第59話 ゼクスの陰謀

 皇帝は宮廷の自室で報告を聞く。


「スレインとの戦いで、コールが使用した装備を用立てたのはゼクスなんだな?」


 皇帝は学園で行われた、学園序列決定戦で起こった事の顛末を確認する。


「はい、闇ルートで購入された魔族の装備です。コールもその装備が普通の物では無いと認識して使ったと供述してます。」

「殺意を持ってスレインへ使用したのか?」


 その装備を使ってスレインを亡き者にしようとしたのかと聞くが、その声は怒りに満ちていた。


「それについては否定してます。ただ、妹を人質に取られて、ゼクス様の命令に従うしか無かったとの事です。」

「そうか、ゼクスはそこまで卑劣な事を……」


 己が皇帝になる為なら、弟の命まで狙うという卑劣な行為に拳を握りしめ机を叩いた。


「次に、スレイン様への治療を怠った者達ですが…ゼクス様に金で雇われた見習い治癒士で、スレイン様に対して、医療行為をしない様にと命令を受けたとの事です」

「スレインが助かったのは、セレンと言う少女とセイレーンの適切な処置が成されたからなのだな?」


 瀕死の重傷だったスレインを見事に治療した、愛娘とその友人のことに皇帝は興味を示す。


「セイレーン様からはその様に報告を受けました」

「そうか、2人には感謝をしなければな」

「あと、その少女との決勝で使われたコールの武器なのですが……、あれは魔法剣ではなく魔剣でした。帝国では持ち込む事も禁止される代物で、ゼクス様がどのルートで手に入れたのか調べた結果、魔界貴族バフォメットと通じているようです」

「間違いないのか?」

「ゼクス様の左胸に烙印があるので、陛下自らご確認されれば判ります」


 皇帝は上を向き目を閉じる……、第一皇子が魔界貴族と通じていたのだから、その衝撃は計り知れないものだ。


 愛娘セイレーンから『兄の様子が常軌を逸している』と報告を受けて調べた結果がこれだ。


 息子と言えど厳罰を与えなければ、皇帝としての示しがつかない。皇族から追放し幽閉する処分を下すしかないと判断したのだった。


 後日、皇帝より処分が公表された。


 ゼクス第一皇子は皇族除籍。重犯罪者幽閉塔へ生涯幽閉される処分となった。


 コール先輩は皇族殺人未遂で処刑。


 医療行為をしなかった元医療班全員も皇族殺人未遂で処刑。


 こうしてゼクス第一皇子の陰謀が明らかになって一大スキャンダルとなった。

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