第4話 思い出は月に異に 前編

2022年5月27日(金曜日)


「え〜、シンジにお金を借りるゲンドウ」


「シンジ4万貸せ。」

「だぁめだよ!お父さん、どうせパチンコや競馬に溶かすじゃないか」

「パチンカスのゲンドウぉ」


俺たちはエヴァ◯ゲリ◯ンにハマっていた。粗品のツッコミの真似に最初ハマりその次はエ◯ァ大喜利にハマっていったのだ。ちなみに1番面白かったのは



「シンジ、ゴムをつけろ」

「やだぁよ!お父さん、生が1番気持ちいいんだ。ピルを飲ませればいいじゃないか」

「いーや、くずシンジィ!」


最低だ。だが1番笑った。陽から下ネタを聞いたことなかったから余計笑ってしまった。


こうして俺らは◯ヴァにハマっていた。そのあたりに丁度、次の土曜にレンタカーを借りて京都にでも行きたいねと話していた。


昼休み、京都について調べていると映画村でちょうどエヴ◯とコラボをしていた。これはエヴ◯ンゲリオ◯に乗るしかない。


「シンジ、エ◯ァに乗りたいか」

「乗りたいです!ぜひ、乗らさせてください!」

「いーや、めちゃくちゃ乗り気なシンジ!」

「そんなシンジ嫌やなぁ」


陽はすぐ乗ってきてくれるからおもろい。


「映画村でエ◯ァコラボしてるって、 ◯ヴァ乗りたくね?」


「乗りたーい!映画村ってどこ?」


「京都、こっから車で2時間くらいやな。有料道路なしで」


「おっけー。レンタカー予約しとくわ。どっちが運転する?僕、運転何時間でもできる人だよ?」


「うーん。俺も運転しときたいからな。じゃあ、行き俺が運転して、帰り陽が運転して」


「あと、嵐山ってところも行きたいわ」


「おぉ、いいね。あの竹がいっぱいあるとこね」


「レンタカー9時から20時までって。それすぎたら日を跨いで高くなっちゃうから20時まででいい?」


「あーおけ、朝は起きれないと思うから10時出発にしよう」


「了解。他に天とか呼ぶ?」


「うーん。どっちでもいいよ」


「じゃあ、声かけとくわ。そういえば、野球のメンバーも集めないといけない」


「何それ?」


「いや、田山さんから野球しようって言われてメンバー集めといてって言われたんよ」


「それめんどうやな。けど、陽は皆と仲良いからメンバー集めるの陽が最適だと思うわ」


「そう?田山さんになめられてるだけやと思うんやけどね。そんなん自分がやりたかったら自分で集めればいいじゃんって思う」


「確かに。陽、頼まれたら断らなさそうだもん。だから、田山さんも頼んだかもね」


「嫌なことはちゃんと断るさー。職場の人たちと野球やるのは楽しそうだから声かける!けど、なんか雑に頼まれるのは癪!だけど、田山さんバット買ってくれるって言ってたから許す!」


情緒不安定かこいつ。


「田山さんバット買ってくれるの?野球にノリノリじゃん」


「そそ、田山さんが急に聞いてきたもん。『バットってやわらかいやつでいいよね?』って」


「バリ乗り気やん。意外やな」


「それなー。まぁ、田山さんの頼みを聞いた方が職場内で融通が効きやすくなるから好都合でいいけど」


「確かに」

陽は、一見何にも考えていないように見えるけど実は計算高い。頼りになるんだよなぁこいつは。


「あ、今日の夜、寿司食べない?寿司」


「あり」


「昼ごはんも食べ終わったし、キャッチボールするかぁ」


こうしていつもの昼休みを終えた。



18:00



「だれぇ?マグロ4皿頼んだの」



天が指摘する。レーンにマグロ4皿のってきた。誰だよ偏食の人。


「あぁ、それ僕の。寿司屋、来たらいつも初手マグロ頼むんだよね」


「陽くんそれ変だよ」


「よく言われる。けど、1番好きなものを1番多く食べたいんだよね。そういう瞳は最初何から頼むの?」


「カンパチかな」


「しぶ」


「あ!次の来たよ。ってミルクレープ!?誰これ頼んだの」


「あぁ、俺」


「絶対僕より変だよ。海」


「うみ、へーん」


俺も変だったらしい。


俺たちは今、陽と天と瞳の4人で寿司屋に来ている。天と瞳は元々、今日寿司食べる予定だったらしい。それで、陽が一緒に食べないかって誘ったらしい。


「そういえば女の子達のホテルってどんな感じ?」


「ふつーのホテルって感じよね?」

天が首を傾けながら瞳に聞く。


「すこーしだけ汚いかも。でも、ベットはすごい広いね」


「ベット広いのいいね。僕たちのベットほんとせまい。ね、海」


「ほんま狭いな」


「そういえば、夜ご飯はどうしてるの?」

陽が2人に聞く。確かに俺たちはキッチンがあるので部屋で食べれないことはないが女達はどうしてるんだろうか。


「うーん。食べる時はスーパーの総菜買ってるかな。けど、食べない時の方がおおいかも」


「えー。食べないと力でないよ?」


「けど、金曜日はこうして天ちゃんとご飯食べるって決めてるんだ」


「そうなんだ。なんかごめんね。せっかく2人で食べるところを誘っちゃって」


「ううん。全然大丈夫。陽くんたちと食べられて嬉しいし」


「嬉しいこというじゃん。あっ!そういえば、明日、天と海と京都の映画村行くんだけど行く?」


寿司を食べながら、陽と瞳の会話を聞いていた。京都に天も来るようだ。素直にポンポン誘えてすごいと思った。


「残念だけど、友達と会う約束があるんだ」


「そうなんだ、どこで会うのー?」

天が瞳に聞いた。


「京都駅の四条だよ」


「京都駅ならちょうどいいじゃん。乗ってけば?」

陽に影響されたからか柄にもなく誘ってしまった。


「えー、いいの?」


「何時に京都?」


「12時過ぎくらいかな」


「お。ちょうどいいじゃん」


「じゃあ、瞳も10時に集合で」


「お言葉に甘えるね」


それからも食事会は続いた。



「あ、寿司屋で思い出したんだけどさ。この前友達4人で閉店1時間前くらいにお寿司屋さん行ったの」

陽が笑いながら話した。


「閉店1時間前だったからさ、客も誰1人もいないし、お寿司もレーンに1つも流れてない状況だったの。だから、頼んだ奴はすぐ流れてきて待つことなく食べれてたんだけど、最後に友達が頼んだケーキが10分、15分まっても届かなくて。で、遅いねーって友達と話してたらふと友達が隣の寿司のレーンに視線むけて何かを目で追ってたから、その隣のレーン見たら……


頼んだチョコレートケーキがひとりでにまわってたんだよね」


「すごいシュールやん」


「ハッハッハ」

楽しい飯の時間が過ぎた。

最近、1番好きなのが飯の時間だ。

陽と食べる飯は、楽しいし、おいしい。この時間がずっと続けばいいなと思うほどだ。



20:30 飯を食べた帰り道


「これから陽と俺の部屋で歌うけど来る?」

天に聞いてみる。


「行く!行く!ひーちゃんも行こ?」

天が瞳の方を見ながら聞く。


「うーん」

天が瞳の目をじーっと見つめる。


「―――1曲くらいなら。私は聞くだけね」

天に根負けしたようだ。


「やったー!じゃあ行こう」


「瞳聞きたい曲ある?」


「ベテ◯ギウスかな」


「おー、いいね。陽弾ける?」


「弾けると思うよー」


「陽、流石やな」

そうこうしているとホテルについた。


「お邪魔します。わー、部屋こんな風になってるんだね。すごくいいじゃん」

初めてマンスリーマンションの部屋を見た瞳が言った。


「割といい感じの部屋よねー。汚くはないし」


「陽くんかせてー」


「おけ、ギター頼んだ」


「改めて弾くってなるとすごく緊張するんやけど。そんなに上手くないからノリだけ楽しんでな」


陽がチューニングしながら答えた。


「最初は、指ならしてチ◯リー弾かせてー」

俺達は最初歌うとき毎回スピッ◯のチェ◯―をまず歌う。


「いいよー。楽しみ」


「もはや俺らの定番曲やな」


「もう歌詞みなくても歌えるね。」


「じゃあ、行くよ」




「えーーすごい。すごい。めちゃくちゃ上手じゃん」


「2人とも歌うまいよね」


「そうだね!でも、陽くんもギター上手だったよ?」


「ありがと」


「ベ◯ルギウスも聞きたいな」


「任せてー。おー、うんうん。そんなにコード難しくないから行けるかも」

陽が携帯を見ながら答えた。


「かいー。ベテルギ◯スの歌詞見せてー」


天は俺の隣に来て、俺の携帯でベテルギウ◯の歌詞を見た。


「じゃあ、行くねー。入りだけ僕歌うね」


そこから演奏が始まった。

陽はギターを弾けてすごいと思う。そんなに歴が長いわけでもないのに色んな曲を弾ける。ギターはそういうものだろうか。

こないだから始めた、弾き語り。意外にもギターに合わせて歌うのが難しいと思った。だから最初の方は、陽が歌いだしとかリズムを間違えたら補助するように歌ってくれた。けど、徐々に合わせて歌うのに慣れてきて気持ちよく思いっきり歌えるようになったのだ。


瞳が好きと言ってリクエストした◯テルギウス。俺も好きだ。




そして、ベテルギウスを歌いきった。


パチパチパチ


「私、感動しちゃった」

拍手をしながら瞳が言った。


「えー。 嬉しい」


「やっぱり2人とも歌うまいよね」


「いやいや、ギターも上手いよ」


「照れるなー」


「まだまだ、聞きたいけど今日はもう帰るね」

「ひーちゃん、もう帰っちゃうのー?」


「うん。天ちゃんは全然部屋に残ってていいよ」


「えー寂しい。まだ居ようよ!」


「また、今度ね。じゃあまた明日。10時集合でいいんだっけ?」


「うん。10時で!」


「あー、僕送ってくわ」


「いいよ、いいよ」


「ついでにコンビニ行きたかったし。じゃあ、瞳送ってくるねー」


「了解」


「じゃあ、天ちゃんもまた明日ね」

陽と瞳が玄関を開け、出て行った。


「陽、紳士だね」


「そうだね」


「なんで瞳帰ったんやろ」


「ひーちゃんはね、ナイトルーティンがあるからね」


「なんそれ?」


「なんか、夜の肌ケアとか柔軟とかストレッチ」


「へーそんなんあるんや」


「女の子は大変なのよ」



ピコン


陽から 連絡が来た。


「そらー、陽がコンビニで何かいるものあるかって」


「うーん、お菓子!」


「了解」


俺は陽に酒とお菓子を頼んだ。


「ただいまー」

陽が帰ってきた。


「お菓子はこれとお酒はこれでよかった?」


「めっちゃセンスいいやん、お菓子完璧」


「お酒も完璧や、ってかよくわかったね俺が好きなやつ」


「よく海が飲んでるからね。さ、食べよ。食べよ」

ポテチやポップコーンなど机に広げた。


「全然気にしてはないんだけどさ」

少し疑問に思ったことを2人に投げかけてみる。


「全然気になってはないんやけどさ、瞳が明日会うのって男?」


「あー、どうなんだろ。天、聞いてないの?」


「聞いてないねー。ひーちゃん割と秘密主義みたいなところあるし……。気になるの?」

異性的に好意を持ってるから、とかではなく単純に気になる。


「陽聞いてみてよ」


「やだよ。なんか好意を持ってる感じするじゃん。天が聞いてみてよ。女の子だから効きやすいでしょ」


「うーん。なんかプライベートのこと踏み込んで聞きづらいんだよね。ひーちゃんって」


「じゃあ、じゃんけんで負けた人が聞こう」

提案してみた。単純に男だったから面白いなと思ってうずうずしているのだ。


「そんなに気になるのー?しょうがないな」

天がノってくれた。


「負けたくないなー」

陽は、少し嫌そうな顔をしながらじゃんけんをしてくれるそうだ。


「じゃあ、いくよ」



「「「じゃんけんぽん」」」



22:00


「あ、そういえば陽今日ありがとね」


「ん、何かしたっけ?」


「仕事教えてくれて」


「あー全然。困ったらすぐ聞くんだよ。」


2人の会話を聞いて思い出した。職場では、10時30分に1回10分の休憩を挟む。各自が仕事のキリがいいタイミングで休憩を取るのだ。俺と陽はいつも通り近くのスーパーに行き、塩むすびを買って、職場に戻った。


戻った時に目に入ったのは、天が1人で仕事をしている姿だった。周りの女子たちは休憩に入り、部屋の後ろの方でお菓子を食べながら雑談をしていた。その光景を見て、陽は真っ先に天のところに行き、仕事を教えていた。


「わかったー、すぐ聞くね!今日、昼上手く仕事できなくてさ、できない悔しさで泣きそうになってたらさ、陽が優しく教えてくれるから余計涙でてきたよね」


仕事は皆がすべての作業ができるようにローテーションしながら役割を回していて、今日は天が初体験の作業だった。だから、できなかったのはしょうがないけどなんで19歳の女の子をほっといて他の人が何も手助けしない光景に少し違和感を覚えた。


だから、聞いてみた。


「あれなんで周りの女教えてくれなかったの?」


「わかんなーい。けど、陽が教えてくれえて助かった!ありがとね、陽」


天が無理して明るく返事をしたように聞こえた。


「どういたしまして」

陽は、それに気づいたのか分からないがいつもと変わらない優しい笑みを浮かべ天に返事をした。


「よっし、歌を歌お!」


陽の掛け声でカラオケ大会が開かれた。


最初は、やや暗い空気で歌っていたが、時間が立つごとに盛り上がっていった。 最近の流行の曲から懐メロ、そしてジブ◯の歌ととにかく俺たちは大声をだしながら歌った。


「やっぱり海と天、歌上手いわ」


「えーありがとう。確かに海の声いいよね」


「ありがと......。はじめて言われたわ。歌上手いって」


陽と天はよく褒めてくれるからたまに褒め合いみたいな事が起きて少し恥ずかしい。けど、今まで味わったことない雰囲気にどこか心が温かくなる。


それと、ビールを片手に歌うのはすごく気分がいい。海賊の気持ちがいまならわかる。昔見た映画では、海賊が片手にビールで陽気に歌う姿に疑問を感じていた。大の大人がへたくそな歌を大声に歌う姿が。


けど、今ならわかった。 友達とこうして少し酔いながら好きな友達と好きな音楽に囲まれるのはとても心地いい。俺にとって夢の中のようにただただふんわりとした気持ちの良い時間が流れていた。


酔っ払いながらふと見た外の景色は月がとても綺麗だった。

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