」
右腕が痛い…切断されているのだから当然だ、だが痛いもんは痛い
「ガルル…!」
ウィンドタイガーはこちらにゆっくりと振り向く…
切断された腕を見るとウィンドタイガー後ろの方に転がっていた。
「あれ、もう一度繋げられるか?」
どちらにしろナイフがそれに握られているのだから回収するに超したことは無いだろう
そんな事を考えているとウィンドタイガーがまたこちらに向かってきていた。
しかしさっきよりも格段に遅い。
身体能力ダウンの魔法がかなり効いているらしくこれなら反撃はまだ厳しいものの腕を拾うことはできそうだ。
俺は突っ込んできたウィンドタイガーをギリギリまで引き付け当たる寸前で避け前方に転がり込む。
引き付けたかいあって多少の隙ができる。
俺はその隙に落ちている腕とナイフを回収し素早く回復ポーションをかけて治癒する。
「若干痺れるが…この程度なら問題ないな」
どうやら上手く繋がったらしい。
そうしながらウィンドタイガーの方に向き直るとかなり苛立った様子で鼻息を荒らげていた。
だが警戒しているのかすぐに襲っては来ない。
しかしこちらからしたら好都合だ。
「さぁここからは俺の番だ…!」
俺は攻撃を仕掛ける。
思い切り地面を踏み抜き一気に距離を詰めるが今度は反撃は飛んでこない。
「いける!」
そう思いナイフを顔目掛けて思い切り突く!
しかしその突きは空を切った
「ちっ…」
ウィンドタイガーは当たる寸前にバックステップで避けていた。
「流石にそう簡単にはいかないか…」
1つチャンスを掴み損ねてしまった…
だがこれで確信した今のこいつに俺を一方的に殺す程の力はもう無い!
「ガァウルルル!」
ウィンドタイガーは怒りを露わにしてこちらに殺意を向けているが先程までのヒヤリとする感覚は無い
「なら…やる事は1つ」
俺はもう一度地を蹴り一気に距離を詰め今度はナイフを横に薙ぐ。
もちろんさっきと同じように避けられるがその避けた先にナイフを投げる。
身体能力を強化して投げたナイフは普通じゃないスピードでウィンドタイガーの左目に突き刺さる
「キャウン…」
そう情けない声がウィンドタイガーから漏れた
「貰った!」
そうしてウィンドタイガーが怯んだ隙に俺は目の前に移動して刺さったナイフを左手で掴んで思い切り顔の右側を切り裂いた。
その傷は大きく、右目の視力も奪った。
しかし視力を失ってなおウィンドタイガーは暴れだした。
だがここまでは予想通り俺はそのままウィンドタイガーの右側に回り込んでいた。
「これでどうだ?!」
俺はそうして流れるようにウィンドタイガーの前足の腱を切り裂く。
腱を切断されたウィンドタイガーは体制を崩し地に伏せた。
「これでとどめだ!」
俺は両手でナイフをウィンドタイガーの首に突き刺した。
それをきっかけにウィンドタイガーの体は魔石に変わっていった。
「ふぅ…何とか終わったな…」
回復ポーションのおかげで傷はないが疲労感が凄い。
まだ日は落ちていないのが不幸中の幸いだ。
「はぁ…帰るか…」
俺はウィンドタイガーの魔石を拾いギルドまで戻った。
―――――――――――――――――――――――
「ライラさん戻ったよ」
「おかえりなさ…レイさん?!ボロボロじゃないですか!何があったんですか」
ライラさんは俺を見るなり慌てていた。
そう言われ俺は自分の服を見るとそれはもうボロボロになっていた。
「あー実は…」
とりあえず俺はゴブリン討伐の後何があったかを簡潔に報告した。
「なるほど…ウィンドタイガーが…よく一人で無事に戻ってこられましたね…」
「過去に1度戦ったことがあったからな…まぁそれでもギリギリだったが…」
正直厳しかった。
もし一番最初にもろに攻撃喰らっていたら即死だっただろうし
そうでなくともウィンドタイガーに魔法があまり効かなければその時点で負けていたかもしれない。
本当に無事勝てて良かった…
そんな風に考えていると
「本当にお疲れ様です!これ…今回の依頼とウィンドタイガー討伐の追加報酬です」
そう言って渡された小袋はズッシリと重かった。
「ありがとう!それじゃまた来るよ」
「えぇ!何時でもお待ちしております」
―――――――――――――――――――――――
俺は宿に帰って来ていた
とりあえず俺は報酬を確認して見てみるとそこには金貨1枚と大量の銀貨、銅貨が入っていた。
それぞれの価値は
金貨1枚で銀貨100枚
銀貨1枚で銅貨100枚
そして宿代は1泊だいたい銀貨10枚という事を考えれば暫くはお金に困らなさそうだ。
正直かなり助かる
「そろそろ荷物まとめないと…だな…」
そうは思う物の流石に荷造りする元気は残っていなかった。
リオ達がいる場所で寝るのは本当に嫌だったが眠気が勝ってしまったので俺はもう寝る事にした。
「また明日、絶対に宿を変えよう」
そう思いながら俺の意識は暗闇へと落ちていった…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます