第5話 どうしてこうなった!
「どうして……どうしてこうなったぁぁぁぁ!」
さて、頭の中は冷静な私が、今の状況を詳しく説明しましょう。
今は、お城の一室で身を休めています。
「失礼します、リアナ様」
なんか豪華なベッドに寝ころんでいます。
部屋の中は、煌びやかすぎて眩しいんです。
確かに、ひきこもるには申し分ないですね。
ということで、本日からひきこもります。
という願望なんだけど。
「いやだいやだ! 軍なんていやだ! 戦うのいやだ!」
って叫んでみたりしても大丈夫なんですよ。聞いた話によると、帝国最上級の防音性能らしいので。
「返事がないようですので、入りますね」
足をばたばたしても気付かれないんですよ。というわけで今しています。枕に顔を埋めてます。
え? なぜ敬語なのかって?
私にもわかりません。嬉しいから心の中でも敬語なのか、逆に嬉しくないからそうなっているのか。
面倒だからもう無理矢理やめることにした。勝手にそうなってたから面倒でもなんでもないんだけど。
「今日はここに泊まっていいって言ってたけど、お風呂とかご飯とかってどうするんだろう」
率直な疑問だ。それだけは何も言われていないのだ。
――ぐぎゅるるるるる。
お腹すいた。お腹なっちゃったけど誰にも聞かれてないからいいや。
「リアナ様。お食事の時間です」
もうすぐご飯食べられるのかな。女帝陛下が食べる料理なんだから、きっと豪華でおいしいんだろうな~。
……ん?
今声が聞こえなかった? 幽霊かな。だ、だだだ大丈夫。私、幽霊は怖くないから。うん、怖くない(諫め。いや諦め?)!
「はぁ、無視するならこちらも相応の行動を取らせていただきます」
かかってきやがれ! ぽるたーがいすと? だかなんだかわからないけど、そんなことをしてきても泣かないよ!
「はい、陛下に渡された虫です。無視するなら、と言って渡されたものですよ~」
ひらひらひら、と目の前に何かが。もけもけしてて悪寒が……えっ、ちょっと待って、これ虫? 虫だよね!?
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ! 虫、虫虫虫ぃぃいっ! ちょ、ちょちょちょそこのお前! 何ぼーっと突っ立って……」
やばい。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ! だだだだ誰っ!? 幽霊っ!?」
あれ、私泣いてる? 怖くないって言ったのに! 嘘だったの? 裏切ったの? 私の強い心さん!
「はぁ、幽霊だとかお前だとか、随分とお転婆な御客人ですねぇ」
「……へ?」
幽霊が睨んでる。しっかり見てみれば全然幽霊じゃなさそうな見た目してるし、手にはねこじゃらしみたいなやつ。
なんだ。虫でも幽霊でもなかったのか。
「さ、先程は無礼な態度、失礼しました。リアナ・フィアローズです」
「やっと自我を取り戻しましたか……」
「な……い、いつからここにいたの……?」
「少し前からです」
「具体的には……?」
「『どうして……どうしてこうなったぁぁぁぁ!』とか『いやだいやだ! 軍なんていやだ! 戦うのいやだ!』などと駄々をこねていた頃辺りですかね」
「なっ……」
まずいことになった。叫んでたこととか、顔を埋めてばたばたしてたこととか、盛大にお腹が鳴ったこととか、怖がってたこととか。全部ばれてたってことだよね。
私、国家反逆罪で捕まったりしないかな。
「というわけで、あなたを国家反逆罪で連行しますね」
「やっぱり!?」
「あはは、冗談ですよ。面白い人ですね。さ、行きましょう。美味しいご飯が待ってますよ。お腹空いてますでしょう? 鳴ってましたからね」
「やったー! ……って、掘り返さないで! 恥ずかしいから!」
◇
と、案内されたのはいいものの……私、ここにいていいのかな。
ふかふかの椅子。長い机と、上に並べられた見たこともないほどに豪華な料理の数々。
そして椅子の一つには既に陛下が座っていた。
ありがとう、と陛下はさっき私のことを迎えに来たメイドさんらしき人に礼を言った。
「さ、リアナ。こっちこっち」
手招きされて(匂いにつられて)陛下の隣に座る。
お肉! お魚! お米! おサラダ。うげ、
そう、私は大のきのこ嫌いである。
「今日はごちそうだよ。お腹いっぱい食べていいからね」
「ほ、ほんと!?」
「ほんと」
「あ、ありがとう、ございます。お金がなかったので助かります」
「代わりにっ! ちゃんときのこを全部食べること。いい?」
この人、私の心の中見えてる? 怖いんだけど。
いや、だとしても仕方ないか。おいしいご飯と寝る場所を確保するためだ。嫌だけど、仕方ないんだ。
「じゃあ、もう食べていいよ」
「わ、わかった。いただきます」
まずはお肉。うん! めっちゃおいしい!
やっぱりお肉とお米の組み合わせは最高だ。顔が緩む。ほっぺたが落ちそう。
次は、きのこ……
「うえぇ……」
まずい。触感といい、味といい、全てが最悪。
落ちたほっぺたが戻ってきた。
まあ、結果としては良かったんじゃないだろうか。
そんな様子を見て、陛下――ことヴァルトニアは思った。
――きのこ嫌いなのがバレなくて良かった、と。
いやアホか。アホなのか。
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