華やかなる地獄
放課後。
いつもならまっすぐ家に帰りゲームをしご飯を食べて寝るという大層つまらない生活を送るはずだったが、今日は特別だ。そう思い私は駅から近い服屋さんに来ていた。
「見てくださいこのネックレス! 十字架のアクセサリーが付いてますよ! めっちゃかっこいい!」
「そうですかね……こっちの幾何学的な何かの方が」
「あ、この服どうですか!? 天使の輪と羽が生えてます! かっこいいですよねほんと!」
「不思議な趣味をしてますね……」
天使には私の好みが合わないのか眉間にしわを寄せながら付いてきてもらっていた。
天使なのに天使模様が好きでないというのはどういうことだろうか……
「天使は服が好きじゃないんですね」
「と言うか見て分かる通りスーツですし、服を好んで着るってこと自体ほとんどないので」
「そうなんですね」
チョイスを間違えただろうか?なんとなく来てしまったが、天使であろうお方がつまらない様子だと自分のプライドが傷つく。
とにかく天使が来てよかったと思えるように話題を振ることにする。
「じゃあ私に何が似合うか、天使視点で教えてくださいよ!」
「べつに天使だからと言って服の見方は普通の人間と同じだと思うんですけど」
「普通の人間とはこういうところに来ないんですよ!」
そういうと天使はばつが悪そうに表情を曇らせる。
どうして天使にも気を遣わせなければならないのか。なんだか悲しくなってきた。
「そもそもこういう派手すぎるチョイスがだめなんですよ。こういうのはどうです?」
「火?」
「ふぁいあーですよ」
天使が手に取ったのは白の生地にいわゆる炎がプリントされた服だった。
「天使も天使でわりと……」
「なんですか? 言いたいことがあればちゃんと言ってくださいよ」
「だいたい天使ともなれば火くらい簡単に起こせるんじゃ?」
「何言ってんですか?そんなことできるのは空想上の魔法使いだけですよ」
「え、起こせないの?」
不服そうな顔をしながら服をたたむ天使の姿はなんだか家庭的でかわいい。
服をたたみ終えると他の服を見たいのかゆっくりと歩き出す。
「確かに『神のご加護』があれば多少無茶な事でもできますが、さすがに火は無理ですよ。と言うか可燃物もないのにどうしろって言うんですか?」
「それはたしかに……逆に何ができるんですか?」
「簡単に言えば『神のご加護』って言うのは人間の普通の能力を少し強化したーみたいなもんです」
「人間の普通の能力?」
「例えば足の速さをあげたり重いものを動かしたり、最近なら昼に星が見えることもあります」
「なんだか人間の感覚だと分からないものだらけですね」
「当然ですよ」
天使は気に入ったのが見つかったのか足を止めると服をハンガーから外し私の胸に当ててきた。
なんだか彼氏のようだ。そういえば天使に性別はあるのだろうか?
「これなんかどうですか?」
「これは……いくら人間の感覚でも分かりますよ……」
天使が口角をあげ嬉しそうに見せつけてきた服。
真ん中にどくろが大きく書かれており、その上に「death」下には「hell」と書かれていた。
「最高ですね!!」
「却下です」
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