第14話 国王と王太子

 レオーネ王国謁見の間に王太子デイビッドが訪れた。


「デイビッドよ、最近のお前は何をしてるのだ。側近の報告を聞いたが常軌を逸してる。」

「その事ですが、私のこの腕をご覧下さい。」


 デイビッドは腕に刻まれている【命のカウントダウン】を王に見せると、


「その数字がどうしたと言うのだ?」

「これは【命のカウントダウン】と言う呪いで、刻まれた数字が0になると命が尽きます。シルヴァニアの天子を見つけたので、捕捉しようとしましたが…逆に呪いをかけられました。あれは悪魔です。禍いを招く者なので処分すべきです。」

「天子が生きていた?王に報告をせずに勝手に捕捉しようとして、呪いをかけられただと?」

「報告をしてる間に逃げられると思ったので、事後報告となりましたが、天子は生きて王国内に潜伏してます。なので、都市を1つずつ調べ尽くそうとしたのです。」

「お前は王ではない!この国の王が最優先事項としてる天子の情報を、王太子のお前が独断で処理してただと?」


 世界を統べる為に天子を我が物として利用する。それが王の最優先事項だったにもかかわらず、王太子は独断で動いて取り逃がしたうえ、呪いを受ける大失態…しかも、あと180日後には命が尽きると言うのだ。

 なのに悠然と受け答えをしてる様は、完全に常軌を逸してると判った。王太子の地位を剥奪して、次の王太子を決めなければと考える。

 しかし、王太子の剥奪など過去に例がない。死亡して新たな王太子を据え置くしかないと判断した王は決断する。


「デイビッドよ、今回の不始末は本来なら王太子の剥奪に相当するが、地方で起こってる魔物騒動を終息させる事で許す。直ぐに出立して来るのだ!天子の件は儂が引き継いで調査するから安心せい。」

「判りました。魔物騒動など直ぐに終息させてみせますよ。」


 王は、魔物騒動を終息させる間に、カウントダウンで命が尽きると判断して、後継者の選定を始める。そして、天子が国内に潜伏してるなら情報収集して捕捉する事にした。


 デイビッドは、魔物騒動を起こしてるのが天子だと確信してるので、地方へ出向いて騒動の終息と同時に天子の抹殺を企てる。


 セレスティアの目指す、レオーネ王国崩壊への追い風となるのは間違い無かった。


 そして、恩師ミスティークを亡き者とした。デイビッドと対峙する日が近付いて来たのだ。

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