天地無用

憂杞

天地無用

「あの星の名前なに?ママ」「カストルよ」一人息子のポルックスに告ぐ


冬の夜は理科の授業で教わったオリオンばかりが僕の目を追う


グーゼの目ちらちらと照る憎らしき祖父の遺影にも柔らかな笑み


増加するスペースデブリと見紛うた十四等星に宿るいのち


距離感も輝きも皆同じなら砂糖をこぼしたような星空


不織布の下に隠したニキビすら君の前では恒星だった


変わらぬ世を受け入れている幾年も同じかたちの星座のように


「今日の俺、星座占い最下位」と鼻で笑った友の誕辰


長寿星の光につられ旅に出るアルゴ座ひろく見渡せる地へ


再会を乞う彦星と織姫を超える願いが誰にあるのか


墓石と僕を隔てて立ち上るかささぎ橋のない天の川


夏も冬も日々の熱度は変わらない適度な距離を取れているだけ


天地無用傾き倒れ壊れてくジュラルミンケース地球の中で


砂時計に似たオリオン座あの夜にベテルギウスを殺していれば


存在をただ認めたいだけなのに見上げた星が霞んで見える


教会は東に聳え一日のはじまりすらも見せてくれない


双子座とパピコは似てる ねえ神様、片方食うなら僕のも食えよ


なんとしても独りでいたい一等星たとえ隕石になるとしても


杞憂だと呼ばれた祈りを捧げよう墜ちゆく空に君がいるなら


営みを星屑としたビル街の銀河を見てる ふと流れ星

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天地無用 憂杞 @MgAiYK

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