第3話 入学式


「今日はいよいよ、入学式ー!」


「花澄。静かに」


「ごめん、りんちゃん」


「全く。楽しみなのは分かるけど、浮かれないでよね。それで花澄が変な目で見られる可能性は低くないから」


「鈴ちゃん、会場あっちかな?」


「私の話聞いてた?」



 今日は、いよいよ待ちに待った入学式。他のクラスの人達と仲良くなれるチャンスなので、この機会を逃すという事は考えられない。


 と、思った所で鈴ちゃんに釘を刺されてしまった。まぁ、鈴ちゃんの気持ちも分かる。でも、昨日いっぱい我慢した分、今日はいいかなと思っている。



「鈴ちゃん、別にいいでしょ〜。お願い〜」


「……はぁ。面倒事に巻き込まれる前に退散してくれるなら、話しかけてもいいよ」


「鈴ちゃん、ありがとう!大好き!」


「そうやって、すぐ抱きつかない!転んだら、他の人の迷惑でしょ!」


「鈴ちゃんが冷たい……」


「別に、人に迷惑がかからないよう勢いよく抱きつかないならいいのに……いや、勢いよくなければ、怪我しないだけだから!後、私が冷たいんじゃなくて、高校生になれば、恥ずかしさの方が勝つだけだから!」


「そうなの?」


「あんた、結婚して子供出来た時絶対苦労するわよ……」



 鈴ちゃんがなんとも言えない顔でこっちを見ている。でもなぁ。何だかんだ鈴ちゃん優しいかなって思う。



「そういえば、賢くんの事なんだけど、どっかで見た事ない?」


「賢くんって、小西?どうだろう、でも言われてみれば、見た事あるかも」


「そういえば、小学校1年の時にいたような気がしたんだけど。ほら、その子と名前同じだし」


「でも、苗字が違うよ?その子確か斉藤って苗字だったし」


「どうだろう。話しかければ分かるかな?」


「やめときな。仮に本人だった時がまずいでしょ。あんたも家庭事情ばらされたくないでしょ?」


「あ……。そう、だね……」


「花澄?ちょっと、大丈夫?」


「うっ……。ううっ……」


「花澄?花澄!」



 そのまま、私は倒れてしまった。倒れる直前、鈴ちゃんの泣きそうな姿が見えた。

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