未完成のクラス
「本当に天使なんですよね!?」
「そうですよ? 何度も言ってるじゃないですか」
「私の人生に悔いはもうありません……神は見ていてくれたんですね」
「随分とご機嫌ですね……」
私はいつも通り学校へと向かった。とはいえ天使様を置いてはいけないので付いてきてもらうこととなった。
どうやら天使様は普通の学生のように見えているらしく、怯えながら学校に来たが杞憂だったらしい。先生に会っても何もおかしな顔されなかった。
「ここが私の教室です、とはいえやはり緊張しますね」
「べつに新学期ってことでもないですしそう硬くならなくていいんですよ」
「いえいえ、天使といるなんてこんなにも幸せな事なんてないですよ! 今なら死ねます、いやほんと」
「信仰してくれるのは嬉しいですけど……少し重いですね」
そういって天使様は苦笑いをした。教室に入るとクラスの人が何人かこっちを向いたがすぐにもどった。
私は自分の席まで向かうとどうやら話が盛り上がっているらしい。私の机に大胆に座り大きな声で笑っている人がいた。
邪魔と感じつつも私をストレスに感じてほしくはないので横からそっとカバンをかける。
「あ、ごめんね! 机借りてたわ!」
「いや、大丈夫だよ」
そういうと声の大きい人は机から降りしゃがんでまた話に参加し始めた。
誰も私に気にかけずに会話を続ける。
「悪い事したかな……」
「そんなことないですよ?あの大声の人、人の気持ちを考えずに」
「い、いいよ別に」
「え、そうですか……」
「彼に悪気はなかったんだし、謝ってくれてたでしょ?」
「そう、ですね。貴方がそう思うならいいですけど」
「天使様もそう気を張らなくていいんだよ?」
「その呼び方はやめてほしいです」
私は席に着くと筆記用具を机に並べる。
天使様はまるで友人のように机に手を乗せて話の相手になってくれた。
「私は貴方と呼んでるので気軽に天使とお呼びください」
「い、いいんですか!? そんな……冒涜になりませんか?」
「私がいいと言っているのです! 気軽にそうお呼びください」
「ありがとうございます……ほんと……ありがとう」
私はそういうと天使の手の上に私の手を置き腹からそう感謝した。
自分に友達が出来ないのもうなづける。理解しつつもやはり私は間違ったことをしていないと考えもする。
そんなやり取りをしているとチャイムが鳴った。
「チャイム、懐かしいですね」
「天使のところでもなってたんですか?」
「そうですね、本当の鐘が鳴ってましたよ! こっちでの仕事の時はそう聞かないですがね」
「こっちでの仕事……?」
「これのことですよ」
皆がチャイムの音と同時に席に座り始めた。今は先生を待つ時間。だが天使は話をやめない。
「私たちが話してるのってどう思われてるの? 私だけ話して変じゃないかな?」
「深いことは考えなくて大丈夫です! 皆これが普通だと思いますしあとで今の時間について聞いてみてください。みんな口をそろえて覚えてないって言いますから」
「天使ってすごいですね」
「と言っても『神のご加護』のおかげですけどね」
天使の顔がコロコロと変わって面白い。今はどや顔をしているのでどちらかと言えばかわいいだろうか? こんな美形の人間がいれば皆一度は声をかけたくなるだろう。そんな天使を独り占めできるなんて自分はどれ程前世で得を積んできたのだろうか……
「『神のご加護』って、なんなんですか?」
「そういえば説明してなかったですね! と言ってもすごい力と思ってもらえれば結構ですよ!」
そう、天使は鼻にかけた。なんだろう、この愛おしい存在は。
その『神のご加護』があれば私の心を読んでいる可能性もなくないだろうが、何故だか今だけはそれに嫌悪感を感じない。
「そういえばもうすぐ先生が」
「分かってますよ! なんだか授業参観に来た母親の気分ですね」
「そうやって茶化さないでください!」
後ろに向かった天使は楽しそうに私に手を振った。
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