神の使い
目が覚める。と同時に出ない声を必死に絞りだす。
「うわああぁぁぁ!!」
「ご、ごめんなさいごめんなさい!」
「だだだだ誰ですかあなた通報しますよ!?」
「待って、ちょっと待ってください!」
おかげで頭が一瞬で覚醒したがどう考えても今は危険な状況だ。なんといっても起きて自分の部屋に人がいたら金品or命の二択を強いられている事間違いない。
急いで枕元のスマホを手に取り電話画面へと向かう。
「えええと、えと、警察って110だっけ?119だっけ?」
「け、警察は110だったと思いますよ?」
「あ、ありがとうございます」
これで助かる。せめて命だけは取られないように布団を首までかぶりその存在をじっと睨みつける。
私の力でも折れそうなくらいに細い腕。人種どころか生き物の差を感じるくらいに白い肌。カレーうどんアンチを疑う白いスーツに、ほとんどの服屋では売ってないであろう白のネクタイに白のベルト。中性的な顔つきに人よりも柔らかい声。丸い髪型はおそらくボブの典型例だろう。そんな髪色は私とそれほど変わらないであろう普通の黒さ。だが頭上には信じることのできないモノ。
「て、てんし……?」
「分かってくれるんですか!?」
「だよね? それって天使の輪っか、後光ってやつですよね」
「そうですよ! ほら」
頭をゆらゆらと揺らして天使の輪の証明をしているのだろうが、髪の毛がふりふりと揺れていてかわいい。
必死に証明してくれている天使の輪は彼女の頭を一生懸命に追いかけているのが分かる。
「というか……天使が来たってことは」
「ご存じ、ですか?」
天使を名乗る彼女は頭を振るのをやめると上目遣いをしてこっちを見てくる。
私の予想は当たっているのだろう。だが悔しくも悲しくもない。
「言いづらいんですが……」
「よろしくお願いいたします!!」
「え?」
私がそう布団を剥いで彼女に近づく。
彼女は驚いたのか手のひらを胸の前に出し、後ろに二歩引いた。
「すぐに死ぬわけじゃないんでしょ?」
「……」
小声で「本当に知っていたのか」と聞こえた。目線が左下の方を向いている。
そんな天使に向かって私は手を伸ばす。
「だから数日間よろしくね?」
「呑み込みが早すぎて私が理解できていませんが……」
口角を小さく上げた天使はそういうと「お願いします」と言って手を握り返した。
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