第16話 対峙

 王太子デイビッドが、魔物騒動を終息させる為に王都を出て、地方へ進む毎に【セレスティア.Z.シルヴァニア】という名を耳にする機会が増えてきた。


「セレスティア…それが天子の名か、聖女と崇められようとお前は悪魔なのだ、直ぐに見つけだし殺してやる!」

「殿下、2日前に聖女が現れたとの情報です。小道で商人達が魔物に襲撃されたところを助けに入ったそうです。向かわれますか?」

「当然だ。行商のふりをして移動するぞ!魔物に襲われれば、こちらへやって来るかも知れないからな。」


 軍部以外には手を出してない事を踏まえて、行商に成り済ませば天子の善意を逆手にとる事が出来る。直ぐに着替えを済ませて、聖女が目撃されたと言う方面へ向かった。


 主要な幹線道路のように完全舗装されてない小道なので、デイビッド達の足どりは重い。中央の騎士は悪路を移動する事など無いからだ。そんな小道を進み続けると、側面より魔物の強襲にあった。


「ウォーン」「グルゥ〜」

「狼の強襲だ!殿下をお守りしろ!」


 行商の姿の為に重装備ではないので、盾を持ってない為に剣で交戦するが捌ききれずに兵士達は傷を負っていく…


「うわぁ~」「くそっ、数が多い!」


 狼は5匹と冒険者のパーティーなら簡単に対処できるが、騎士達は魔物討伐の経験の浅さから対応出来ない。次々と狼の牙や爪の犠牲となっていくその時、狼達が次々と打ち倒されていったのだ。


「怪我人は出たみたいだけど、死人は出てないから間に合ったかな?」


 狼を全て倒した直後に、行商の方へ顔を向けて話し掛ける1人の少女が居た。プラチナブロンドの髪が神々しく輝く美少女セレスティアだ。


 少女を見た瞬間、デイビッドはその美しさに目を奪われたが、直ぐに気持ちを切り替えた。


『…あれは悪魔なのだ、アイツを殺せばカウントダウンが止まるかも知れない。』

「よいか、女が近付いて来たら斬り捨てよ。」

「はっ!」


 デイビッドは小声で兵士達に指示を出した。怪我をした者を治療する為に、セレスティアが近寄ると見立てたからだ。


「ねぇ、助けた相手に凄い殺気を向けるのは駄目だよ?あなた達は王国の兵士だね。」

「チッ、バレたか。殺ってしまえ!」


 殺気に兵士と気付かれたので、少し距離はあったがデイビッドは殺すように指示を出した。兵士達は剣を向けて襲いかかるが、セレスティアは直ぐに間合いを取って行動する。


「ん?後ろに居る偉そうなのって、王太子のデイビッドじゃない?態々殺されに来てくれたのね♪」


 セレスティアは冷酷な表情になった。

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