遺影_3
次の日の三限と四限の間にある少し長い休み時間、トイレに行こうと席を立った僕の前をガタイの良い坊主頭が風を切って横切り、無害そうに座るアミの席の隣に立ち止まった。
「お前給食費払ってないんだろ」と教室の全員に聞こえる声で言い放った。アミは何も言葉を発しなかった。何もない机を見つめる視線も動かさなかった。クラスメートは全員静まり返り、聞こえるのは廊下に響く無邪気な女子の声だけになった。
「は? なんで無視すんの。おい、貧乏人」リュウは小さいけれど圧の強い声で言った。アミは無言で席を立ち、近くの机に身体をぶつけながら教室を出ていった。前髪で隠れていたけれど泣いているのだと思った。リュウの言葉に僕だって泣いてしまいそうだった。アミは次の数学の授業が始まっても帰ってこなかった。もう二度と教室には戻ってこないのではないかと思ったけれど、授業の終わりかけに戻ってきて席に着いた。僕の後ろに座っていたリュウが僕の背中をシャーペンでトントンと小突き、小さなメモを渡してきた。見ると『タダ飯食いに戻ってきた(笑)』と書いてあった。
その日から休み時間が来るたび、リュウは
僕は両親のことを嫌いだと思ったことは一度もない。父も母も僕に対して優しかった。けれど僕の人生に不当なハンディキャップとして課されているのは両親だ。好きであればあるほど、金のない両親の姿は
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